「クチコミは起こしたいが、どこから手をつければいいのか、何を分析すればいいのかわからない」
確かに、このプロモーション手法は広告や販売促進と違って起こすのが難しいと言われています。広告は企業側から“発信する”ものですが、クチコミ実施が難しいのは、それが生活者の判断により“発信される”ものだからです。しかし、そのメカニズムをきちんと理解し、その上で施策を考えれば不可能なことではありません。
今回は、そんなクチコミがどのような仕組みで成り立っているのか?その仕組みから自社は何をすればいいのか?そんなことを考えるためのフレームワークを当社ドゥ・ハウスの「クチコミ設計時のポイント」から考察しました。
クチコミ設計時のポイントとは?今後の活用可能性は?
上図は、当社ドゥ・ハウスが30年に渡ってクチコミに取り組んで得た、クチコミ実施のコツやポイントをまとめたものです。
- 誰から誰に伝えるのか(Target)
- 何を伝えるのか(Text)
- どのように伝えるのか(Context)
このポイントはいわば、クチコミに関する施策を分析・考案するためのツールと言えます。リアルなクチコミはもちろん、ネット上のソーシャルなクチコミにも活用することが可能です。
また、3つのポイントさえ押さえていれば、“モレなくダブリなく”クチコミに関する分析ができるということから、今後、フレームワークとしての活用も期待できます。では実際にフレームワークとして活用するにはどうすればいいのか?今回はその方法について考察しました。
クチコミを取り巻く要因を分析できるフレームワーク
上図は先ほどのポイントをさらに拡大した“クチコミフレームワーク”です。
クチコミ設計時のポイントは、誰から誰に伝えるのか、何を伝えるのか、どのように伝えるのかという2人の受発信者に関する細かい分析にあたるため、“生活者”を“ミクロ”の視点で捉えたものと言えます。これを縦の方向、つまり“マクロ”の視点に拡大すると受発信者の集合を捉えたクチコミ市場になります。
さらに“生活者”を横の方向に展開すると、“企業”になり、それを“ミクロ”の視点で捉えると個々の企業のクチコミ施策になります。そして最後に“企業”を“マクロ”の視点に拡大すると企業の集合を捉えたクチコミ業界になります。
このようにクチコミに関わる生活者と企業を、小さな視点と大きな視点で考えることで、クチコミに関する分析で抜け漏れが出てくる可能性をなくすことができます。
このフレームワークはクチコミを取り巻く要因を分析するツールで、要は『クチコミ受発信者・市場、そして競合を見て、それに対して自社のクチコミ施策をどうしていくか』を考えるためのものです。
4つの分析はそれぞれ外部分析と内部分析に分けられます。“クチコミの市場分析”と“クチコミの受発信者分析”と“クチコミの5つのプレイヤー分析”が外部分析になり、“クチコミ設計のプロセス分析”が内部分析になります。
今回は、その中の“クチコミの市場分析”についてご紹介します。
最初のステップとしてクチコミの“集団”を分析する
「さあ、では早速クチコミに関する施策を考えましょう」といっても何も分析せずにいきなり施策を考えるのは至難の技です。想定されるクチコミ受発信者はどのくらいいるのか、クチコミ受発信者の性別・年代の構成はどのようになっているのかといったことを、まずはよく考える必要があります。
そのための最初のステップが、クチコミの市場分析(集団レベル)です。
上図は以前、記事でご紹介した“インフォグラフィックによるクチコミ要素図”です。どんな生活者が、何を、どのように伝えたか(伝えられたか)といったことを主に定量データで分析する手法です。
図を見てもわかる通り、この手法はクチコミ設計時に必要な“Target”“Text”“Context”を包含しています。黄枠がどんな生活者(Target)、赤枠が何を(Text)、緑枠がどのように(Context)を表しているデータです。
クチコミの市場分析をする際は最低限、上記3つのデータを分析する必要があります。なぜなら、『施策の設計段階で3つを明確にしなければクチコミは成立しない』からです。
例えば、“Target”をよく分析しないまま、クチコミ設計の段階で“Target”を設定してもそれが的外れの可能性が大いにあります。逆に上記をしっかり分析していればクチコミ施策の“Target”を明らかにすることができます。
また、3つのデータ以外にも、必要に応じてクチコミ市場規模(受発信者の人数)や、その推移や比率といった定量データも分析します。
もちろん、「どんなクチコミがされているか」といった定性データも必要ですが、これは“クチコミの集団”を捉えるための分析です。そのため、細かい定性分析は“クチコミの受発信者分析”で行って、ここでは具体的な数値で示すことを心がけましょう。
さらにこれらの定量データを分析する際は、「クチコミ市場をどう細分化して分析するか」が重要になります。
基本的に「○○市場では△△人の生活者がクチコミをしている」といったざっくりしたデータからは何も見えてきません。このようなデータだと「クチコミ発信者はあまり多くの人にクチコミしないね」と言うのがやっとです。重要なのは大きなクチコミ市場を、「どんな切り口で細分化するか」ということです。
たとえクチコミ受発信者の人数が少なくても、その市場を違う切り口で細分化してみれば、その人数が多いこともあり得ます。
例として以前、記事で書いた“差別化された商品・サービスのクチコミ市場”を挙げます。
この市場ではクチコミ発信者は全体的に1人~2人にしかクチコミをしない傾向があります。しかし、その中で“30代男性”と“20代女性”においては1人の次に10人以上にクチコミをするという傾向があります(おそらくインターネット上のクチコミによる人数です)。
そのため、これらの生活者をターゲットにした施策を実践すれば、より効率的にクチコミを波及できると考えられます。
このように、全体的にクチコミがされないという分析で終わらせるよりも“30代男性”“20代女性”と具体化(望ましくはもっと具体化)することが重要です。
以上が今回の“クチコミフレームワーク”とその中の“クチコミの市場分析”のご紹介です。
次回はフレームワーク内の“クチコミの受発信者分析(個人レベル)”と“クチコミの5つのプレイヤー分析”をご紹介します。
クチコミの市場分析は集団レベルの分析でしたが、受発信者分析では個人レベルにブレークダウンして、より具体的な受発信者像を捉えていきます。
また、クチコミの5つのプレイヤー分析では、自社のクチコミ施策に関係してくる競合などのプレイヤーを分析し、それを踏まえた上でどのようにすれば施策が成功するかを考えていきます。
●記事内データの出所 -myアンケート(ドゥ・ハウス)調べ -調査期間:2014年02月17日(月) ~ 2014年02月19日(水) -対象者属性:男女/20~69歳/全国 -サンプル数:2,551サンプル
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