2.定性調査で機会発見・定量調査で意思決定

2024.04.01

コラム・データ

前の記事では、定性情報とは何かを簡単に記載しました。ここでは、定性情報と定量情報の使い分けについて述べていきます。


定性情報は意思決定のためのものではない

「定性情報は意思決定のためのものではない」というのが、大切なポイントです。

調査結果にかぎらず、マーケティングに使う情報は、ウォッチング情報とディシジョン情報に分けられ、それらの役割について正しく理解し、使い分けることが大切です。


◎定性情報(ウォッチング)→観察や機会発見のために使用する。

◎定量情報(ディシジョン)→意思決定や判断のために使用する。



デシジョンとウォッチング


ところが、この一番基本的な「定性情報の利用の仕方」を分かってはいても、現場において正しく使い分けることは難しくなってしまいがちです。下記のような声をよくききます。


「こんなにたくさんのデータは読めないよ。A4、1枚の要約が欲しいのだけれど」


仮説・アイデアがは、定性情報の「データとデータの間に流れる文脈」を読み取り、それを蓄積することで構築されていくものです。

調査結果を上司・会社に説明するための資料として要約が必要になることは多々あります。しかし、マーケティング実務(商品開発やプロモーション)をする上では、調査現場に参加し、生活者と実際に対話したり、観察したりすることが必要です。そうすることによって、ターゲットとなる生活者について生々しく理解することができ、この体験・データの積み重ねが、新商品アイデアのベースになっていくのです。


何%ぐらいが「そう言っているの?」「たった10人ぐらいの声でこんなことが言えるの?」


もともと判断に使ってはいけないのが定性情報です。ボリュームを確認するためには、定量調査を実施する必要があります。しかし、定量で検証できるほど多数の人が言っていることは、既に競合企業も目を付けていて、もう商品化されていることが多いものです。
小さく少ない声であるからこそ、まだ競合も気づいていない新商品アイデアになる可能性が秘められているのです。「1/1000の変化の芽を発見するのが定性情報の本来の活用方法」なのです。


定性で仮説、定量で検証して意見決定が基本ですが…

定性調査の代表的なものは、グループインタビュー・デプスインタビュー・日記調査などがあります。定量調査の代表的なものには、WEB調査・会場調査(CLT)・ホームユーステスト(HUT)などがあります。


これらの調査手法を活用し「定性的に観察して、仮説を得て、のち、定量的に検証して意思決定をする」自然科学系での研究の基本です。しかし、その基本がなかなか通用しないのがマーケティングです。
特に、開発マーケティングの世界では難しいです。定性的に仮説はたくさん浮かびます。でも、それを定量的に検証し、その結果を元に意思決定するのは実際の現場では簡単ではありません。


前記事でも述べたように、定性情報が必要な理由は、「定量ではこれから来る変化を早期発見できないから、実態を把握し、細やかな変化や機会をつかまえるために定性情報が必要になってきた」です。

しかし、これから来る変化やチャンスをめぐって企画した新商品について、そのまま検証したら「3%の人が良いと言った…」となります。その数字で意思決定したり、関係者を説得したりするのは容易ではありません。革新的な商品の意思決定には、確信と勇気が必要なのです。それがないと革新的な新商品はできません。
検証できた時点では、競合他者が同様の仮説をベースにした類似品を開発しているもしくは、発売しているということが多いものです。(同じような商品が複数の企業から同時に発売されることが多いのは、このためなのでしょうか?)

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