【開催報告】月刊:よげんの書2021年11月号(前編)――現実と未来を行き来しながら考えよう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかを、「よげんの書」では紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っております。

今回は11/19に行われた「月刊:よげんの書11月号」の前半で発表された内容を紹介いたします。「よげんの書」は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

目次

気候変動に対する各地域の主張が入り乱れる

10月31日~11月12日 英グラスゴーにてCOP26:国連気候変動枠組条約第26回締結国会議開催

COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)は年々注目が増している会議。上昇する地球の温度と、それに伴い激しさを増す自然災害──北極などの氷が解けることによる海面の上昇、熱波による森林破壊など、数々の現象によって地球と地球上に住む様々な生き物の生存が危うくなっている状態を前に、国際社会がどのような対策をとるのかを話し合う会議である。

参加197カ国が主張を展開

主張は大きく3つに分かれ、今回、議論が収まりきらずに会期を延長した。

  • 対策を先行する先進国(アメリカ、EU、日本など)は途上国に追加の排出削減を求めた。
  • 新興・途上国(中国やインド)は対策のための資金支援を充実するよう先進国に求めている。成長している局面なので、エネルギーを使う量も、排出量も多い。インドは約束されていた支援金が周ってきていない、などを主張し各国の対立、分断があった。
  • 気候変動に直面し、もっとも肌で感じているのは島しょ国。言い争いはあるかもしれないが、とにかく対策をしてくれ、という主張があった。特に切実なのは温暖化で海面上昇による水没の恐れがある、トンガやツバルといった太平洋の島国。海の中での演説などのパフォーマンスも記憶に残った。

会議の結果的には「半歩進んだ」というところ。脱炭素、エネルギーの大幅な削減には至らなかったが、それぞれの国の足並みをそろえて締結はできた。

先進国が自国の排出削減を進める陰で、新興国や途上国に排出を押しつけている側面がある

議長国のイギリスが中国などに石炭火力の廃止を迫るが、現実には、先進各国は輸入品の生産時の排出量を自国分として数えていない。our world in dataが出している、生活を送るために排出している炭素の量と、作ったものを使う時に消費する炭素の排出量のグラフがある。先進国であるアメリカ、イギリス、日本などは生産ベースの排出量よりも、輸入品の生産時の排出量の方が高かった。つまり、Co2の排出量削減を求めている国々は実は脱炭素できていない。視点によってはとても難しいところではあるが、自分ごととして向き合うべきものである。

日本は毎回、とても不名誉な『化石賞』をとっている。(気候変動に取り組む世界130か国の1500を超えるNGOのネットーワーク「CANインターナショナル」が、その日の国際交渉の中で、温暖化対策に消極的だった国に与える不名誉な賞)日本国内で石炭火力発電所が減らない上に、新興国に輸出もしていたのが理由。
環境に対する姿勢は世代間闘争の様相を呈している。COP会議が行われたグラスゴーに若者が集結したとのニュースもあった。会議に出て発言しているのは年寄りばかり。本当に切実なのはこれからの世界を生きる若者なのに、若者の意見が反映されているのかが疑問。

グローバルサウスの国々が本当の危機に直面している。今すぐ削減ができたとしても、海面上昇はすぐには止められない。江東区などの海抜0地点や銀座も水没すると言われている。モルディブでは海の上で浮かべるフローティングシティを作っているという話もある。オランダも土地が低いので、浮かべて対策をするなどの案が増えるかもしれない

環境に対するスコアを見て食品を選ぶ生活者が増える

環境意識の高まりに応え、欧州で「エコスコア」が広がる

イギリスの非営利団体ファンデーション・アースの「エコ・インパクト・スコア」は生産・加工や輸送の過程も含めて「温暖化ガス排出量」「水資源の使用量」「水質汚染」「生物多様性の喪失量」の4分野のデータから環境負荷を算出し、8段階で商品を評価をしている。
ビーコープでは良いところを認定している。しかし、「エコ・インパクト・スコア」は、「評価」してる。つまり、良いものと悪いものがみえるようになる。環境に悪いものが可視化されるのだ。流通のカルフーフが導入をはじめ、「エコ・インパクト・スコア」をシールで食品に貼ることにした。メーカーの環境への対応が今後より求められるようになるだろう。

環境配慮は重要な差別化のポイント

PwC「世界の消費者意識調査(2021年6月)」によると、商品に求めるものとして商品の信頼性やサービスなどの最低限抑えておくべき項目に次いで、環境配慮が5位にランクインしていた。重視点に関する調査において、トップ3の項目は最低限おさえておくべきポイントで、4位5位は差別化のポイントだと言われている。差別化のポイントをいち早く抑えたブランドが消費者に選ばれるようになるのだ。その大切なポイントの5番目にエシカルな取り組みが入っていた。特にこれから消費を担うミレニアル世代においては半数以上が、環境やトレイサビリティに注目していた。環境に対する配慮はポーズだけではなく、重要な選択基準になってくるだろう。日本ではまだ店頭で「スコア」などはないが、重要度が増すにつれて、早めに可視化できる取り組みがメーカーに求められていくかもしれない。

商品がエシカルなのかどうかについて物の外形で差異化できないから、プロセスをどう証明するかが大事。プロセスを一生懸命やっても、消費者には分からないのだ。企業の努力が可視化されるものが必要。カルフーフのように、商品との接点となる場所である流通が率先して行わなければいけないかも。メーカーと流通のコンフリクトが起こるかもしれないが、地球と消費者にとってはよいこと。

旧商品を大切に扱うことがファンとの絆を深める

カシオ、Gショックの復活サービスを期間限定で実施

Gショックは愛用者が多い時計でもある。傷んだ箇所をキレイにしてまた使いたいというファンの声に応えて、カシオは古いモデルのバンドやベゼルを交換するサービスを2021年10月~2022年1月の期間限定で実施。古いGショックのモデルで部品がない場合は3Dプリンターなどで作るとのこと。
料金は10,560円。もう少しお金を出せば新品が買える値段ではあるが、このサービスを求めていた人が多く、2018年に同様のサービスを実施した際には、1,000件以上の申し込みがあり、修理する人手も部品も足りなくなったことがあった。

生涯無料リペアでファンとの関係構築を続ける

スウェーデンのジーンズブランド「ヌーディジーンズ」はすべてのジーンズに生涯無料リペアの保証をつけている。店舗にリペアの工房を設けており、リペアに訪れたファンが自分のジーンズを直すついでに新しいジーンズを買う場となっている。プロセスマーケティングの一種ともいえる。「ヌーディジーンズ」は商品にはSDGsを掲げ、オーガニックコットンを使用し、フェアトレードも表明し、環境配慮やエシカルに力を入れてファンとの絆を深めている。

商品を買って使う、カスタマージャーニーというのがある。長く使うというカスタマージャーニーの中で、どのようなサービスを提供するのか企業も考えるべき。ライフタイムバリューとして、商品がどのような価値を提供できるのか。企業と製品と消費者がずっと関わりあっていく中で、良い関係が作れるはず。

メタバースに人とデータが集まり、現実社会に反映される

2021年10月28日FacebookがMeta(メタ)に社名変更を発表。メタバースに注目が集まる

超越した世界=仮想空間の世界が注目を集めている。メタバースという言葉が誕生したのは1982年。アメリカの作家ニール・スティーヴンスンのSF小説『スノウ・クラッシュ』の中で、「Meta」と「Universe」から合成して「Metaverse」と呼んだことが始まりとされている。Facebookは10億人がメタバースの世界を使えることが目標であると発表した。メタバースはコミュニケーション面の他にもマーケティング方面でも活用がありそう。

2021年夏公開『竜とそばかすの姫』興行収入65億円のヒット

『竜とそばかすの姫』コロナ禍の日本映画の中で結構ヒットした作品。全世界50億人が集まる仮想空間と現実とを行き来しながら、仮想空間の中で現実社会の課題を発見し、現実社会の中で解決する話。

デジタルツインを用いて、データ収集・検証とフィードバック

マーケティングでの活用例としては、デジタルツインがある。デジタルツインというのは現実のモノや環境をデジタル空間に再現し、リアルタイムで現状を把握する仕組み。現実とデジタルを同じ環境にしたうえで、バーチャル空間の中で新商品を置いたり、配置を変更することで、一定の仮説を置いた少し未来の予測にも役立てられる。人の流れやモノの流れなどを観察することで街づくりや売場作り、接客、商品開発にも活かせる。

メタバースについてはセカンドライフトラウマがある。本当にうまく行くのかと懐疑的になってしまう。Z世代はメタバースの発表を見て、その世界にずっといる気にはなれないという話もあった。大手のIT企業が投資して大きく始める世界より、小さいベンチャーならではの感性によってヒットするものがこれから生まれてくるのかも。メタバースはまだ入口。スタートアップ企業やベンチャーの活躍を期待したい。

フォートナイトもメタバース。たくさんの人が集まる空間を作っている。マーケティング視点での活用も考えていきたい

SF思考が次のイノベーションを生む

SF小説に活路を見出す

SF思考は三菱総合研究所が研究している。SF思考学では不確実な可能性を重視するけれど、人間中心のやり方で見る。人の意見をきちんと見定めて、未来感とリアリティーを併装する発想法。SFの持つ、人の想像力を広げる力、登場人物を主体にして未来の社会を描く力、エンターテインメントとして人を楽しませる力を利用して、産業を創出する時にどのような要因が活用可能かを分析する。

SF思考法の手順

  1. 最初に未来を意識して脈略のないキーワードを考える。
  2. 次にそんな未来にありそうな道具を思い浮かべる。
  3. そこで暮らす登場人物を想定し、次々と降りかかる困難や幸運を洗い出す。バラ色の未来だけでなく、不都合な未来まで語り合う。
  4. 課題を探り、国や企業のありよう、望ましい制度や製品・サービスのイメージをとらえる。

2021年10月公開 DUNE/砂の惑星

原作は指輪物語と並ぶヒット作であると言われている、1965年に発行されたSF小説。機械化が進んでいった未来の中で、AIの反乱を鎮圧した後の人々の暮らしの話。荒廃した環境で生活するために、機械に頼ることなく資源や道具を駆使する未来の宇宙を描いた物語。世界でヒット中。今問題になっている気候変動に関する部分もあり、それを解決する道具についても考えこまれている。まさにSF思考法で使える題材なのではないかと思う。SF思考法によって次のイノベーション、ミッションは何だろうと考えるのもありかも。

SF思考法では、ちゃんとクリエイターを参加させることが大事になるかもしれない。世の中にないものを形にするのがSFやアニメーションである。見れば何となく納得できるようになる。クリエイターやデザイナーと一緒に未来と商品を考えることもあるかもしれない。

2021年11月の提言:現実と未来を行き来しながら考えよう

気候変動への対応も、新しいイノベーションの発想も未来や自分の子どもたちの生活を思い浮かべて、今できることを考えることが大切

次回の「よげんの書」は12月17日(金)の開催です。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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