【開催報告】月刊:よげんの書2022年2月号(後編)――全体像を見よう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は2/18に行われた「月刊:よげんの書2月号」の後半で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

目次

草の根監視社会が息苦しさを助長する

差別の解消 vs 言論の自由

アメリカの大学が「差別的な発言をすると叩かれるが、言論の自由の観点から行くと抑制されているのではないか」という問題提起で揺れている。

発言の内容などにより、制裁される学者は2020年から大幅な増加があった。いわゆるキャンセルカルチャー。それに伴い、自分の信念を口にできないと考える保守層が多くなっている。リベラルの人は自分の考えを発信するが、強硬な保守層ほど自分の考えを言わないので、どれだけそのような考えをしている人がいるのかが分かりにくくなっている。言わないから見えてこないのだ。彼らはサイレントコンサバティブとも言われ、投票の際に力を持つ。トランプ元大統領を支持したのもこの層ではないかと言われている。なるべくオープンに話ができる方がいいが、せめぎあいは難しいだろう。エルテス ネット炎上レポートによると、2021年の上期と下期を比較すると、自治体・団体、メーカー、個人・著名人の炎上が増加した。「不適切発言・行為、失言」、「顧客クレーム・批判」による炎上が4割ずつを占め、全体の8割を占める。

炎上してしまうのはなぜか

「不適切発言・行為、失言」の炎上発生が多いのはなぜか。炎上という現象の裏には、発言した人の母体が関係していることが多い。男尊女卑に関する不適切発言、従業員を軽視した不適切発言など様々なケースが見られるが、パーセプション(炎上主体となる企業やブランド、人物がどのように認知されているかを理解すること)に相違する言動をとった際に、批判が殺到するのだ。平等の精神がバックボーンにあるオリンピック関係者が女性蔑視発言をすると、通常の人が女性蔑視した時よりはるかに多くの批判を浴びることとなる。企業や著名人がそれぞれのパーセプションを理解することが出来ておらず、不適切発言であると批判を浴びるケースが多く見られる。パーパス経営が注目されているが、パーパスをいかに社内に浸透させていくかがより重要になってきた。会社ではこう言っているのに、社員が異なる発言をすると、批判される。

パーパス経営は従業員が金銭面の契約だけでなく、気持ちで繋がってもらうために活用されることも多い気がする。パーパス経営が進んで、従業員と会社の気持ちが寄り添っていれば、炎上も少なくなるのではないか。

DXの壁は中間管理職だったことがわかる

40代の4割がDXに関わりたくない

IGSの調査で、40代の4割が「DXに関わりたくないという」という結果が出た。本来、中堅層である40代は上層部と若い人の間を取り持って、DXを引っ張って欲しい存在。だが、その人たちがDXに関わりたくないという人が多いのだ。米ABBYYによると、「自社がデジタル化に準備ができている」と回答した人の割合いは日本の中間管理職がダントツに低い。1/3しかおらず、圧倒的に他国より少ない。DXのために今までと違うことをしなければならない。成果が上がらなかったら、などと危惧する人がいるのではないか。

DX投資に関して、社内にポテンシャルある人を探した方がいいかもしれない、という調査結果があった。企業の情報システム部門よりも、マーケティング担当、企画、営業の方がDXに対する好奇心が旺盛で、意欲、知識を持っている人が多いらしい。役職や職位に関わらず、DXを始めてもらうのもいいかもしれない

トランスフォーメーションなので、どう改革するか、が課題になる。情報システムはいかに自分たちのシステムを守るかということについて主眼を置いてしまっている人が多いのかもしれない。制約に縛られてしまう人もいるだろう。それよりも業務フローを改革していく意識という部分では、コンサルタントや営業が推進には向いているかもしれない。

平等を目指して改革が遅れるパターンが増える

日本の学校教育のデジタル活用は主要国で最低レベル

OECD調べで、日本の学校教育のデジタル活用は主要国で最低レベルだということが判明した。コロナ禍で進んだ部分もあるが、まだ世界レベルには追いついていない。授業でデジタル機器を使うことも少なく、コンピューターを使って宿題をする機会も少ない。コンピューターを使うテーマを与えていないことも多いのではないか。レノボjapan調べで、日本の遠隔授業の実施率はアジアの諸国を下回った。2020年と2021年を比較すると伸びてはいるが、インドネシア、フィリピン、インド、韓国などと比べると見劣りする部分がある。

GIGAスクール構想は責任の所在があいまいだった

デジタル教育が必要である、オンライン教育でないとパンデミックを乗り切れないと、注力された分野だった。だが、形だけで入ってしまった。構想を進めたのは経済相。しかし、機器だけ入れても意味がないことを文科省は理解していた。以前、文科省は過去にスクール・ニューディールに失敗している。電子黒板の普及をしようとして予算を付けたが、教育現場では導入が進まなかった。今回も一部の若い教師がデジタル教育に関心を寄せても、「自分はPC使えない」という教師の声などで足止めがあった。PCを使える人、使えない人が混在して学年や教科で足並みがそろわなければ「保護者から『不公平』というクレームがくるかもしれない」といった組織の論理が優先されてしまった。結果的にパソコン授業をやりたくない先生やデジタル機器を扱うのが苦手な先生に合わせる流れができてしまっている。平等のために、低いところに標準があわさってしまっている。

GIGAスクールの問題は、テレワーク実施に関する問題にも少し似ている。コロナ禍初期でも「家で出来ない人がいるから、不平等である。全員出社しよう」という空気がある会社もあった。

PCの取り扱いや、テレワークも出来る人が大半だろう。本当は、できない人は個別にサポートして、取り残さないやり方にした方がいい。

女性の実力が露わになる

2021年度の医学部入試、女性の合格率が男性を初めて上回る

以前、女性の医学部合格者の人数が少ないことに関して指摘があり、大きな問題になったことがあった。それ以降、文部科学省は男女別の男女別合格率が公表をすることに至った。その文部科学省や保団連の集計によると2021年度男女別の医学部入試の合格率は、男性が13.51%、女性が13.60%となり、男女別合格率が公表されている2013年度以降、初めて男女が逆転した。男性の合格者の方が多かったという大学は、81校中36校だった。

政治分野への女性の参画状況

日本は企業内における女性の管理職、役員比率は低い。政治分野への女性の参画状況も日本は9.9%で、1割にも満たず、かなり低い。超党派の女性議員や市民団体などが活動し、2018年5月に「政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)」が実は成立している。国と地方の議員選挙で男女の候補者数が均等になるよう、女性候補を増やす取り組みを政党と政治団体に求める内容だ。法律で男女均等にせよと決まっているが、罰則はない。そのため、状況は改善していない。

そろそろクオータ制を考えた方がいいのではないか

クオータ制とは、政治では議員、企業では役員などで、女性の割合が一定になるようにする制度のこと。女性の社会進出や、男女ともに働きやすく、多様性のある社会を実現するものと考えられている。世界120以上の国や地域で導入が進んでいて、取り入れていない国が少数派。日本は取り入れていない国の一つ。クオータ制の導入に関して、性別ではなく、実力がある人を採用すべき、という意見が必ず出てくる。だが、医学部の合格者を見てもわかるように、優秀な女性はたくさんいる。クオータ制とは法律で決めることだから、議員が決めることである。現在、日本では男性が既得権益がある状態。日本でも海外と同じように、35%、40%は女性にしましょう、とした場合、3割の男性議員が落選することになる。それを受け止められない議員もいるのではないか。だが、女性も政治に関与した方が、暮らしやすい変化をもたらす世の中になるだろう。

クオータ制はジェンダーイコーリティのために、まずは数を平等にしてから考えよう、というやり方。クオータ制の問題ばかりが取り上げられてしまうが、良い面も見るべき

男性議員が自分の立場に固執する限りは変わらないだろう。

ワークライフバランスからライフファーストへ


在宅勤務をする人が増えて、ワークライフバランスについて考える人が増えた。生活を重視するようになった人が増えたが、それからさらに進んで、生活中心に考えて、仕事を行うという考え方も出てきた。

テレワーク経験者は元の出社中心の勤務形態に戻りたくない人が多い

テレワーク経験者は元の出社中心の勤務形態に戻りたくない、という人が多い。テレワークを経験することにより、意識が変わったのだ。労働時間の短縮が大きかった。通勤時間も労働時間だと思う(企業はそれを労働時間とは考えていない)

内閣府の2020年6月の調査によると、テレワーク経験者は以下のような意識の変化があった。

  • 生活を重視するように変化:64.2%
  • 地方移住への関心が高まった:24.6%
  • 職業選択、副業等の希望変化:46.3%

リモート経営

竹で作ったトイレットペーパーの定期便を運営する「おかえり」という会社は長野、アメリカ、エストニアの3拠点でリモート経営している。最初に住みたい所を決めて、そこで暮らしたいという気持ちを優先した上で、仕事を作ることが始まっているのだ。インターネットによって可能となった経営だ。

エアビーアンドビーの2022年のトレンド予想で、長期滞在

エアビーアンドビーの2022年のトレンド予想では、以下のような項目があった。

  • 旅行先が広がり、長期滞在する人が増える
  • 賃貸契約せずに、デジタルノマドにする人がでる
  • リモートワーカーを引き付けようとする動きが始まる

人材の流動化が起こり、ハイブリッドワークを実践する人も増えそうだ。日本でも勤務場所や時間の柔軟性を求める人が多くなりそう。生活を考えてから、仕事のことを考える人が増えることで、その生活に憧れる人も増えて、欲求が強くなるのではないかと思う。ライフファーストの人が増えるのではないか。それに対応できる企業でないと、人が集まらないかもしれない。

テレワークで意識が変わった人が周りでもいた。パートナーが転勤しても、会社を辞めずについていけるようになった。基本リモートワークで、必要な時に新幹線で出社するなど、柔軟になった。

日本のホテルの長期滞在のプランが人気。子どもの受験期、自宅にテレワークの環境がある人でも、隔離生活を送るために利用する人もいる。テレワークが導入された影響で働き方に関しては柔軟性が生まれた部分もある気がしている。

テレワークに対する反動として、社員とのコミュニケーションがしにくいという理由で出社を再開する企業もある。柔軟な働き方を一回経験したのに、元に戻ってしまう会社もあるだろう。だが、柔軟性がなくなってしまう会社には、人は戻らないかもしれない。

全体像を見よう

私たちは全体像を見ること無く、個別に問題を解決するように訓練されている。個別の問題が絡み合っているとき、真の問題が見えなくなってしまう

子どもはPCなどの電子デバイスではなく、紙と鉛筆で勉強した方が学びが多い!という意見もある。それも一つの意見ではあるが、全体最適を考えると、日本が世界とくらべてデジタル化が遅れてしまうのは良い話ではない。

次回の「よげんの書」は3月18日(金)の開催です。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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