ザ・マーケター

このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

2005.01.11

マーケタープロフィール

Interview

Masahiko Yamanaka山中 正彦さん

株式会社KSP-SP
代表取締役社長

慶應義塾大学工学部管理工学科修士課程終了(1972年)
上智大学外国語学部比較文化学科修士課程終了・国際ビジネス専攻(1983年)
マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン/スクール留学(1983-1984年)
味の素株式会社中央研究所管理部システム室入社(1972年)
味の素株式会社食品開発部専任部長(1993-1999年)
株式会社味の素コミュニケーションズ(1999年)
2003年3月、株式会社KSP-SP代表取締役社長就任

vol.02[01]

マーケティングとは何か?

AMA(※注1 参照)がマーケティングの定義を更新しましたが、マーケティングを実践科学として進化させるべく、山中さんにはまず、「マーケティングとは何か」から切り出していただきました。

Pick UP!

Basic Marketing Relations

BMRを解体する

喜山:BMR、Basic Marketing Relations は、新製品開発のための強力なモデルです。モデルというのは頼もしいもので、未知の場所で与えられる地図のように、それを使えば道に迷わずに歩いていくことができます。BMRは、マーケティングにおける頼りになる地図なのです。

でも、わたしたちは、まだBMRを使いこなしているとは言えません。参考にできるテキストも限られているのが現状です。そこで、今回は、BMRの解体を目指して、創始者の山中さんに直接、お話を伺うことにしました。

WとBをつなぐ

山中氏喜山:商品開発のためのモデルとして、BMR(Basic Marketing Relations)を分りやすく教えていただければというのが今回のインタビューの主旨です。

山中:まず、入門編ということで言えばね、マーケティングの概念から入る必要がありますね。マーケティングの定義はほんとうに色んなことが言われているわけです。コトラーさんをはじめね(※注2 参照)。

喜山:マーケティングとは全てである、と聞こえてくることもあるくらいですね。

山中:そう。一番、基本的に考えれば、「交換」という概念が欠かせません。商品やサービスの交換です。このとき交換には、二者が登場しているわけです。煎じ詰めれば、この、交換を行なう両者の満足をどうやるか、ということがマーケティングになるわけです。

もう少し言うとね、交換されるのは、製品の提供するベネフィット(B:Benefit)と消費者のウォンツ(W:Wants)ですね。そこで、製品のベネフィット(B)と消費者のウォンツ(W)を結びつけるのが、マーケティングだと言うことができるわけです。

あと、その両者を取り巻く環境(E:Environment)ね。大きく言えば、このWとBとEの3つの要素を押さえればいいわけです。

マーケティングとは、環境(E)を考慮しつつ消費者のウォンツ(W)と 製品・サービスのベネフィット(B)を結びつける創造的かつ総合的活動 をいう。

(『新製品開発』朝倉書店 朝野熙彦、山中正彦 2000年)

喜山:マーケティングをベネフィット(B)とウォンツ(W)を結びつけること、と考えると、ずいぶん分りやすくなる気がします。もともとどこから発想されたのですか?

山中:もともとは、いろいろなアイデアをコンセプトに結びつけるにはどうしたらいいかというところから考えたのです。考えたというか、当時、味の素で色々兼務していましてね。自分だけでやるわけにいかなくなって、そういうことをせざるをえなくなっていったわけです。

その元になっているのはね、データ分析というすごい考え方があってね。これは、「全ての事象は、実体と関係で記述できる」というのね。実体は、Entity、関係は、Relationship だから、E-Rモデルというんですけどね。

そのE-Rモデルを、マーケティングに応用したのが、BMRなんです。

喜山:たとえば、製品を、BMRでは、製品分野(P:Product)、製品属性(A:Attribute)、ベネフィット(B:Benefit)の3つの要素に分けて考えていますよね。

製品自体はひとつなんだけど、そこに、製品のカテゴリーと、属性、ベネフィットの3つの要素を抽出して実体と見なして、それぞれの関係があるものとして捉えるということになりますか?

山中:そうです。そうすると、どこに着目してアイデアを出しているかが、はっきりしますでしょう?ですから、この製品なら、P、A、Bのどこに着目するかということを着目分類と考えるのです。

アイデアを発想するのに、どこから考えたらいいかでまず、悩むわけですが、BMRでは、それはどこからでもいいんですよ、としたわけです。消費者は、誰が(T:Target)、いつ、どこで(O:Occasion)、何を(W:Wants)求めているか、というように、ターゲット(T)、オケージョン(O)、ウォンツ(W)の3つの要素を着目分類としたわけですが、この、T、O、Wと製品のB、A、Pのどこから発想してもいいですよ、と。

乳酸菌が流行っているという属性(A)から発想してもいいし、定年以降の団塊の世代(T)から発想してもいいというわけです。

あとは、定年以降の団塊の世代は、男性なのか女性なのか、エリアは限定するのか、という具体性のレベルが問われるのですが、それを着目水準と捉えます。

そうすると、この着目分類と着目水準の視点を持てば、アイデアが組み立てやすくなります。

ニーズではなくウォンツに着目する

右:山中氏 左:喜山喜山:なるほど。発想を自由にしたわけですね。ところで山中さん。BMRでは、ウォンツ(W:Wants)とは言いますが、似て非なるニーズ(N:Needs)という概念が出てきませんね?

山中:あのね。なぜ、ウォンツでニーズではないかを言うためには、まず、ウォンツとニーズの違いを押さえる必要があるわけです。これはコトラーさんがそう言って(※注3 参照)、マーケティングの世界ではそれで言葉が流通しているから、そう理解する必要があるわけなんだけれど、たとえば、

「喉が渇いたから潤したい」というのは、ニーズです。

ところが、ここにお酒で潤したいのか清涼飲料水で潤したいのかという要素が加わって、

「喉が渇いたからビールを飲みたい」となると、これはウォンツです。

つまり、ニーズがモノを想起するまで具体化したものがウォンツになるわけです。

また、ウォンツになると、前の表現は、ビールを飲むのは、夕食時かもしれないし、ランチビールかもしれないというように、オケージョン(場面・時間)の要素が加わってくるわけです。同じウォンツでもオケージョンは変ってくるわけです。それから、お酒の強い人と弱い人では、ビールにするか焼酎にするかも違ってくるかもしれません。つまり、同じオケージョンでもウォンツは変ってくるわけです。

つまり、ターゲットやオケージョンをより具体的に考えていくためにウォンツにしているのですね。これが、まだ衣食住の基本である水や病院の供給、いまの戦地のような場所だったら、ニーズを中心に考えていけばいいわけですが、われわれの社会は、商品があふれた基本的な生活があってその上で、よりよくしていくにはと考えているわけですから、ニーズを考えていたのでは、とても商品開発なんか、できないわけですよ。

ニーズを相手にしていては、マーケターの存在価値が問われるわけです。

喜山:とてもよく分りました。ニーズを具体化したものがウォンツであり、ウォンツを満たすものを考えるのがマーケターなのですね。

山中:そうです。そういう意味では、ニーズ(N)は、ターゲット(T)やオケージョン(O)に依存しないウォンツ(W)と言ってもいいわけです。

それから、マーケターはウォンツを満たすということを言いましたが、新しいオケージョン(O)を作り出すということもありえるわけです。たとえば、ウォークマンなんかは、歩きながら音楽を聞くという新しいオケージョンを作ったと言ってもいいわけですよね。

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