ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。
「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。
今回は7/21に行われた「月刊:よげんの書7月号」で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。
社会課題解決のためにライバルに広告をシェアする企業が現れる
スウェーデン:オートリー(乳製品メーカー)自社の広告枠を競合に無償提供
さまざまな企業が競合に負けぬように広告を出稿するなか、スウェーデンにあるオートリーという乳製品メーカーが自社の広告枠「競合企業に」「無料で」提供する取り組みを始めた。オーツミルクを中心に扱うオートリーは、自社が支払った広告スペースのうち半分を、同じように乳製品の開発に取り組むライバル企業に無償で提供することを決め、コラボする企業を募っている。
気候変動問題に取り組む競合ブランドと広告枠をシェア
オートリーが募集する広告に出稿する資格があるのは、気候変動問題に取り組んでいるブランドのみだ。同社のウェブサイトから応募ができるようになっており、出稿を考えている乳製品ブランドは、オートリーが気候に関わる認証を取得するために答えたものと同じ質問に答える必要がある。つまり、認証が得られれば、無償でオートリーの横に広告が出せるようになるのだ。ライバルともいえる同業者の出稿を募集するこの広告は、2023年5月8日にニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ、ワシントンポストに掲載。また、翌9日にはタイムズスクエア、ロサンゼルスのハリウッドにある大きな看板でも公開された。気候変動などは一社だけが取り組んだとしても、効果が得られずらい。業界全体で進めなければいけないことなのだ。また、このような取り組みをする企業は生活者にとってもいいブランドだという認知が広がるだろう。
握手しながら殴り合う、という言葉がある。国同士の外交で使われることが多い言葉だが、企業間での競合では行われることが少なかった。だが、労働力不足などの問題が起こる中、競合メーカーが協力し合いながら物流のネットワークを構築して配達するようになった。協力し合いながらも、殴り合う状態だ。大きな課題を解決するためには、協調が必要だ。気候変動問題なども、一社だけだと解決はできず、協調する必要がある。また、一つの国だけでも無理なのだ。
広告枠で協調できる相手を探し、ふるいにかけて、気候変動問題に取り組む業界の仲間を募っているのだ。いずれ、次の仲間を生むことを考えれば、そのための投資として広告枠は安いものなのかもしれない。
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