【開催報告】月刊:よげんの書2021年5月号(前編)―― “みんな”でできることを考えよう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は5/18に行われた「月刊:よげんの書5月号」の前半で発表された内容をご紹介いたします。
※よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されています。開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載いたします※

目次

ポップカルチャーが多様性を推進させる

第93回アカデミー賞でノマドランドが作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門を制覇

ノマドランド監督のクロエ・ジャオ氏は有色人種の女性として初の監督賞を受賞した。他には、助演女優賞でユン・ヨジョン(韓国出身女性)、助演男優賞でダニエル・カルーヤ(アフリカ系男性)がそれぞれ受賞した。昨年の『パラサイト』に続き、これまで「白人ばかり」と批判されてきたオスカー受賞者にアジア系やアフリカ系が名を連ね、多様性の進展があると評価されている。

一方、グラミー賞(音楽の賞)はまだ多様性について対応できておらず、ボイコットするミュージシャンもいた。アカデミー賞とコントラストがでてきてしまっている。ダイバーシティを取り入れないと、賞の権威の強さも変わってきそうである。

監督の過去の発言が問題になり、中国本土では授賞式の放送が禁じられる

せっかく中国系の監督が受賞したに関わらず、中国本土ではアカデミー賞授賞式の放送が禁じられた。ジャオ氏の2013年の中国への批判的な発言が掘り起こされたことが理由だ。また、中国の影響が強くなっている香港では約50年ぶりに授賞式が放送されなかった。香港でのデモに関するドキュメンタリー映画のノミネートがアカデミー賞でされたことにより、検閲の対象になったようだ。

ポピュラーカルチャーから多様性が推進されている一方、それを良しとしない国が明らかになり、浮き彫りになっている。

企業も今後ブランドアクティビズムとして扱うのが難しいテーマも発信しなくてはならない。その際、映画やポップカルチャーの作品をうまく使って発信するのが必要なのかもしれない。

アメリカのテレビの視聴率が悪かったらしい。半分になってしまった。去年『パラサイト』が受賞した際、トランプ元大統領が批判したのも一因かもしれない。白人中心だった受賞が、そうでなくなった。

アメリカの映画産業はグローバルに展開しているので、多様性を打ち出さなくてはならない。でも国内には分断がある。「グローバルな多様性」対「保護主義」の対立が表れているように思う。

 給付金の使い方が明らかになる

給付金が支給された週から数週間にわたり消費が増加

家計簿アプリ『マネーフォワード』と早稲田大学、豪クイーンズランド大学の研究チームが給付金のうち6%〜27%が消費として利用されたと発表。
明確に消費に回った給付金は1人あたり6000円。ATMで引き出した分も消費に回ったとして合算すると1万6000円。親族などへの送金なども含めた全体の取引は2万7000円だった。労働所得の低い家庭ではより多くの給付金を消費として利用した。

給付金が使用されたカテゴリー

  • 「食費と生活必需品」や「対面を伴うサービス(飲食など)」の支出は給付金支給後、早い段階=振り込まれてすぐに反応があった。
  • 「耐久財」や「住宅ローン・家賃・保険などへの支払い」による支出は長期にわたり反応がある。
  • 「その他の非耐久財」(生活必需品以外のもの)への支出は、ほぼ反応が見られない。

生活のための支出や、ちょっとしたお出かけや外食には使われたようだ。経済への刺激はあったが、政府としてはもっと強い刺激が欲しかったのではないか。

アメリカでは3月に3度目となる現金給付が決定

1人あたり最大1400ドル(約15万円)が支払われるという。ただし、対象を絞っての給付となる。今回は年収7万5000ドル(約810万円)未満の人が対象となり、個人年収7万5000ドル、あるいはカップルの世帯年収15万ドル以上の人への給付は廃止される。

データにより、所得低い人に給付することによって速やかに使われることが分かっている。対象を絞ることで、経済への刺激もちゃんと反応があることが分かった。
もしも日本でも再度給付金があるとすれば、アメリカのような決定がされるのではないか。

特別定額給付金により、所得は去年から2万円以上増えている。だが、給付金を除くと、去年から6千円減っている。消費は減っているので貯蓄に回っているようだ。

日本でも給付金付与に際し、所得制限しようかと議論はあった。しかし、給付まで3,4か月かかりそう、ということで速度を優先して給付した。きめが細かい対応は現状だとできない。
アメリカが素早く所得別に給付できるのは、デジタルガバメント(政府)が実現できているから。日本もデジタル庁ができたら、素早く対応できるようになることを期待している。

ワクチンがお金の使い方を変える

COVID-19のワクチン接種が個人消費「再起動」の原動力となる

日本経済新聞に、4月の消費者態度指数(調査会社イプソスなど調べ)の昨年末比の改善幅と、新型コロナワクチン接種率が掲載されていた。ワクチン接種が進む米国やイスラエルではレジャーや外食などがコロナ前の水準に迫っている。広くワクチンを接種できている国は、日常に戻りつつあることを示している。
対照的に接種が遅れる日本やブラジルは消費回復が鈍く、明暗が鮮明になっている。ワクチン接種戦略の巧拙がポストコロナの経済回復を左右する局面に入っている。

対面サービスが回復し巣ごもりが停滞する

人口の5割強である3400万人が1回目の接種を受けた英国では、1日の感染者数がピーク時の6万人超から2千人台と激減。4月12日からは飲食店の屋外営業を再開した。英国・米国はコロナ前と比べて飲食店の予約件数が8割の水準まで回復。イスラエルは100%越えている。日常までもうちょっとのところまで進んでいる。

一方で、巣ごもりの代表的な消費先と言われている動画配信サービスのネットフリックスの4~6月期の会員純増数は過去5年間で最低の見込み。「自宅待機が終われば視聴は減少し、会員数の増加も減速することが予想される」と自ら言及した。ネットフリックスに迫る勢いで会員数を伸ばしていたディズニーチャンネルも伸び悩み、鈍化しているらしい。

巣ごもりで需要があったところは停滞し、自宅から外に出てサービスを受けるようになってきて、お金の使い方が変わってきた。

イギリスは禁止されていることが多かったから、欲求のマグマが相当溜まっているようだ。日本も貯蓄が増えたと言われているので、相当溜まっている。噴出したらすごいのでは。でもワクチン次第。ワクチンと治療薬しか克服の道はないと言われている。
全世界の人々がある程度ワクチンを接種してからはじめて安全が得られる。しかし、そうなるまで3年かかると言われている。

ワクチンの接種が進んでいない国は、今コロナ患者数が少なくとも、これから危機が来る。台湾は患者数を抑え込むことができた。しかし、まだ世界でコロナが蔓延しているので、ワクチンによって免疫をつけないと、また感染者数が増える危機に直面することになる。

コロナがスローな○○を定着させる

キリンHDが直営店での「飲み放題プラン」の提供を終了

キリンは酒類メーカー大手4社ではじめて「飲み放題プラン」の提供を終了した。コロナ禍が終息しても、今後「飲み放題プラン」は行わないとのこと。同社は2017年からスロードリンクを掲げており、「ゆっくり語り合い、楽しさを分かち合う」「お酒も料理もスローに味わう」ことを推薦している。

緊急事態開けたらワーッと飲みたい気持ちもあるかもしれないが、今後はスローな飲み方は定着したほうがいいのかもしれない。

スローフード/スローライフに関わる行動も増えている

スローフードは食とそれを取り巻くシステムをより良いものにするための運動で、1989年にはじまった。スローライフは厳密に定義された言葉ではないが、居住地や交通手段、教育など生活を取り巻く環境全般を見直そうという取り組み。

三重県の出版社が「スロー」をテーマにした県内のレストランを紹介するガイドブックを4月1日に刊行。コロナ対策がされていて、ゆっくりと過ごせる食堂を特集している。コロナに気を付けながらゆっくり食事を楽しめる場所を紹介しており、飲食店の支援にもなるので注目されている。
スローライフの一例として、東京都から人口流出がある。東京新聞が算出した4月1日時点の東京の人口は、全年同月と比較して2.5万人減だった。住む場所や環境を変えることにより、ライフスタイルも変えて、東京じゃない所で過ごそうという人が増えてきているのではないか。

スローフードやスローライフは今後定着していくかもしれない。

アクセルを踏まず、スローダウンしよう

世界的ジャーナリストのナオミ・クライン氏は、コロナ禍が始まってすぐに「日常に戻ろうとアクセルを踏み込めば、ウイルスも勢いを盛り返すからスローダウンをしよう」と訴えていた。
スローとは時間のことである。コロナ禍の在宅勤務などで通勤時間がなくなり、時間を自由に自分自身のために使えるようになった。時間を有意義に使うというトレンドは、コロナ以降も続いてほしい。

充実した時間を過ごす、という視点でのマーケティングがより必要になるかもしれない。

飲み放題は短時間にたくさん飲むのが得。つまり、効率を重視したもの。食事はゆっくり楽しむもの、などとコロナをきっかけに価値観が変わる可能性があり、より豊かな生活を送れるようになるかも。

商品開発や販促コミュニケーションでもスローダウンを意識すると、生活者との新しい接点が作れるかもしれない。

中間層に救いの手が差し伸べられる

4月29日の施政方針演説で、アメリカ大統領のジョー・バイデン氏が「ウォール街ではなく中間層がこの国を作ったのだ」と、力強く発言。

トリクルダウンは起きなかった。中間層からの経済発展を模索するべき

バイデン大統領はトリクルダウン(「富める者が富めば、貧しい者にも富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」とする仮説)は起こらなかったという評価を下した。今後は、中間層からの経済発展を模索する取り組みが開始されるとのこと。

所得の再配分を促すため、10年から15年かけて富裕層と企業への増税で4兆ドル(426兆円)の税収増を目指す。税は子育てや教育の支援に振り向ける。格差の拡大を食い止めるには、不公平を減らし、将来の経済成長につながる土台づくりが必要であると決断。

日本では一億総活躍社会≒一億総中流社会

少子高齢化社会の中で、一億総活躍社会というスローガンを日本の政府は発表している。日本が成長している時期、一億総中流社会であるという感覚が多くの人の中にあった。みんなが中流としてちゃんと満足できる社会になればいいと願っている。

みんな活躍すれば、みんな潤う社会になるといい。

「税」によって集金し、再配分するので、富の再配分は政治でしかできない。
コロナがきて、活躍したのはエッセンシャルワーカーだった。エッセンシャルワーカーがいなくなったらどうしようもなくなる。彼らがもっと報われるよう、富の再配分は必要になる。

2021年5月の提言:“みんな”でできることを考えよう

多様性が推進され、地域・経済・人種などの格差が正されていく芽が見えている。
「みんな」でできることが価値になる社会がやってくると、「みんなでできること」を提示できることが強さになるかもしれない。

次回の「月間よげんの書」は6月18日(金)の開催となります。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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