【開催報告】月刊:よげんの書2022年1月号(後編)――課題を再定義しよう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は1/21に行われた「月刊:よげんの書1月号」の後半で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

目次

基金のからくりが明るみに出る


コロナウイルスの流行で政府が支出をすることが多くなった。その際、基金を使うことが多いので、コロナ禍で基金向けの支出は膨張している。基金事業の利用は、必要な時に、必要な人に予算を臨機応変に使えるというメリットがある。だが、2014年~2019年で見ると、効果を検証できる基金の3割が投入額の半分以上を使っていなかったことが判明した。使いきれず、過剰な積立額は2兆6千億円に上ったという。使われていなければ効果がないのではないのではないか。

管理費が国費を食い潰している

「経営改善計画策定支援事業」を例にしてみる。535億円の国費が投入されたのだが、補助金の支払いは105億円、管理費が65億円。返納されたのは256億円だった。管理費が国費を食い潰しているのではないか。2022年度から事業の効果を検証する仕組みが始まっている。9兆円という莫大な予算を基金に投入しているので、政府が行ったことを国民がチェックしなければいけない。基金は中長期の運営がしやすく、近年は成長分野への投資として活用されている。そのために増加傾向にあるが、一部で非効率な運営が問題視されており、透明性の向上が急務となっている。

基金の執行率が良くない事業を調べてみたところ、トップ10の中に、長期失業者の就労支援、ニートの就労支援、電気自動車の充電設備の整備費があった。世界でも社会課題とされている格差、脱炭素に関わる事業でさえも、しっかりお金が使われていないとは驚きだった。お金があるのであればしっかり利用して、より社会課題を解決しなければ勿体ない。

M字カーブ解消が事実誤認だったことがわかる

コロナ禍で失業した後、求職しない非正規の女性は前年度比で65万人減少した

M字カーブとは、女性の就業率のグラフのこと。20代の頃が高く、結婚し、出産すると下がる。子育てが一段落すると、再度就業するので上がる、というグラフの傾向。男女共同参画社会を作るため、女性の働き手を増やすために環境を整え、M字カーブのへこみ部分を解消しようとしてきた。結果、確かにM字カーブの凹みは緩やかになった。しかし、女性の正規雇用率はM字ではなく、L字になっている。労働政策研究・研修機構によると、コロナ禍で失業した後、求職活動も就労もしない女性の割合は男性の3倍近くになったという。働く環境が十分に整えられているとは言い難い。

女性の非正規という低賃金労働者を多数生み出した

女性の就業率のM字と、正規雇用率のL字のカーブのギャップ部分にいるのは、非正規雇用されている女性だ。それだけ非正規で働いている女性が増えているということ。女性の非正規、つまり低賃金労働者を産み出してしまった。

性別により、正規雇用率の差がある。男性は比較的並行な線になっているが、女性はガクンと下がっている。この男女差は、労働時間の長さによるものかもしれない。正規雇用は労働時間が長い。そうすると保育園のお迎えに行けない。残業ができない。だったら非正規でいいです、と女性が諦めてしまっている。優秀な女性が働ける環境になっていない。経済協力開発機構(OECD)の19年調査によると、日本の大卒以上の女性労働力率(25~64歳)は77.7%で、OECD平均81.7%に届いていておらず、データがそろう34カ国中30位と下位に低迷する。リトアニアは90%以上で、高等教育を受けた女性が働けて、活躍できる環境になっている。日本では家庭に優秀な女性が埋もれていては、生産性は上がりづらいだろう。

テレワークが進んでいる国の方が生産率も高いと言われている。テレワークを行うことによって、仕事をしながらでも家事に宛てられる時間を増やすことができる。環境が整えば、より多くの人が参加しやすくなるのかもしれない。

日本政策投資銀行のリサーチで、日本のメーカーから提出された特許からどれほど経済効果があるかを調べたものがある。男性だけのチームと男女混合チームを比べると、後者の方が1.5倍以上特許資産の経済効果があったらしい。男女両方の知恵があった方がイノベーションが起こりやすいのだろう。

ミーティングも男女混合になったほうが視点が増えて活性化する。ブレストも豊富化できる。

孤独が社会保障を疲弊させる


総務省が公表した2020年の国勢調査で、日本全体で世帯の単身化が一段と進む現状を浮き彫りにした。一人暮らしが世帯全体の38.0%を占め、単身高齢者は5年前の前回調査に比べ13.3%増の671万6806人に増えた。これは、千葉県の人口全員とほぼ同じ数字。相当なボリュームになっている。中年世代の未婚率も上昇傾向にあるので、さらに増えるだろう。

孤独が寿命に与える影響度

「世界一孤独な日本のオジサン(著:岡本純子)」では、孤独は肥満の二倍、健康リスクがあるという調査結果も紹介されていた。さらに、社会的孤独はアメリカの医療費を67億ドル(7500億円)引き上げるという算出結果もあったという。孤独はそれほど影響があるものなのだ。また、孤独が常態化すると、人を自己中心的にし、攻撃的にし、反社会的にする、という調査結果もある。孤独になって良いことがない。OECDの調査で、友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごすことのない人の比率、男性の中では日本の男性が16.7%でトップだった。会社を定年退職すると、ひきこもる人もいる。勤めている間、近所づきあいもしていなかった人は孤独になりやすい。健康リスクや、社会保障のリスクになる。

言い過ぎかも知れないが、孤独な老人たちが日本の金融資産の7割近くを握っている。彼らが反社会的になればこの資産を活かせない。孤独の解消は、重要な問題になる。

年末に大阪の放火事件もあったが、プロファイルで犯人はかなり孤独だったということが分かった。唯一の繋がりがあった場所で犯罪を犯してしまったのだ。社会のせいにしたくはないが、孤独だった犯人に友人がいたら何か変わったのかもしれない、と思うと、残念でならない。

メンタルヘルスやウェルビーイングは会社でも取り組みはじめている。もっと社会で孤独対策に取り組んでいいかもしれない。

世界はリスクに満ちている

世界経済フォーラムなどがまとめた「グローバルリスク報告書2022年版長期リスク

気候変動への対応の失敗、異常気候、生物多様性の喪失などが挙げられていた。

ユーラシア・グループの2022年 10大リスク

https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Media/files/EurasiaGroup_TopRisks2022_Japanese.pdf

世界的な「リスク」ではあるが、日本にも関係してくる事柄ばかりだ。

様々なリスクの予想をしても、すべてを変化を見通すことはできない。2022年はじめに起こったトンガの噴火の様な、自然の驚異によって様々な問題に波及することもある。

リスクは突然やってくる。それに対して、起こる前にどう対処するべきなのか、頭の片隅に入れておくといい。

物価上昇に賃金が追いつけるかが課題となる

輸入物価高×エネルギー高×円安

日本に押し寄せる環境の変化で大きいのは、輸入物価高(輸入物価の伸び率が歴史的な水準に)×エネルギー高(ドバイ原油価格は1年前より5割高い)×円安(2021年は円の下落が目立った)。

低賃金下でのインフレ懸念

日本では低賃金だったが、物価が安かった。そのために均衡がとれていたが、それが崩れて、苦しい状態になる。コストプッシュインフレが起こる可能性がある。

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内閣府が調査している、消費者が予想する物価見通しの推移をみると、2021年はずっと右肩上がりだった。12月の段階で88.5%が物価が上昇すると回答していた。また、令和2年の民間平均給与2年連続で前年割れしており、税込みで36万円/月だった。残業が減り、労働時間が減り、それに伴い賃金が減った人がいた。

経団連は業績が良い企業は前向き賃上げを検討しようと呼びかけていた。だが、大幅な賃上げは難しいだろう。2021年の交渉実績では、製造業では僅か1.87%だった。NHKの世論調査で「ことし賃金が上がるか」という質問に対して、上がらないと回答した人が72%もいた。賃金が上がらないが、物価が上がる事態に対応するため、消費の抑制と貯蓄の増加はしていくだろう。コロナ禍で低迷した経済が復活するはずの年なのに、消費は増えていかないかもしれない。

企業は内部留保を吐き出して、その分を賃金に回す覚悟がないとダメかもしれない。

賃金が上がると、分配と成長が起こるはず。分配が起これば、お金を使うようになる。低所得者ほど、増えたお金を消費する傾向にある。

日本では男女の賃金格差も問題になっている。ジェンダーギャップが少ないアイスランドなどは、男女の賃金格差がないように、法律が整備されている。リアルタイムで男女の賃金格差をウォッチングできるサービスもあるらしく、他の国のグローバル企業からの発注があるものなのだそうだ。

日本では、賃金の格差を埋めるために、正規雇用者の賃金を下げる案をだした企業もあった。みんなで豊かになろう、ではなく、みんなで貧乏になろうという考え方だと、足の引っ張り合いになってしまい、よい方向には進まないだろう。

2022年1月の提言:課題を再定義しよう

それぞれの課題に対して思考停止になっていないか考えてみる。時代の変化、意識の変化によって課題解決の要件も変わるかも知れない。課題を再定義し、あなたのビジネスをピボットしよう

次回の「よげんの書」は2月18日(金)の開催です。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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