1.マーケティングにおける定性情報

2024.04.01

コラム・データ

定性情報とは

マーケティングで扱う情報には大きく分けて定量情報と定性情報があります。定量情報は数値で表わせるものです。

たとえば、数量、金額、市場シェア、割合などがあります。対して、定性情報とは数値表現のできないものです。文字や絵、写真などがそれにあたります。マーケティング領域で言えば、生活者の感想・意見、営業日報、バイヤーの言葉、売り場写真、SNSにアップされた写真やコメントなどです。



定性情報は見る人、聞く人によってその価値や重要度が異なります。例えば「とてもきれいなデザインだ」「目がさめるような赤だ」という言葉をどう受け止めるかは人によって異なります。


マーケティングに定性情報が必要な理由


理由その1:定量ではこれから来る変化を早期発見できないから


商品社会が成熟化し複雑化するにしたがって、実態を把握し、細やかな変化や機会をつかまえるためには定性情報が必要になって来ました。

しかし、定量調査では、これから来る変化を、早期に発見することはできません。なぜならば、定量調査を行うためには、設問設計をする段階で、選択肢にしたり、設問を作成したりする必要があります。変化の芽が小さいその変化に気づけずに選択肢にすることができなかったり、設問を作ることができなかったりするためです。
かといって、定量調査で発見できるくらいの大きな変化や実態については、すでに競合企業も目を付けていて、既にその芽を活用した商品開発が始まっていたり、商品化されていたりすることが多いものです。

定量調査では発見できない(つまり、定性調査でしか発見することができないくらい)小さく少ない声であるからこそ、まだ競合も気づいていない、生活者自身も気づいていないウォンツであり、新商品アイデアになる可能性が秘められているのです。ドゥ・ハウスでは、このように小さな変化・ウォンツを発見することを「1/1000の変化の芽を発見する」と言っています。


理由その2:数は集計できても、理由がわからないから


図1をごらんください。こちらは 「自宅で使用している調理器具は?」というアンケート(n=647)の調査結果の抜粋です。あらかじめ「フライパン」「卵焼き器」「土鍋」…と、選択肢を設けておき、洗濯してもらった回答結果をカウントするのが定量集計です。


(株)ドゥ・ハウス 2018年12月「調理器具・調理家電」に関する調査
【図1】自宅で使用している調理器具(複数回答・n=647)


この調査結果からは、「フライパン」を持っている人が83%、「圧力鍋」を持っている人が27.8%という事実がわかります。しかしこのデータからでは、マーケティングの実務、特に商品開発の現場において、今後のマーケティングに役立つような仮説を立てたり、次の一手を打ったりすることは出来ません。


次の一手を打つためには「選択した理由・背景」が必要だからです。理由は個々にヒアリングしない限り知ることは出来ません。個々の回答を一件一件ヒアリングし、読むしかないのです。集計はできません。(テキストマイニングという手法もありますが、仮設構築のためには使用するには限界があります)


この調査では、定量調査の後の定性調査で「圧力鍋を持つきっかけ」について聞いています。例えば、「圧力鍋は週に2回位使っていて、時短に調理できるし、素材が柔らかく美味しく仕上がるからです。使い始めた理由は、ホットヨガに通うため、どうしても午前中から午後2時頃まで家を空けることが多いので、帰宅して時短で料理をしたいからです。」という声が拾えています。この声を読めば、仮説やアイデアが浮かんできます。「趣味に時間を費やしている女性に圧力鍋は売れるのではないか?」などです。ここから更に新商品アイデア・販促アイデアも浮かんできます。「ジムやヨガ、趣味の教室などで、販促活動したらいいのではないか?」「ヨガと相性のいいオーガニック料理を圧力鍋で作るレシピで販促したらいいのではないか」など、いろいろとアイデアが浮かんできます。


このように、仮説を作り・アイデアを発想するために必要なのが定性調査なのです。

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