7.顧客の「意見」は聞かない。事実を聞く。

2024.04.01

コラム・データ

「仮説」を作るのはマーケター

こちらの記事で、仮説やアイデアを発想する上で、生活者の「意見」ではなく「事実」が重要だということを述べました。なぜならば、生活者の意見で商品はつくれないからです。

【アイデア発想のために「事実」が必要な理由】でも記載したように、マーケターは生活者の「意見」ではなく「事実」を元にマーケティング仮説を立てていきます。生活者は生活のプロではありますが、商品開発やマーケティングのプロではありません。一方、マーケターはマーケティングのプロです。生活のプロである生活者が、生活の事実を提供し、マーケティングのプロである「マーケター」が「仮説」を発想し、商品の開発につなげるというのが本来あるべき役割分担です。

そして、マーケターが立てる「仮説」は、生活者の「事実」に基づいています。例えば「おいしくないから止めるべき」という生活者の意見より、同じ内容でも「味が濃くてそのままでは食べられなかった」と事実内容が具体的な方が、マーケターが仮説をたてる根拠になります。


生活者の「意見」では商品は作れない

「意見」を公式で表すと、下記のようになります。

事実 + 仮説 = 意見


生活者の発する言葉(定性情報)の種類の整理


アンケート等で「ご意見をお聞かせください」という言葉を見かけることが多々ありますが、これは調査的には良い聞き方とは言えません。こう聞かれると、「事実」は希薄になりがちで、「生活者の意見」「生活者の仮説」が多くなりがちです。しかし、生活者の意見や仮説は、マーケターが仮説やアイデアを発想する時には余計なものになります。


意見を読むときは、そこにある生活者の「仮説」をそぎ落とした「事実」だけを拾い集める必要があります。
事実とは実際に起こった出来事です。事実には客観性があります。事実はデータベース化することができます。そこから仮説を生み出すことこそが、私達プロのリサーチャーやマーケターの腕の見せどころになります。
例えば「この商品はおいしくないから、きっと売れないし止めるべき」という意見には、次のように事実と仮説に分解できます。


この商品はおいしくないから

(事実)

きっと売れないし止めるべき

(生活者の仮説・意見)


マーケティングする上では、「きっと売れない」「止めるべき」という生活者の仮説・意見は捨ててしまっていいものです。「この商品はおいしくない」という事実こそ、マーケティングに活かせる部分になります。(実際のマーケティング現場では、もっと具体的な事実が必要です。)マーケターはこの事実から出発して、仮説を立てるというステップに入ることができるようになります。

マーケティングをする上で大切にすべきなのは「意見」ではなく生活者の「事実」です。


事実に関して、KJ法を発明した川喜田二郎氏は、その著書の中で以下のように述べています。


※「叙述と解釈をハッキリ区別せよ」

文章化するときの根本的な注意は、「叙述と解釈を区別すること」である。そしてそれを、自他ともにわかるように表現することである。すなわち文章の中で、どこまでがデータをとりまとめて述べたことであり、どこまでがそのデータに触発されて自分が考えた、独創ないしは解釈であるかを、はっきり区別することである。この区別を、誰にもわかるように表現する。たとえそれを書きおえた瞬間に自分が死んでも、そこまで書き進めてきた文章の内容が、叙述と解釈の区別の上で、他人にも誤解なく伝わるはずであるという態度で書くべきなのである。このように区別してこそ、一〇年後、二〇年後の自分(それは、いわば半ば他人にひとしい)にとっても、誤りなく使える資料となるのである。

(『発想法』川喜田二郎1967年)


この「叙述」といういのはまさに事実のことといえます。

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