【開催報告】月刊:よげんの書2022年3月号(前編)――境界を取り払おう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は3/18に行われた「月刊:よげんの書3月号」の前半で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

目次

戦争が起こるとユニクロの値段が高くなる

ユニクロの商品値上げに至る道程

道程を整理すると、以下のような流れになる。

資源大国であるロシアによる侵略と、ロシアに対する経済制裁によって、グローバル資本主義経済が作ってきたサプライチェーンが分断された。戦争によって世界的なインフレが始まるなど、経済に大きな影響を及ぼしている。

エネルギーの高騰

原油先物相場も3月になって大きく上昇している。国内のレギュラーガソリンも、原油の問題でさらに値上げした。原油は物流で必要なガソリンの他、様々な原材料にも使用されているため、様々な商品の値上げに関わっている。ユニクロの柳井正会長兼社長は「企業を守る意味でも値上げせざるを得ない。海上運賃も従来の5~10倍の水準だ。有史以来初めてだ。」と発言。

安全保障が大きなテーマになっており、色々な物の軸になっている。経済安全保障と軍事安全保障がある。ロシアが軍事行動にでた際、経済安全保障で抑制がきくと思われていたが、必ずしもそうではなかった。経済力対軍事力という構図ができた。

日本人は安全保障の部分であまり意識が高くない人が多い。だが、海を隔てて軍事大国が近くにあることは意識したほうがいいかもしれない。

グリーン電力とは?の議論が紛糾する

EU、タクソノミー法案公表

2022年2月2日にEUでタクソノミー法案が公表された。気候変動の抑止を目指し、2050年に域内の脱炭素の達成につなげるために、どんな事業や製品が持続可能サステナブルかを示す内容を法案で定めたものである。タクソノミー法案は各加盟国の原子力と天然ガスの扱いに関する対立により、意思決定が先送りされていた。原子力を支持する国/原子力に慎重な国、天然ガスを支持する国/天然ガスに慎重な国など、それぞれの国でスタンスが異なったことが要因。それが原子力も天然ガスも一定の条件のもとで脱炭素に貢献すると位置づけたものになった。

オーストリアは、タクソノミー法への提訴を検討

しかし、「反原発法」を施行するオーストリアは原発をグリーンエネルギーとするタクソノミー法に強く反発し、ゲウェッスラー環境相は欧州委員会への提訴を準備すると表明。ルクセンブルグのディシュブール環境相もオーストリアに同意の意志を表明した。タクソノミー法案が公表されたものの、まだまだ議論が行われており、分断はまだ解消されていない。

ドイツはロシア依存から脱却するため、エネルギー政策を転換

ドイツはロシアから天然ガスをたくさん輸入している国である。その依存から脱却する決定をした。その代わり、ドイツ政府は3月5日、国内初となる液化天然ガスLNG輸入ターミナルを建設すると発表し、ガス調達の多様化に動き出した。他にも、年末に廃止予定だった原発の稼働延長論が浮上しており、原発に対して強固な反対の姿勢をとっていたドイツ内でも議論が始まっているようだ。再生可能エネルギーの拡大も焦点となりそうだ。

ロシアのウクライナ侵攻の影響で、各国のエネルギー政策が見直される可能性がある。ロシア以外からエネルギーを調達するとして、オイルの増産が必要となれば、それはそれで環境破壊が起こる。脱炭素へのスタンスも遠のくのか、他の国の資源をあてにするのではなく自国内での再生可能エネルギーの調達にシフトするのかなど、各国で議論が活発になるだろう。

大災害に身構える企業が増える

オーストラリア南東部、史上最悪の豪雨で町が水没

ロシアのウクライナ侵攻で注目が薄くなってしまったが、オーストラリア南東部では、2月20日過ぎ頃から雨が断続的に降り続き、各地で洪水が発生した。3月4日時点で少なくとも17人が死亡するなど「1,000年に一度」と言われる観測史上最悪の豪雨に見舞われている。だが、南東部は同じ地域で昨年の3月にも「100年に一度」の大洪水と言われたほど記録的な豪雨に見舞われていた。今回はそれをはるかに上回る大規模洪水となっている。1年おきに災害が起きていることになる。

企業損失を投資家が負担、Google等が大災害債を発行

気候変動に伴う自然災害が増えるなか、一般企業が被害を受けた際の損失を投資家に負担してもらう動きが出てきた。米グーグルの親会社アルファベットなどが「大災害債」と呼ばれる債券を3億ドル発行した。対象の災害はGoogleのデータセンターがたくさんあるカルフォルニア州。ローカルな場所での災害が起きれば、一社では支えきれない被害になる可能性があり、そのために備えをしているということだ。これまでは保険会社や国が発行してきたが、それだけでは賄えることができないと、一般企業による発行が目立ってきた。企業の継続性のためにも、こんなところまで目を配らなくはならなくなった。

日本もBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)に関しては震災の時をきっかけに色々な会社で対応が始まった。日本は地震も洪水も起こる国である。毎年自然災害に関連したリスクがあるので、大きなグローバル企業と同じように災害対策について考える必要がある。

オススメ情報が曲がり角に差しかかる

ネットの「おすすめ」退屈、履歴分析に限界説

ネットショッピングをしていると「これを買っている人は、こちらにも興味を持っていますよ」とリコメンドされる機能がある。足跡からおすすめを選ぶシステムの根幹は「協調フィルタリング」というアルゴリズムで、新興のネット書店だった米アマゾンがいち早く導入したものだ。品物ベースで考えられており、コートとブーツはマフラーと同時購入されやすいはず、というアルゴリズムの元、コートとブーツを見た人にはマフラーがリコメンドされる仕組み。だが、購買行動を予測するマーケティングの進化にいま、限界説がささやかれる。商品をおすすめされても、「似たものばかり提案される」「型にはめないで」など、嫌悪感さえ抱かれることもあるらしい。
消費者庁の2020の調査では半数弱は「おすすめを参考にしている」と言われているが、「参考にしていない」という人も20%超えてきた。だが、なによりも顧客を退屈な気分にしてしまっては、売れるものも売れないだろう。

協調フィルタリングに替わる商品との出会いを作る取り組み

●コメ兵:ユーズドブランドショップ
選択肢を絞っていく動きではなく、あえて検索条件を緩めるような動線にし、足跡を追いかけて先回りするのではなく、より広い範囲を歩き回ってもらえるアルゴリズムを構築し、協調フィルタリングの代わりに活用している。
例:オイルを含んだコットン100%のジャケットで、長く着ていくと味が出てくる商品を好んで買っている人がいる。経年変化を楽しみたい、という人にとっては、洋服がコットン100%で作られていることにこだわっており、ポリエステルやナイロンの洋服は探していないのだ。コメ兵のサイトでは、この商品の関連キーワードに「コットン100% アウター」のタグを付けており、消費者が他のブランドが出しているコットン100%の洋服を見に行けるようになっている。

●BASE:ECサイトアプリ
協調フィルタリングを2021年秋に取りやめ、購入後のレビューや、お気に入り登録などの行動から、お客様の気持ちを汲み取るアルゴリズムを採用した。購入前の足跡でオススメするのではなく、購入後の行動に着目し、どんなレビューを書いたのかや、登録したお気に入りから気持ちを探ろう、というアルゴリズムに変えてリコメンドを始めた。

ECサイトの人は「協調フィルタリング」やめるにやめられないだろう。クロスセルがなくなると辛くなってきてしまうから。だが、ユーザー側では「もういい」という声があるのであれば、UXのあり方から再度考える必要がある。「協調フィルタリング」を使うにしろ、使わないにしろ、何かしらリコメンドされることは変わらなければ、それはUX的にどうなのだろうか。いかにも売りたい、ではなく、ユーザーに寄りそい、快適な買い物体験をどう作るかを大事にしなければいけない。セレンディピティ、偶然の出会いをどう作るか、ということ。

家族でシェアするジェンダーレスな商品が増える

オンライン環境を経て、男性の化粧品市場が伸びている

コロナ禍による巣ごもり生活が2年以上続いており、化粧する機会が減りっている。2021年の化粧品全体の市場規模は9466億円で、新型コロナの感染拡大前の19年と比べると10%減少した。一方で男性化粧品は2020年と比べて9%増の406億円となり、コロナ禍でも4年連続増加。過去最高を更新した。オンライン会議の普及でカメラを通して映る自分の肌質を気にする男性が増えているのが背景だ。今まで1時間も鏡を見ることがなかった人でも、オンライン会議のために1時間自分の顔を見続けると気が付くことが多い。その為、ケア用品や化粧品を購入する男性が増加している。

カネボウはブランドのジェンダーレス化に取り組む

カネボウが2021年に発売した眉マスカラは、ジェンダーレスな商品であることを前提にし、眉以外にも男性のひげにも使えるようにした。ひげの流れを整えて艶を出し、マスク着用時の蒸れや摩擦に強くした。広告でも男性と女性、両方が登場している。他にもファンデーションは皮脂の多い男性でも使いやすい成分に変更し、21年12月の売り上げは販売計画に対して1.3倍となった。男性の使用用途を広げて、ジェンダーレスのヒット商品も生まれて始めている。

息子とコートを共有する主婦のつぶやき

ドゥ・ハウスが発行している事実新聞内、エシカル商品について考えるという特集号で、大学生息子と当たり前の様にコートを共有しているフィールドマーケターDOさんがいた。共有している、という発言に対し、他のDOさんも「余分に持たなくていいし、無駄がなくなる。」と評価していた。母親と娘のシエアは今まであったが、息子とシエアもあるかもしれない。シエアができる、ジェンダーレスである商品は、エコでエシカルな商品としても評価されるのだ。性別を取り払い、夫婦・親子で一緒に使える商品の提案は新しい市場を生む可能性がある。

ジェンダーレスのファッションは増えている。無印もユニクロも男女兼用の洋服が増えている。

スキンケアでジェンダーレスはあり得るな、と思っていた。メイクでも出てくる時代になった。

2022年3月号の提言――境界を取り払おう

国境をめぐっての争いが起きました。一方で性差を取り払うことで満足を満たす商品が出てきています。ボーダーやジェンダーを取り払うことがより良い社会や生活につなげるためのカギとなる。

次回の「よげんの書」は4月22日(金)の開催です。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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