ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。
「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。
今回は7/21に行われた「月刊:よげんの書7月号」で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。
買替よりも修理が当たり前の社会がやってくる
2023年7月1日にアメリカニューヨーク州で全米初の「修理する権利」発効
米国でスマートフォンなどの電子機器を修理しやすくする法整備が進んでいる。ニューヨークと他州で修理法案可決されており、電子機器修理ができることが義務付けられ、修理できない機器を作った企業には罰則も導入予定だ。これまではメーカーの修理囲い込みがあり、メーカーしか修理ができない構造になっていた。そのため、メーカーで高額な修理費がかかるのであれば、新しいものを買ってしまい、買い替えする人が多かった。いままで機器が修理できないとして批判されることも多かったAppleもアメリカで4月から修理キットの貸し出しや配布をするようになった。業者はもちろんのこと、生活者も修理できる商品づくり、環境づくりに乗り出している。
アパレルの「お直し」が続々と登場
電子機器よりも先んじて修理サービスなどを提供しているのはアパレルの分野だ。パタゴニアやユニクロなど、日常的に着るようなカジュアル衣料のアパレル各社が衣料品修繕サービスに乗り出し、環境負荷削減とSDGsへの貢献を目指している。
- ザ・ノース・フェイスは恵比寿に修繕窓口を設置。ほつれなどの簡単な修繕であれば、30分ほどで直すことができ、即日対応する。
- アウトドアブランドのアークテリクスは直営店に修繕窓口を増やす取り組みをしている。
- ヨーロッパでは修繕要件を提言し、廃棄規制を導入するなど、衣料品の環境対策が進んでいる。
消費者の修繕意識も高まっており、衣料品の修繕を通じた廃棄削減の動きが広がっている。消費者庁の「21年消費者意識基本調査」では、「傷んでもすぐに捨てずに、お直しやリペアを施して使う」と回答した人が49.4%いた。また、8割以上の人が「衣服を買いすぎないようにしている」と意識が変わっている。買い替えるではなく、修理するのが当たり前の社会にだいぶ近づいていると感じる。
いつの間にか(マーケティングの力かもしれないが)修理するより新しいものを買った方が安いという考え方が広まった。それ以前は修理をして、物を大切に使うという意識があった。生産能力の問題もあったかもしれないが、今のような大量生産はしていなかった。
コスパで考えるとどっちがいいのかを考えると。メーカーからすると、修理するためのコストを揃えるより、買い替えてもらった方がいい。一方で、消費者側からすると、修理するのに五千円、新しいものは一万円で手に入るといわれたときに、どちらが安いと感じるのかによる。陳腐化するのが早い時代なので、新しいものを買った方が長く使えるかと思うかもしれない。だが、スマホでも性能はそろそろ頭打ちになるので、買い替えのスパンが3年、4年と長くなっているので、今後は修理して使うという方向に行くのかと思う。
親が子供のおもちゃを修理して、感謝される、感動される。そんな体験を作る方向に行った方がものに対する愛着も沸き、面白いだろう。今回は電子機器とアパレルだけだったが、今回の意識の変化は他のカテゴリーの企業でも頭に入れて商品づくり、ブランドづくりする必要があるだろう。
「月刊よげんの書2023年7月号」の動画アーカイブはこちらから。ぜひお申し込みください。