【開催報告】月刊:よげんの書2021年6月号(後編)―― 変化を起こそう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は6/18に行われた「月刊:よげんの書6月号」の後半で発表された内容をご紹介いたします。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されています。開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載いたします

目次

技術で勝って普及で負けることがトラウマになる

日本は脱炭素技術のいくつかの分野でリードしていた。水素技術、蓄電池でも特許たくさん出している。しかし、普及面で考えると他国に負けてしまっている部分がある。

日本では、燃料電池車(FCV)が「車検を通ったのに水素を充填できない」ときがある

燃料電池車が水素ステーションを利用する場合、車検を通った車でも、水素の充電を断られることがある。それは、FCVの水素を貯蔵するタンク(ボンベ)は車検の対象外だからである。車検は国土交通省の管轄で、水素のタンクは経済産業省が管轄している。その為、別々の検査が必要になっており、両方の検査を通らないと乗ってはいけないことになっている。日本では規制が邪魔しており、中々普及しない。お隣の韓国ではいち早く水素経済法を制定してこの問題を解消していた。電池技術でも日本はダントツで多く、電池技術の国別特許出願数の推移(欧州特許庁提供)を見ると、特許もたくさん出している。だが、リチウムイオンバッテリー世界輸出額シェア(2019年)を見ると、売れている(輸出している)のは中国と韓国で半分のシエアを持っている。日本は6%ほどのシエアしかない。

歴史から見ても技術で勝って普及で負ける例が多発

リチウムイオン電池やDRAMメモリーではシエアトップだったのが、世界市場ではシエアが落ちている。カーナビも世界に普及していくと、日本のシエアが下がる。技術は人の役に立って初めて花開くので、いくら優れていても、市場に出て行くときこそ、官民一体となって注視する姿勢が必要。

水素も全固体電池もSDGsやESGに直結する技術なので、普及も頑張って欲しい。

半導体も普及で負けてしまった。一時50%もシエアがあったが、それが段々と下がってきた。だが、ムーアの法則がいよいよ崩れた半導体で、「モアザンムーアの法則」の技術を日本が持ち始めたと注目もされている。

最先端の市場と、コモディティの市場がある。日本はコモディティの市場を捨てて、価格競争をしない傾向がある。だが、いずれはすべてコモディティになるので、そこは目指す必要もある。

変化におびえる日本企業が増える

ディスラプション(破壊・崩壊)に対して対抗できるという自信を持てていない

ディスラプション(破壊・崩壊)という、破壊的イノベーションによって破壊される側というのがある。(銀塩フィルムがデジタルカメラによって破壊されたように)米コンサルティング会社のアリックス・パートナーズが今年1月、世界の企業幹部に破壊的な経営環境の変化「ディスラプション」の受け止め方を調べた。日本のビジネスマンは新しいものに対する危機感が強いことが分かった。コロナ禍については限定的という見方があり、経済界は乗り越えていけるという感覚を持っている。それより大きい影響になると懸念しているのは技術革新によっておこるディスラプション。ディスラプション(破壊・崩壊)に対して対抗(乗り越えられる)のかを聞くと、大半の経営者は持っていなかった。

日本企業は環境の激変におびえている

中国、アメリカの経営者は半数が「ディスラプションを乗り切れる自信が大いにある」と回答した。一方、日本は20%ほどしかおらず、経営者は慎重な人が多いという結果になった。環境の激変に対して怖がってしまうと新しいことが起こせなくなってしまう。現状維持バイアスからいかに抜け出すかが課題。

ジョブ理論を提唱したクリステンセンは「成功した大企業ほどディスラプションで壊されることが多い。大企業ほどディスラプションを起こしにくい」と言っていた。だが、今の地位におびえることなく、破壊できる権限をトップが強くサポートし、押し上げることが必要になる。

マーケティングでどこに新しい芽があって、新しいジョブがあるのかを見つけるのが大事。もしかしたら、壊さずに新しいものを産み出すこともできるかもしれない。ディスラプションを怖がるのではなく、起こす側になってほしい。

アップル社の成功はiPodの市場をディスラプションしたからこそ実現できた。iPhoneが売れたら、iPodは売れなくなってしまう。だが、ジョブズはそこを捨てることができた。自社の商品であっても、ディスラプトすることで、次の成功を導くことができる。

IT人材の偏在がDXを妨げる

DXを実現「する」か「しない」で、大きく変わる未来

去年から今年にかけて、DXの嵐が吹き荒れている。経産省のDXレポートには、やるやらないで明暗が分かれると書かれている。DXを行えば、2030年実質GDP130兆円超の押上げができ、行わなければ最大12兆円/年の経済損失があると試算した。

DXの進捗状況、推進している企業は4割に満たない

コロナでもデジタルに切り替えて対応できたところは、それなりに業績を維持できた。オンライン販売を取り入れたり、宅配を取り入れたりなど。それができなかったところは厳しい状況に陥った。DX化は喫緊の課題だが、なかなか動かない。

IT人材の偏在が要因の一つか

日本のIT人材はIT産業(SIer等)に偏在している。ソフトウェア開発やシステムインテグレーションなどに技術者の72.3%がいる。一般の企業にIT人材がいないのが問題。IT人材が十時する産業を各国比較すると、他の国では半数以上の技術者がIT産業にいる国はない。どこも企業の中にIT人材いる。日本は製造業にIT人材はいるが、公共系は無きに等しい。日本で教育のIT化が進まないのも、これが一つの要因ではないか。ITを分かっている人が現場にいないのだ。IT産業からIT人材を取り戻す必要がある。

デジタル庁に見るIT人材確保のスピード

デジタル庁でもIT人材の確保は大きな肝になった。政府は2021年9月のデジタル庁発足に向け、4月に幹部候補を含む30人前後の採用を始めている。非常勤の国家公務員とし、兼業やテレワークなど柔軟な働き方や待遇も認めることで、人材を確保した。2021年9月には500人規模でデジタルの専門家を集めるとしている。いかに内部にIT人材を抱え込めるかが大事。企業のトップであるCTO、CIOも技術が分かっていないと、IT人材を採用することすらできなくなるので、大きな課題になる。

デジタル人材はどんな知識と技術を持っていればいいのか、どれくらい報酬を払えばいいのか分からない企業も多いのかもしれない。内部に置くためのロールモデルがまだないところが多い。

IT人材として、エンジニアだけではなくデザイナー、プロデューサーも求められている。

入社早々転職を志向する若者が増える

4月にdoda(転職情報サービス)へ新社会人が登録する数が10年間で26倍になった。入社した途端に転職を検討している人が増えたということだ。アンケートでは、約半数が入社後に退職を検討したことがあると回答。会社で働き続けたいと思う要因は「自分の成長」だった。

定年まで働きたくない就活生は43.5%

パソナ総合研究所が調べたところ、就活生が定年まで働きたくないのは、色んな会社を経験してキャリアアップしたいと考える人が多いから。成長したい、キャリアアップしたいから転職するのだ。すぐに転職したら技術が身につかないのでは、と思ったりもするが、今は「どこの会社の部門に所属していました」という肩書きがキャリアになっている。身に着けたことよりも、所属していたことが「キャリア」になる認識なので、1年事に変わっても「キャリア」になる。

メンバーシップを重視する日本企業にとっては皮肉な話となっている?

この考え方は、どこからきているのか。経営層が短期的な利益を求められるから、新人も短期で成長することが求められ、教育される。なので、キャリアアップも短期的に考えるようになり「所属していた」ことだけでキャリアになっていく。メンバーシップを重視してきた日本企業にとっては皮肉なこと。考え方を変えていく必要がある。長い目で人材を育成するのには、長い目で企業の成長を見守る必要がある。

去年はコロナ禍の影響で採用を絞った企業が多かった。そのため、今年は積極的な企業が多いとのこと。その中の特徴の一つとして、通年採用を取り入れる企業が増えたらしい。短期で面接し採用するのでなく、一年間じっくりと関係を構築することでメンバーシップを作ってから入社してもらうことにしている。

脱成長するのも、一つの考え方だと思う。

法人民主主義が立ち上がる

今後、民主主義を守護するのは議会ではなく企業である

2021年3月にジョージア州で成立した投票法にコカコーラ、デルタ航空などの経営者や企業が反対の意向を明らかにした。次々と賛同が増え、MLBなどもジョージア州でのオールスターゲームの開催をやめると表明。そして、アマゾン、グーグル、スターバックス、バンクオブアメリカなどが賛同していき、コーポレート・アクティビズムの様相を呈してきた。

ジョージア州で成立した投票法とは

ジョージア州は共和党が多い地盤なのに大統領選でトランプ氏が投票数で負けたことが背景。マイノリティーの人の票が民主党に流れたのだとし、自分たちに有利になるようにマイノリティーが投票しにくくするための法律を作った。郵便投票制限や期日前投票を制限したり、身元確認を厳重にし(黒人は免許持っていない人多いので、投票できない人が出る)、投票箱の設置数を減らす内容が盛り込まれた。議会が民主主義に反するようなことを決定してことに対し、企業が待ったをかけたのが新しい。共和党の議員が多いことも民主主義ではあるし、プロセスは合法的に議会を通っているが、それを止められるのが企業になった。

なぜ、企業は民主主義を重視するのか?

独裁主義の元では、多様性は排除される。そうすると、イノベーションは起こらない。シュンペーターが定義したようにイノベーションとは「新結合」である。誰もが同じような考え方や価値観の世界では新たな結合はおこらない。色々な問題の元やぶつかり合いにも発展するが、多様性はアメリカがイノベーション起こせている理由の一つ。日本でも多様性を認めて許容する姿勢が求められていくだろう。

民主主義がイノベーションの構造を作っていることがアメリカを見ると分かる気がする。ブランドアクティビズムを示すことで生活者にも見せることができる。

2021年6月の提言:変化を起こそう

いいときも、悪いときも今の状態が永遠に続くことはない。気づかないだけで、時々刻々変化の波は訪れる。自ら変わることで、変化の波を乗り超えよう。

次回の「月間よげんの書」は7月16日(金)の開催となります。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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