【開催報告】月刊:よげんの書2021年10月号(後編)―志(こころざし)を持とう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は10/22に行われた「月刊:よげんの書10月号」の後半で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

目次

ゆでガエル状態ではいられなくなる


「ゆでガエル状態」とは、カエルを熱湯の中に入れると驚いて逃げ出してしまうが、水にいれて徐々に温めていくと気が付かないうちに茹ってしまうという寓話。ジワジワ変化していくので、変化に気が付かないことから、環境の変化に鈍感だということ。日本も「ゆでガエル状態」になってきているのでは、と思っている。

世界の平均賃金で見ると、日本は35か国中22番目で、韓国以下になっている

OECDの平均賃金は、「購買力平価」をベースとするもの。 例えば同じ品質、同じ量の製品が米国で1ドル、日本で150円だった場合、実勢の為替レートではなく1ドル150円のレートで換算するという計算方法だ。 購買力平価には国家間の物価水準の違いが加味されており、生活実感により近い。推移を確認すると、2000年以降日本は平均賃金が上がっておらず、6年前に韓国に抜かれてしまっている。

GDP、賃金は上がらず。物価指数は低下

2017年から国内総生産も上がっておらず、並行線、もしくは低成長である。最近では「日本だけ取り残されている」という論調になっている。賃金を見ても2000年以降上がっておらず、逆に下がってしまっている。これでは怒る人もでそうなものだが、不満を訴える人が少ないのは、物価が安いからだ。つまり、収入と支出の均衡がある程度とれてしまっているので、ゆでガエル状態で茹でられ続けているともいえるだろう。

コストプッシュインフレの気配が濃厚に

しかし、日本が停滞している間に他の国は成長している。食糧農業機関(FAO)によると、食糧価格指数は上がり続けており、ガソリン価格もコロナ前に戻り、電気料金も上昇している。様々なコストが上がってきており、家計を圧迫し始めるだろう。物流のコストと、原材料費のコストが上昇し、コストプッシュによってインフレになってしまう。

低賃金下でのインフレに懸念

今まではメーカーが内容量を減らすなどして、コスト対応してきたが、それも耐えきれなくなるだろう。そうすると、今まで低賃金だが物価が安いことによって保たれてきた均衡(ゆでガエル状態)が崩れてしまう。低賃金下でのインフレは、不況なのに物価上昇が起きるスタグフレーションにつながる。一番経済への打撃が大きい。

素材、資源が高くなると商品価格に反映しなくてはならなくなる。そうすると、高くなった商品を消費者は買ってくれないのではないかと危惧するかもしれないが、高くなっても買ってもらえるような付加価値を付けることがこれまで以上に大事になってきそう。

賃金が上がる循環になればいいが、コストプッシュインフレは企業が儲からない値上がりである。悪循環を打破することが必要。

会社に戻りたくない人が増える

テレワーク継続希望者は8割近く

パーソル総合研究所が実施した調査で、テレワーク実施者のテレワーク継続意向が78.6%だった。ネガティブに捉えると「会社に戻りたくない人」が約8割いるということになる。積極的に会社に行きたい人が少ないということだ。

現在の生活スタイルは維持したい

コロナ禍によって生活の変容があり、「人間らしく」生きる上では良いと感じた人が多い。家族と過ごす時間が増えたり、通勤の時間を他のことに使うようになって、新しいことに活用できることに気が付いた。ポジティブにコロナ禍を過ごしたとも言える。博報堂生活総合研究所のアンケートで、コロナの懸念がなくなった段階でも現在の生活を維持し、元の生活に戻したくないと回答した人は半数以上の56.4%だった。年代別で見ると、20代、30代で維持したい理由として「時間の無駄削減や自己管理ができるから」と回答した人が多い。つまり、ワークライフバランスをとって働きたい人が多いのだ。

AppleやAmazonなどアメリカのIT企業大手はコロナ禍が終息した後、週に3日は出社と明解に決めている。日本だと、テレワーク(家で仕事すること)の生産性が低いと自己評価する人が多いという結果もあったりした。家と会社で、生産性を高めるにはどうしたらいいのか、という議論がもっとできるといい。働く人も、働かせる人も考えなければならない。

会社でやったほうがいい場合と、家でやったほうがいい場合など、仕事内容によって適した環境があることも分かってきた頃。仕事を仕分けして、一番いい状態、環境で働けて、パフォーマンスを上げられるのかを考えるのが大切。ワークデザイン=どう働き方をデザインするか。

イノベーションは対面によって生まることが多い。人と会って、新しい発想を取り入れて、自分も新しい考え方を出す環境づくりを考えながらテレワークを併用できるといい。生産性の面だけでなく、アイデアの創発についても考える必要がある。

役職者になりたくない人も増える

正社員の管理職への意向は2割以下

マンパワーグループの調査で「正社員の管理職への意識」を調査したところ、管理職になりたい計が17%で、なりたくない計は83%だった。なりたくない理由としては、「責任の重い仕事をしたくない」(51%)「自分のやりたい仕事ができなくなる」(17%)だった。技術者だと現場で動いていることが多いので、「やりたい仕事ができなくなる」というのは理解できる気がする。逆に、なりたい理由は「報酬が増える」(88%)「自分が成長できる」(66%)だった。大半が報酬が増える期待をしている。

そういえば定年女子も…

雇用機会均等法第一世代が間もなく定年になる。はじめて定年女子が生まれるなか、女性活躍社会に賛成だという人は8割近く、女性の管理職が増えるべきは約7割だった。大半の人は賛成している。だが、一方で管理職になりたいという計は18.1%だった。
男性の問題だった定年が女性にも身近になりつつある
「2:8(ニハチ、ニッパチ)の法則」「パレートの法則」ともいうが、上昇志向のある人は2割。真ん中の6割がついていく。良いリーダーとして役職者になる女性が増えると良い。

デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』という本の中で、ブルシットの1つとして『タスクマスタ:仕事を割り振るためだけの仕事/役職』がある。管理職がタスクマスタだと捉えられてしまっているのだとすると、少し悲しい。一方で自分で手を動かし続けるのがカッコいい、プレイヤーでいたい、という考え方も増えているのだとすれば、良い傾向かもしれない。

学ぶ20代と学ばない50代が浮き彫りになる

コロナが流行して以降自己啓発を始めた人は8.8%

日本生産性本部が行った調査で「コロナウイルス流行以降の自己啓発の開始の有無」を聞いたところ、自己啓発を始めた人は1割に満たなかった。始めてみたいと思っている人は3割。このチャンスに自分を高めようと思った人は少数派だったのだ。

若い人ほどポジティブという相関

「コロナウイルス流行以降の自己啓発の開始の有無」では、年齢相関がはっきり出た。若い人ほど自己啓発を開始した、開始したい人が多かった。実際に開始した20代は18.8%で、30代の9.4%と比べて2倍。50代の6.1%と比べると3倍も多かった。50代では「特に取り組む意向はない」が7割で、3人に1人がそう思っていた。しかし、今は70歳まで働く時代になりつつあり、企業も働くチャンスを70代に与えなさいと求められている。22歳から70歳まで働いたとすると、折り返しは46歳。学びが少ない40代以降の人は残り半分の仕事人生、どうやって働いていくのかを考えてほしい。よげんの書8月で『リスキリング』で学びなおしなどがあったが、環境も変わっていく中で、同じスキルで長年働き続けるのが難しい時代になる。新しいスキルを身に着けることが必要になってくる中、自分自身で学んでいく姿勢がより求められるだろう。学びなおしがないと、生産性も上がらない。

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弊社ドゥ・ハウスは主婦を組織して、マーケティングの支援をしている。大抵の人は専業主婦からDOさんになるので、定性情報の処理やマーケティングの基礎を半年間の研修期間で学んでもらっている。新しくエントリーしたDOさんから「新しいチャレンジをして、新しい学びがあったのが嬉しい」との感想があった。学びの実感は喜びでもあるので、一歩踏み出すところから始めてほしい。

IT技術は今後必須になる。学びなおすとやりがいもあることを発見できることもあるだろう。自分にとって難しい、分からないと拒絶するのではなく、『リスキリング』することで学びなおしてほしい。

エシカル資本主義の胎動が始まる


エシカル資本主義というのは私(大久保)の造語です。エシカルとは道徳、倫理的という意味。これからは資本主義の中で道徳、倫理がより求められるようになるだろう。

コロナ後のキーワードは倫理、道徳、利他主義、正義

コロナ後にどうなるかを考えるための本が注目されている。

【道徳】論語と算盤:渋沢 栄一
経済と道徳を両立させるという渋沢栄一の主義について書かれている本。
【利他主義】命の経済:ジャック・アタリ(フランスの経済学者)
パンデミック後の新しい経済についての本。利他主義、まず人のことを利することをやりましょう、と主張している。利他主義はきれいごとだと言われるが、商売とはそういうこと。まずは良い商品/サービスを提供し、相手に利することをしてから、報酬をもらう。相手を利するから、自分も利を得るということ。短いサイクルではあるが、利他主義であるともいえる。
【正義】実力も運のうち:マイケル・サンデル(アメリカ合衆国の哲学者、政治哲学者、倫理学者。)
能力主義は正義なのか?と疑問を呈している。良い大学に入ることは「実力」だとされているが、実は家庭環境が大きく影響していると述べている。
【倫理資本主義】つながり過ぎた世界の先に:マルクス・ガブリエル(ドイツの哲学者)
コロナ後の資本主義はどこに向かうのかについて考えている一冊。資本主義のコンセプトで新しいものがでないと、よい方向に向かわないのではないのかと考えており、倫理資本主義について述べている。

パーパス経営が注目されている


パーパス=目的、なんのためにいるのかという存在意義を示して、そこから事業にしていくということ。お金の方の資本主義はValue(価値観)、Vision(構想)、Mission(使命)という考え方だった。志本主義はまずPurpose(志)があり→Dream(夢)→Belief(信念)がある中で経営するべきなのでは、という考え方。株主資本主義からステークホルダー資本主義へと変化する中で、企業がその存在意義を問われる時代がやってくるだろう。

存在意義を伝えている企業の方が業績がいい

アクセンチュアの調査では、高い業績を上げている企業の約60%が「製品やサービスだけでなく、企業の存在意義を顧客に示す必要がある」と認識し、「常に顧客にとっての最善の成果を追求したい」と回答している。また、調査対象の上位20%を占める優秀企業が「エクスペリエンスに直接つながるブランドプロミスを確立・証明できている」と回答している。これは、その他の企業のおよそ2.5倍に相当する。つまり、倫理、道徳に即して経営し、さらにそのことを伝えている企業の業績がよいということ。これらから、エシカル資本主義が生まれつつあるのではないかと考えている。

「倫理」「道徳」「正義」「利他主義」分かりやすいようで、どう行動すればよいのはよく分からない。ブランドアクティビスムについて何度か話が出てはいるが、企業やブランドがどう行動したのか、生活者にちゃんと伝えて、伝わるようにしなければならならない時代だ。

正義を商品に込めるとしても、商品の姿だけでは分からない。そうではなく作られた商品と見分けがつかない。だからこそ、伝えていく必要がある。

2021年10月の提言:志(こころざし)を持とう

自分が何のためにそのビジネスをするのかを明確にすることでブレない視点を持ち、チームのベクトルを合わせることができる。
志(こころざし)を持とう

次回の「よげんの書」は11月19日(金)の開催となります。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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