月刊:よげんの書アーカイブ~【2020年10月号】前編―――正しいと思うことを、しっかり意思表示しよう

よげんの書は、生活の変化や経済・環境の変化など、社会課題を背景に少し先の生活を考えるマーケティングコンテンツです。企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のナラティブをみなさんと共有するために定期的にセミナーを開催し、毎月10のよげんを発表しています。

本ブログでは、2020年10月に発表した10のよげんの中の5つをセミナーでお話した内容のサマリとともにお届けします。

目次

2020年10月号のよげん:前編

環境配慮に対する圧力が、企業にも個人にも高まる

環境配慮に対する圧力が、企業にも個人にも高まる

企業の環境配慮への取組みが加速しています。それは、自ら進んで推し進める取組みだけでなく、政府や投資家からの圧力により取り組まざるを得ない場面も数々生まれてきました。世界の500超の投資家が参加する「クライメート・アクション100プラス(CA100+)」は、グローバル企業161社の経営トップに温暖化ガスの排出量を50年までに実質ゼロにするよう求めた。戦略を立てて、実行するように促しています。

また、2020年9月22日には中国の習近平国家主席が2060年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする目標を明らかにしました。我々は新興国。これまでは「先進国が先行して対策を示すべきだ」という立場を取っていましたが、世界の経済を主導するためには、環境への配慮が必須であり、対応せざるを得なくなってきた状況が透けて見えます。

自ら進んで、前向きな取組みに動き出す日本企業も目立ってきました。9月10日には、競合関係にある花王とライオンが、洗剤などの詰め替え容器を回収して同じ容器に戻すリサイクル技術を共同開発すると発表しました。「競合だが、ESG(環境・社会・企業統治)の視点では協業相手」といったコメントが、今までにはない環境配慮に対する取組みの姿勢を感じさせます。

環境先進国の欧州では、個人の環境への取り組みを可視化する興味深いサービスも生まれています。スウェーデンの企業ドゥーコノミーのクレジットカード「DO BLACK」では、国連の2030年目標に基づく国別の一人当たり排出量を元に、個人のCO2排出量の年間上限を設定しています。上限を超えるとクレジットカードが使えなくなるという、個人の消費行動に環境配慮の姿勢を取り込む斬新なサービスとなっています。

5Gで複合現実(MR)の世界が広がる

5Gで複合現実(MR)の世界が広がる

2020年は日本にとって、5G元年だったはずですが、コロナの影響もあってかあまり関連する新しい情報が耳に届いてきませんでした。しかしここにきて、MR(複合現実)まわりで聞こえてくるようになってきました。次世代通信規格5Gの普及によって、XR、MR、ARなどのXR市場は2025年には1兆2,000憶となると、矢野経済研究所が予測しています。

5Gの通信環境を前提に、MRは屋外のアクティビティでの活用イメージが広がっています。ランナー向けのARグラス「Ghost Pacer」が、クラウドファンディングプラットフォームのKickstarterで出資の募集をはじめました。装着すれば目の前に仮想ランナー(アバター)が現れ、ペースメーカーとして自分の前を走りだし、目標とするタイムで走ることができるように先導してくれるMR技術を応用したサービスです。

Engadget JP
過去の自分が伴走するランナー向けARグラス「Ghost Pacer」出資募集中。Stravaデータと連携 - Engadget 日...
過去の自分が伴走するランナー向けARグラス「Ghost Pacer」出資募集中。Stravaデータと連携 - Engadget 日...クラウドファンディングプラットフォームのKickstarterで、ランナー向けのARグラス「Ghost Pacer」が出資を募集中です

電車の整備を請け負う堀江車輌電装では、『背中を見て覚えろ』というベテランの技能伝承に代わって、MRレンズを活用します。装着すると複合現実が見えるゴーグル型端末が、製造業の最前線で使われはじめています。海外拠点への技術支援や、新型コロナ対策のための遠隔会議などMR技術の用途が広がっています。

言いづらいことをはっきりと言う人が増える

言いづらいことをはっきりと言う人が増える

言いづらいことをはっきりと言う人が増える。その空気を感じたひとつの理由は、ドラマ「半沢直樹」のヒットです。最終話は令和ドラマ1位の視聴率32.7%を記録し、全10話が22%超えを達成しました。最後は尊敬する上司である、頭取にまで言いづらいことをはっきりと言って、自分の主義・正義を通し切って、良い形に収めて終わりました。

そして、アメリカのトランプ大統領です。2017年の就任から一貫して言いたいことを言い、自分の主張を通してきました。その結果、分断が進み、中国とのデカップリングの問題や、大統領選挙時期には共和党と民主党とのアメリカ国内における分断も顕著になりました。

そんなトランプ大統領に対して、言いづらいことをはっきりと言う企業も現れました。米アウトドアアパレルブランド「パタゴニア」は、商品のタグに「投票してクソ野郎を落選させろ」と表記を入れ、トランプ大統領への批判を表明しました。Twitterには、「このタグがついているなら商品を買いたい」という声も投稿されており、政治的なメッセージが込められたファッションを大勢の人たちが支持する状況も見られます。

ハフポスト
パタゴニアのタグに「クソ野郎を落選させろ」。強烈なメッセージに共感集まる
パタゴニアのタグに「クソ野郎を落選させろ」。強烈なメッセージに共感集まる政治はファッションにとっても大切だ

企業にも言いづらいことをはっきりと表明する姿勢が求められており、その姿勢が生活者の共感を呼ぶ状態が生まれてきているように感じられます。

日常的にAiの力が試される。そして、その力が認められる

日常的にAiの力が試される。そして、その力が認められる

総務省が2016年にまとめた調査結果では、日米の就労者が抱くAIのイメージは、日米双方で「人間の知覚や発話の代替」に近いものが多く、加えて、米国では「人間の脳の代替に近い」イメージも浸透しているという結果でした。4年後の2020年では、日本においても「人間の脳の代替に近い」分野で、AIが活用される場面が一般生活者にも多く目に見えるようになってきました。

例えば、将棋の藤井二冠が将棋のトレーニングに使う、PCのCPUは50万円もする高性能なものであり、CPUの性能でAIの読みの速さが変わり、家庭用パソコンのCPUが1秒間に約200万手読むのに対し、藤井二冠が使っているCPUでは30倍の6000万手が読めるという報道が世間の耳目を集めました。また日常で目にする、プロ野球の中継では「AIキャッチャー」が導入されました。AIキャッチャーは対戦中のピッチャーとバッター、カウント、ランナーの位置など現在の試合状況を踏まえて、失点を防ぐための最適な球種とコースを1球毎・リアルタイムに算出するAIです。

データスタジアム株式会社
アナリストレポート第20回「もっと伝えたいAIキャッチャーのウラ話」 | データスタジアム株式会社
アナリストレポート第20回「もっと伝えたいAIキャッチャーのウラ話」 | データスタジアム株式会社 日本テレビ系プロ野球中継「DRAMATIC BASEBALL 2020」にて、AIキャッチャー(※1)が始まりました。今回は開発者のひとりとして、放送では枠の都合上、語りきれない情報を...

同じく、2016年の総務省のAIの発展と利活用の進化に関する研究資料では、それまで「作業の代替・翻訳の代替」として活用されてきたAIが、2020年には「知識の代替」としての利活用が進むとレポートされています。プロ棋士の知識の代替、プロキャッチャーの知識の代替として、日常的にAIの力が試されて、我々もその力を実感できる環境が整ってきたように感じます。

日本の消費の復活は、高齢者のDXがカギとなる

日本の消費の復活は、高齢者のDXがカギとなる

ポストコロナの国内消費に関するデータでは、日本はコロナ感染を抑えてきたが、2020年4~6月期の家計消費は266兆円(名目、年率換算)と1~3月期から9%減り、消費の勢いが他の先進国と比較して弱くなっています。一方で、家計の現預金は給付金などの影響で過去最高に積みあがっています。現預金は増えているのに、消費に繋がらない。消費が回復する他先進国との違いは日本のネット消費の少なさだと言われています。

ドイツの調査会社スタティスタによると、日本のインターネットユーザーでオンライン購入の経験が過去1年間ゼロだった比率は16%であり、先進国のなかで最も高く、新興国を含めた45カ国でも4番目の高さです。コロナ禍の自粛生活を通して、日本でもECの利用頻度は高まったが、年代が高くなるにつれて、頻度向上者の割合が低くなっています。

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別のデータでは、65歳以上の高齢者の就業者数は年々増加しており、4人に1人以上が就業している現役選手でもあります。こうした現役シニアの消費を促すために、売り手の工夫として、消費現場のDXが必要です。例えば、シニア専用のウェブ運営会社「オースタンス」が運営するコミュニティでは、35万人のシニアが会員になっています。このコミュニティでは、ネット上で、シニアのインフルエンサーやアイドルが活躍しているそうです。

趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)
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趣味でつながる、仲間ができる、大人世代のSNS趣味人倶楽部(しゅみーとくらぶ)は、大人世代が趣味や仲間を探すためのコミュニティサイトです。旅行やカメラ、ウォーキングなどの趣味や日常の出来事、健康など最近気に...

かつて、井戸端会議でシニア同士で新しいクチコミ情報が飛び交い、新しい消費を生んでいたように、高齢者のDXによるコミュニケーションの活性化がポストコロナの日本の消費復活のカギを握るのではないでしょうか。

2020年10月号のよげんから考える提言

正しいと思うことを、しっかり意思表示しよう

2020年10月のよげんから考える提言は「正しいと思うことを、しっかり意思表示しよう」としました。

未だ世界には、新型コロナウイルスの情報をはじめとした衝撃的なオピニオンが飛び交い生活者の耳目は普通の広告やプロモーションには集まらず、心にも残りません。企業やブランド、商品として、発言するのには勇気がいるけど、正しいと思う情報をしっかりと意思表示する必要があります。そういう情報こそ、人々の琴線に触れ、共感する人たちによって、より広く拡散されていくはずです。

 

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この記事を書いた人

株式会社ドゥ・ハウス 執行役員 聞く技術研究所 マネジャ

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