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ネガティブな『ソーヤー効果』が生み出す危険性
オウンドメディアやソーシャルメディアの運営に欠かせない、キャンペーンやポイント制度による生活者への”報酬”。時としてこの”報酬”が逆効果を生み出すケースがあります。 今まで楽しんで活動していたにも関わらず、報酬が発生したことで途端にやらされている感が生まれてしまい、活動のモチベーションが失われてしまうこと、もしくはその逆の現象をトム・ソーヤーのエピソードになぞらえて『ソーヤー効果』といいます。 この『ソーヤー効果』、ネガティブな面をみれば、創造的で楽しい遊びを退屈な仕事に変えてしまう危険な現象と捉えることができますが、名称の由来となったトム・ソーヤーのエピソードは退屈な仕事を楽しい遊びに変えることで成功した話であり、ポジティブな面を指しています。 『ソーヤー効果』の対比を示す事例として有名なのは、楽天レシピとクックパッドの事例です。巨大なプラットフォームと楽天スーパーポイントという強力なインセンティブを引っさげた楽天レシピに対し、自己実現の意欲と優良会員によって支えられているクックパッドは勢力をひっくり返される危険性がありました。しかし、現在もクックパッドが揺るがぬ地位を確立しています。その要因は生活者の動機の違いがあるといわれています。 投稿したらインセンティブがもらえるという仕組みはとても魅力的に映りますが、いつしかインセンティブをもらうために投稿するようになってしまい、結果、創造的なモチベーションを欠いてしまうということです。主婦がレシピを見ながら料理をするとき、夫や子どもの「おいしい」の一言がとても嬉しいそうです。そして「おいしい」と言ってもらえたら、もっと工夫をして喜んでもらいたい、同じように日々がんばっている主婦たちに教えてあげたい、という気持ちが生まれてくるそうです。投稿されているレシピにはそういった想いが込められているのかも知れません。
ポジティブな『ソーヤー効果』は忘れられない体験を生む
企業のオウンドメディアを解析していると、ポイントゲッターと呼ばれるインセンティブ目的の層とコメント投稿やコンテンツ閲覧を純粋に楽しんでいる層に別れ、それぞれ異なる行動をしていることがよくわかります。かといって、インセンティブの制度をやめてしまうとPVが下がり、媒体価値を落としてしまう。運営者の立場からしても、インセンティブをやめることの怖さは十分に理解できます。 それでは、どのようにしてネガティブな『ソーヤー効果』を避ければ良いのでしょうか? ある企業様のコーズマーケティングをお手伝いした際、ひとつの可能性を見つけることができました。 キャンペーンの認知促進を図るためにおいたソーシャルメディアのシェアボタンに”広めてもらうことで支援金額を増やす”という意味持たせて置いたところ、数日で500、2週間で1000、1ヶ月で5000のシェアがされました。 シェアした本人にインセンティブが支払われるわけではないのですが、多くの共感が広がっているのが目に見えてわかりました。マーケティングは利害関係のコントロールであるという認識を少なからずもっていたため、誰かの役に立ちたい、困っている人の力になろうという想いで行動する人がこんなにも多くいることに驚きました。 このように生活者のモチベーションを引き出すポジティブな『ソーヤー効果』は、一般参加者や主催者を巻き込み、忘れられない特別な体験を生み出してくれます。