5.行動を観察する・行動をヒアリングする

2024.04.01

コラム・データ

行動観察とヒアリングの違い

ここでは(行動)観察とヒアリングの違いを説明します。観察対象になるのは人の行動であり、意識は行動の背景に隠れています。観察では意識を見ることはできませんが、「行動」観察を通じて、観察者が「対象者の意識」をイメージしていくべきもの(つまり仮説立てる)です。対して、ヒアリング(=インタビュー)では、「行動」を聞くこともできますし、「意識」も聞くことができます。「行動」について、根ほり葉ほり精緻に聞けば、生活者は実際にあったことをそのまま回答することができます。どんな時に、どのように行動したのか、ありありと知ることができます。しかし、意識についてはどうでしょうか?


「意識」は、当の本人にとっても曖昧でわからないものです。それを思い出しつつ、考えながら、つじつまが合うように、理性的にしゃべってしまいます。そのため、「意識」を不用意に聞いても、得られた回答は、ウソか理性的で後付されたものになってしまい、マーケティングに役立つデータからは程遠いものになってしまうのです。


そこで重要なのが<行動を聞く>ということなのです。



「意識」ではなく「行動」(=事実)を聴く。そして可能な限り観察する

「意識」と「行動」には乖離があります。

以前行った調査の参加者で「健康のためもあり、薄味の食事を好んでいます。塩分は取りすぎたくないと思っています」という人がいました。しかし、その人に、どんな食事をしているか具体的な<行動>を聞くと、毎食お漬物を食べ、昨日はラーメンを汁まで飲んだといいます。このように具体的な行動を聞くだけで、本当に塩分を取らないように行動しているのかどうかが見えてきます。
さらに、実際にこの方のお宅に伺って調理行動を観察すると、醤油を計量せずにドバッと入れて煮物を作っており、試食させてもらうと濃い目の味付けだったのです。もちろん、この方はウソをついたつもりはなかったでしょうが、「意識」と「行動」には乖離があることを改めて実感した調査でした。


また、別の調査で「洗顔料はよーく泡立てて使います」という人がいました。洗顔の様子を観察させてもらうと、マーケターがイメージする「よく泡立てて」とはかなり異なっていたそうです。このように同じ言葉でも、生活者がイメージするものとマーケターイメージするものが異なっていることもあるのです。


このように実際に観察し、キッチン・洗面所の現場に飛び込むことで、更に事実が見えてきます。これらの調査ではインタビューと合わせて行動観察をしたおかげで、方向性を誤らずに、マーケティングに役立つデータを得ることができました。


はじめにこの方が口にした「薄味が好き」という言葉を、そのまま受け取り薄味の新商品を出していたら…、きっと「美味しくない」と評価されてしまったでしょう。


聞く力は観察する力

上記の例のように、実際の生活現場に飛び込み、観察することができればベストですが、商品開発サイクルが短くなっている今、1商品の開発にそこまで時間をかけることは現実的ではないかもしれません。

そこで重要になってくるのが「聞く力」です。「聞く力」とは事実観察能力です。マーケティングに役立つ事実・実態を、「聞く力」で発見するのです。(これをファクトファインディングといいます。改めて別の章で述べてまいります)


マーケティングリサーチでは「聞く」が大切です。「聞く」には3つの段階があります。「聞く」と「訊く」と「聴く」です。英語でみてみるとわかりやすく整理できます。


  • 聞く………Hear
  • 訊く………Ask
  • 聴く………Listen


「聞く」は、ぼんやりとしていても耳に入ってくる、車のエンジン音、子どもの笑い声などです。聞こえてくるという受動的な聞き方です。「訊く」は、尋ねることで、聞きたいことを質問する能動的な聞き方です。そして「聴く」は、注意を傾けて聴くというさらに能動的な聞き方を指します。「聞く」には、「訊く」や「聴く」の側面を当然含んでいると考えています。臨床心理のカウンセラーの現場では、「LISTENせよ、ASKするな」という言葉があるそうです。


エクスクリエでいう「聞く力」も、高度な場面では「訊く」ことなく、ひたすら「聴く」ことによって相手や対象を観察し理解するという段階を持ちます。
エクスクリエでおこなっている聞く力を鍛えるための方法については別途記載したいと思います。

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