聞く技術研究所

【開催報告】月刊:よげんの書2021年4月号(後編)ーアップデイトしよう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。 「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。 今回は4/16に行われた「月刊:よげんの書4月号」の後半で発表された内容をご紹介いたします。 ※よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されています。開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載いたします※ 「月刊:よげんの書4月号」前編はこちら。 【開催報告】月刊:よげんの書2021年4月号(前編)―― ニッチな領域の観察をはじめよう

「美白」が死語になる

人種の多様性議論に配慮し、「美白」表現を撤廃

ブラック・ライブズ・マターの広がりを受け、英ユニリーバや仏ロレアルなど欧米メーカーは20年6月、化粧品から「白さ」や「ホワイトニング」などの言葉を自粛/除くことを決めている。日本では花王が化粧品に「美白」表現を撤廃することを決めた。 「美白」はわかりやすく美しい表現だが、時代の変化によって多様性に配慮しない言葉として、ポジティブワードからネガティブワードに変わっていくだろう。

時代に合わせて言葉を選ぶ必要がある

文化庁の国語についての調査で、国語が乱れていないとする人は年々増加している。乱れていないとする理由は「言葉は時代によって変わるものだと思うから」が約4割。使用する言葉は時代時代に合わせていけばよいのだ。  
欧米の方がもっと言葉に対して意識的で、ブラック・ライブズ・マターで声を上げたラッパーは自分たちのことを「カラード」と呼んでいる。黒人だけではなく「白人以外」ということ。意識的に言葉を変えていっていると感じた。
旧約聖書に「最初に言葉ありき」とある。概念が大事ということ。
花王はグローバルに展開するなら、「美白」表現を撤廃するという判断は正解。差別発言する会社はグローバル的に嫌われ、レイシャルハラスメントしていると言われてしまうだろう。
かつては気にならなかったのが、時代が変わったことによりヘイトスピーチ、ヘイトクライムであるとされていく。頭の中がアップデートされていない人として見られてしまうのだ。

人権問題の対応が両刃の剣となる

機関投資家が世界の主要企業に取引状況を開示するよう求める

中国の少数民族ウイグル族の問題を巡って、機関投資家が世界の主要企業に取引状況を開示するよう求めた。多くの企業にとって成長が続く中国市場は重要だが、対応を誤ると欧米などの市場で反発を受けかねず、板挟みとなっている。
  • 投資家:ESG投資として、ガバナンスが効いている企業にしか投資しない。
  • 消費者:消費アクティビズムがあり、消費者は自分の主義と異なる企業の商品は買わないケースもある。より大きな市場から不買運動がおこることもある。
無印良品はフェアトレードであるというエビデンスを付けた上でそのまま使用すると発表した。それでも株価は下がった。  
アリババに高額の罰金が課せられたのを見て、自国のトップ企業でさえに間違ったこと/気に入らないと、断固とした対応をする国家であると突き付けられた気がする。
カントリーリスクがある国で、対応は非常に難しい時代。

個人投資家の日本株離れが進む

ハイリスクハイリターンの外国株式型への投資が増えている

2020年、外国株式型の投資信託に5兆円の資金が流入し、国内株式で運用する投信からは1.7兆円超が流出したと三菱アセット・ブレインズが試算した。 2020年、コロナ禍で株が上がったのはZOOMなどの企業。そのような企業が日本にはまだない。 個人にとって、自らの将来を託す大事な資金。自国の成長力をも冷徹に値踏みする投資家は、ハイリターンなところに投資していくだろう。

コロナの流行で風邪薬が売れなくなる

コロナ感染予防の手洗いやうがい、消毒で風邪をひく人が減少

公衆衛生意識が高まったので、風邪をひく人が減少したことと、在宅勤務で出社の機会が減ったことで風邪薬の需要も減ったのだろう。その中で、常備薬は落ち込んでおらず、症状別に抑える風邪薬が苦戦している。 従来、症状別の薬は日中に出勤して病院に行きづらい層に人気だった。以前は会社で会議があるから、風邪気味で咳がある時は咳止めを飲んで参加していた。今は在宅になっているので、鼻が出ていても、熱があっても大丈夫。咳もミュートにすればいい。だから風邪薬を飲む必要がなくなった。 インフルエンザも、患者報告数が流行の目安とされる水準に達することなくシーズンを終えた。流行が起きなかったのは、厚生労働省が今の方法で調査を始めた2000年以降で初めて。

その他の病気も減少

脳卒中、急性心筋梗塞で亡くなる人も減った。外でアルコールを飲む機会が減り、家庭で食事する機会が増えて、健康的な暮らしになった人もいるからでは。  
コロナで大変な思いもしているが、一方で、良くなった側面のデータ。
公衆衛生上のニューノーマルはこの一年で身についた。これをやれば、病気になりにくいと身に染みて感じるようになった。

パート女性の実質失業100万人超えが明らかになる

パート・アルバイトの方たちの就労時間が大きく減っている

就労時間について女性の約29%が「コロナ前と比べて、シフトが減少」と回答。シフト減とは、週3日勤務だったのが週1日になる、1日6時間働いていたのが3時間になったといったもの。

休業手当を受け取っていない人は7割

パート勤務というのは、勤めていれば失業していない。だが、シフトが減り、勤務時間が減ると、減収となる。「シフト5割以上減」で「休業手当受け取りなし」という厳しい状況にある人たちを「実質的失業者」と定義して試算してみると、女性で103.1万人、男性で43.4万人いる。 休業手当が支払われない場合、労働者側が自ら国の労働局に休業支援金・給付金を申請できるのだが、男女とも約5割がそのことを知らなかった。雇止めではなく、「減収」になっただけなので、手当がもらえないと思っていた人もいるという。ここにも課題が見える。

世帯収入は約8割が減少

男女とも85%前後が世帯収入減に見舞われている。収入が半減以上した人は女性で43.8%、男性で60.5%にも上っている。9割以上減収した人はそれぞれ10%前後もいた。(いずれも野村総合研究所調べ)  
失業していないけれど、収入が減ったというのは、真綿で首を絞めるようなものですね。
日本は企業が雇用調整金があるから、雇い続けられている。財源が厳しくなると、続けきれないかもしれないが。
今後もパンデミックは必ず起こる。コロナが収束しても次がある。今回得た知見を次に生かせるようにするのが大事。もう少ししたら、コロナの総括をやったほうがいいかもしれない。コロナが与えたもの、コロナが奪ったもの。こうしておけばよかった、ということをみんなで考えた方がいい。
アメリカは雇用の制度が違うので、一概に比べることはできないが……。一時期2000万人以上が失業したけれど、彼らは失業手当をもらって次に備えた。一時期失業率が14%だったものが、今6%に回復している。

2021年4月の提言:アップデイトしよう

社会通念は、驚くべきスピードで変化することがある。自分で捉えていた常識が、時代についていっていないことも出てくるだろう。自分の思い込みが間違っていることもある。 自分が今まで思ってきたものを否定することにもなるかもしれない。でも、それが成長になる。時代の変化や間違いに気づいたら、自分自身の認識をアップデイトしよう。昔の固定観念にとらわれず、常に初心者の気持ちでいることが大事。
 

次回の「月間よげんの書」は5月21日(金)の開催となります。ぜひお申し込みください