月刊:よげんの書アーカイブ~【2020年12月号】前編 ―― 時代のナラティブを 商品やマーケティングに取り込もう

よげんの書は、生活の変化や経済・環境の変化など、社会課題を背景に少し先の生活を考えるマーケティングコンテンツです。企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のナラティブをみなさんと共有するために定期的にセミナーを開催し、毎月10のよげんを発表しています。

本ブログでは、2020年12月に発表した10のよげんの中の5つをセミナーでお話した内容のサマリとともにお届けします。

目次

2020年12月号のよげん:前編

RFIDの効果的活用がはじまる

RFIDの効果的な活用事例が聞こえてくるようになりました。今、もっとも生活者にとって身近なRFIDの利用場面は「ユニクロ」のセルフレジではないでしょうか。ユニクロで陳列されるすべての商品の値札にRFIDが埋め込まれ、セルフレジに商品を入れたカゴをセットすると会計と支払いができるシステムが構築されています。

RFIDは以前からその可能性に注目されていましたが、矢野経済研究所の市場規模・予測のデータによると、2018年に380億の市場であったRFIDは、2023年に516億の市場規模になると控えめの予測がされています。その背景として、商品一つひとつへのタグ付けや各拠点・店舗への機器配置など、RFIDは導入にかなりの初期投資がかかることが具体的な導入に対するハードルとしてあります。

こうした状況下において、RFID関連機器の価格の圧縮に加えて、社会が抱えている課題に対する活用が進み、そのハードルを越える可能性が見えてきました。そのひとつの事例として、2020年11月2日から経産省がファミリーマート、ポプラと取り組みはじめた実証実験があります。この実験では、RFIDを活用した在庫管理、消費期限管理、値引き・ポイント付与管理を行い、食品廃棄率の低下、省力化を目指して取り組みます。

もうひとつ。COVID-19の巣ごもり需要によって、配達員人員のひっ迫などの課題を抱える配送業界の日本通運がRFIDの活用をはじめました。日通はRFIDを使い、荷物の位置・数を無線で把握、先回りでトラック手配します。消費者のニーズをイチ早く把握し、過剰在庫への対応や、ひっ迫する配達の人員課題に対応する取り組みをRFIDで実現しています。このように、社会課題への対応する手段として、RFIDの活用が進むと感じる事例です。

中国による民主主義崩壊の危機が人々の心に広がる

2020年12月に日本でも多くの耳目を集めたのが、香港の民主活動家「周庭=アグネス・チョウ」の禁錮刑が決まるというニュースです。アグネスさんはソーシャルメディアを中心にして、民主活動に加えて、自分の生活や好きなものを発信する、普通のZ世代の女の子という側面もありました。そんな普通な女の子が、10ヶ月も外の社会と隔離されていまう。そんな悲しい事実に衝撃を感じた方も多かったと思います。

日本におけるリアクションをTwitterで確認すると、禁錮刑が確定された12月2日に「周庭」というワードに言及するツイートが多くなっていました。そうしたツイートに合わせて「香港 民主主義」というワードに言及するツイートも増加していました。香港という国全体ではなく、感情移入できる一人の個人の問題が見えてきて、大きな全体の問題に日本の多くの人が危機感を持ちはじめたという状況が見て取れました。

中国に対する危機感、所謂チャイナリスクは日本以外の国でも広がっています。中国が香港国家安全維持法を施行した6月末、スイス・ジュネーブの国連人権理事会ではキューバを代表とする53カ国が同法への支持を表明し、懸念を示した日欧など27カ国を上回る状況でした。しかし、香港国家安全法を支持した53カ国も習氏が最高指導者になった2012年ごろから少しずつ中国から離れる動きが目立ってきています。国という大きな単位でも、個々人に中にも、中国による民主主義崩壊の危機感が高まっています。

中古・リサイクル市場に注目が集まる

スエーデンの家具メーカー・ブランドの「イケア」が、11月にスエーデン本国で初めての中古家具専門店をオープンさせました。消費者が環境対応を基準に企業を選別する流れが強まり、成長を支えてきた新品の大量生産・販売の戦略転換が求められる中、大きな第一歩を踏み出した形になります。同店の価格は通常店舗に比べて平均5割安く、環境への配慮に加えて、消費者のメリットも打ち出しています。

こうした環境対応に対する取り組みは、それを商機と捉える企業も増えています。日本経済新聞社がまとめた2020年の「SDGs経営調査」では、リサイクルなど資源の有効活用が新規事業の機会になるとみて分析している企業が57%と、19年の前回の調査から4ポイント伸びています。一方で資源の枯渇など事業存続のリスクと捉えて調査をしている企業も60%にのぼることから、環境対応は将来の成長と既存事業の維持の両面でより重要になっているとしている企業が多くなっています。資源の有効活用のための「中古・リサイクル市場」に注目が集まります。

気候変動対策への政策がうたれる

国連防災機関によると、気候変動による経済損失は2017年までの20年間で約230兆円。その前の20年間に比べ2.5倍に拡大しています。日々インフラやそれに関わる技術力は高まっていますが、そうしたテクノロジーを持ってしても気候変動や自然災害の脅威を退けることができず、損失を生んでしまっているところに怖さを感じます。こうした、大きな損失が生じる気候変動リスクに対して、金融庁は3メガバンクに今後30年を見据えた財務分析と対策を求め、日銀も金融機関の経営への影響を点検することを求めています。国単位で気候変動リスクに対応する動きがはじまっています。

同時に生活者にも、気候変動リスクとそれに対する対策を求める意識が高まっています。日本経済新聞社の世論調査で、菅義偉首相が推進する規制改革について期待する政策を聞いたところ、生活者が一番に挙げたのは気候変動への対策としての再生可能エネルギーの活用でした。今や気候変動は、全人類が自分ゴトとして考え、話をするべきテーマである「時代のナラティブ」ではないでしょうか。

社会の空気感を掴む一つの指標として、多くの人が観た、ヒット映画作品をリファレンスすることがあります。例えば、2019年の日本・韓国・米国で作られた映画のナンバー1ヒット作品を確認すると、そのすべてで気候変動が表象されています。日本は「天気の子」でした。この作品はそのまま気候変動によって洪水被害を受ける日本が舞台です。併せて、格差社会と世代間闘争の物語を描いています。韓国は「パラサイト」でした。この作品はアカデミー賞でオスカーも受賞し、世界で認められる作品となりました。一番のテーマは格差問題ですが、そうした格差ヒエラルキーの下位にいる家族が気候変動による洪水被害をきっかけに壊れていく物語が描かれています。米国は「アベンジャーズ:エンドゲーム」です。アベンジャーズシリーズは、11年間かけて23作品が創られましたが、その区切りとなるこのエンドゲームで、23作品すべてのヒーローが集まり、最後に戦う相手は気候変動を表象するヴィランでした。

全世界が今、人類の力を結集して取り組む課題は気候変動だ。と、そんなメッセージが感じられます。

命の経済の発展が必要であることに気が付く

フランスの社会学者「ジャック・アタリ」がこんな示唆を人類に呼びかけています。

コロナ危機をきっかけに、世界各国は発展させるべき分野を見直すべきだと悟っただろう。私が命の経済と呼ぶ部門は医療や衛生管理、農業、クリーンなエネルギーなどだ。

こうしたジャック・アタリが言う「命の経済」に対する商品・サービスの開発が進んでいます。そのひとつは、21世紀半ばに温暖化ガス排出量の「実質ゼロ」をめざす動きが世界に広がったことによる、CO2を資源とみる「カーボンリサイクル」への取組みです。日本の企業「CO2資源化研究所」では、水素をエネルギー源に大気中のCO2を吸って育つ菌で人工肉のたんぱく質をつくる「UCDIプロテイン」という商品開発が進んでいます。この技術では、2KgのCO2を取り込むことで、1Kgのたんぱく質を製造することができます。米国の「エア・カンパニー」では、CO2と水というたった2つの原料を使って作る「エア・ウォッカ」を開発しました。”気候変動と戦ウォッカ”というキャッチ・コピーがついたこの商品は、1.5KgのCO2を取り込みながら、1Kgのアルコールを生成します。

また、気候変動やCOVID-19などの新たな健康面の危機から身を守るための新サービスもはじまっています。米国の「グローバル・レスキュー」は、個人のニーズに合わせる高額の医療サービスや専門の不動産会社、避難を支援する危機対応の専門業者であり、契約者に身の危険が迫ったときの救助をサービスとしています。同じく米国の「ビホス・グループ」は、サウスダコタ州ブラックヒルズにある約600の旧米軍施設を利用した、強力な空気清浄機を備えているシェルターを提供しています。

命の経済に関わる商品・サービスの開発が進みます。

2020年12月号のよげんから考える提言

201200.時代のナラティブを商品やマーケティングに取り組もう

全世界が自分ゴトとして取り組むイシューに言及することで、無視できない、注目される商品・マーケティングを創ることができると考えています。併せて、より良い世界・社会づくりに貢献できる、時代のナラティブを商品やマーケティングに取り込んでいきましょう。

 

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この記事を書いた人

株式会社ドゥ・ハウス 執行役員 聞く技術研究所 マネジャ

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