【開催報告】月刊:よげんの書2021年10月号(前編)――「循環」の視点を持とう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は10/22に行われた「月刊:よげんの書10月号」の前半で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

目次

文化や評価の不平等が人材・頭脳を流出させる

ノーベル物理に愛媛出身、米国籍「真鍋淑郎」氏が受賞

日本人の受賞ということで、メディアでもたくさん取り上げられていた。しかし、真鍋さんは米国籍を取得しており、日本には戻る予定はないとのこと。「他者に気を使って調和を重んじる日本では研究が進めづらかった。米国では他人が感じることをあまり気にする必要がない」と違いを指摘している。真鍋さんは自身にとって米国が合っていたと理由を説明している。未来の研究を進めるにあたり、日本における評価の方法に問題があるのかもしれないし、それが人材流出につながっている可能性がある。

香港人口、1年で8.7万人減。海外移住が加速し、739万人に

内訳は自然減が1万1800人、香港域外との移動が7万5300人の流出超だった(2021.08.21の香港政府発表より)。中国本土からの移住者が1万人以上おり、海外移住などの純流出は8万9200人に上った。香港では国安法施行後に欧米への移住希望が急増しているという。言動が大きく統制されることにより、息苦しさや生きづらさを感じた人が海外への移住を決めたのではないか。バイデン米大統領も米国に住む香港人の滞在延長を一時的に認めると表明しており、今後も移民が増える可能性がある。

不平等や不満などにより、貴重な人材、技術、頭脳が流出してしまうのは企業にとって不幸である。広く平等にケアしないと、住みやすい、成長しやすいところに人材が流出してしまうかもしれない。流出を止めるために、倫理的な制度や環境を整える必要がありそう。

「日本に戻りたくない」と思う理由の一つとして、日本における同調圧力の問題があるかもしれない。地方から都心に出てきた人が、地方に戻りたくないと思うのは「コミュニティの同調圧力がないから」という話もある。今後も同調圧力に対してネガティブな感情を持つ人は増えそう。

多様性、ダイバーシティが叫ばれるようになったので、どんな人でも許されることも必要。企業でも同じことを言えそう。組織の統制が一方向に向かいすぎると、人材が流出してしまう可能性ある。

気候変動によって食品供給・価格が不安定になる

パスタや食用油といった食品の値上げが広がっている

気候変動によって生活に密着した課題が多く出てきている。2021年の7月から10月で食品の値上げが相次いだ。背景には米国の大豆と小麦、カナダの菜種、ブラジルのコーヒー豆、砂糖などの産地を襲う異常気象がある。気候変動による熱波や大規模な霜害で収穫量が減るとの懸念がでている。世界的にはコロナ禍から経済正常化に向かい、消費量が増えていることも需給逼迫の一因だ。

世界で食料不足深刻。飢餓増加、昨年最大8.1億人

気候変動と新型コロナウイルス禍が世界で深刻な食料不足をもたらしている。食糧農業機関(FAO)による食糧価格指数では、食品価格が13か月連続上昇していたと発表された。国連によると、2020年は7億2000万~8億1100万人が飢餓に苦しみ、前年比で約1億6000万人増えた。農作物の不作や輸出制限で食料価格が高騰しており、飢餓人口は一段と増える恐れがある。気候変動の問題が飢餓の問題に繋がっているのだ。

日本では2040年代にコメの成育不良は2倍に増え、年約4億ドルの損失が発生する予想

気温が2040年代に2010年代より2.7度上昇した場合、米の生育不良が発生する量は2倍に増えると予想されている。(日本経済新聞の記事より)日本で米がとれなくなってしまう可能性がある。気候変動は生命と財産を危機にさらし、世界の持続可能性は危うさを増す。日本の食料問題や価格問題がさらに大きくなってしまうかもしれない。

経済安全保障の時にも話したが、日本の食料自給率が37%くらい。国内で作ると高価で、結局海外から買った方が安いという印象がある。海外から輸入する食品の値段が上がってくると、日本の農作物の競争力があがる可能性がある。そうすると農業分野が伸びるかもしれない。

気候操作に賛否が巻き起こる

大胆な気候工学による温暖化対策が検討される

脱炭素に取り組み、気候変動への対応に取り組もうとしているが「気温上昇を止められないかもしれない」と憂う一部の科学者らが大胆な計画を検討中だ。

新しい挑戦の気候工学を実行できるのは費用をかけられる超大国の米国や中国だけだ。管理部分の賛否が沸き上がっており、大国に権限を委ねず、国際的、民主的に管理できるかが問われる。

一部の新興国が人工降雨など「気象制御」に乗り出す

2000年代から気象災害が大幅に増え、農業への打撃は特にアジアやアフリカ、南米の新興国に集中している。対策として「気象制御」によって干ばつの減少や農業生産の拡大につなげる狙いだが、国際ルールは未整備で、地球環境への影響や国家間の水資源争奪を懸念する指摘が多い。

気候操作は地球環境への悪影響や、水資源の争奪戦につながるなどの懸念も大きい

フィクションの創作物の中には、気候操作による争いが描かれることがある。漫画「ワンピース」の中では、国家転覆を狙うテロ組織が、「国が人工降雨を使って水資源を独占している」というフェイクニュースを流し、国家を混乱させようとしているエピソードがあった。現実の世界でも気候操作、気象制御によって資源を独占されてしまうのではないか、という印象を持たれることもある。脱酸素に取り組み、気候変動に対応すべき中、今後どう議論されるのかが気になる。

気候操作などは神の領域であるという畏敬の念があり、その神の行為に人間が踏み込むことは宗教的に「待った」がかかってくるかもしれない。アセスメントどうするかかなど。

火山の噴火による火山灰によって太陽光が遮られ、気温が下がるということが自然現象の中である。20世紀は大きな噴火がなく、それにより気温が下がらなかったという説も。だが、大規模な噴火は農作物の不作につながり、飢饉になりやすい。ネガティブな面がある。

「気象制御」を行ったUAEでは雨量を制御できず、洪水になったこともある。制御において難しい部分がたくさんある。温暖化に対して一つの解決策などはない。色々なものを組み合わせていくことになるだろう。

メーカーと小売がタッグを組んだ循環システムが生まれる


作り手が単独で取り組むのではなく、複数のメーカーと生活者が手を取り合って、循環システムを生む事例の紹介。

Loop×イオン×メーカー 食品・日用品容器の循環システムが進む

Loopでは通販で商品を輸送していた。しかし、イオンと組むことで、お店の中で商品を選んでもらい、次回買い物するときに返却してもらう仕組みを作ることができた。イオンに行くついでに容器を返せるのだ。そうして返却された容器は洗浄され、再充填されてからまた店頭に並べられる。Loop、イオン、メーカーがタッグを組むことによって。普段の買い物行動に密着した循環システムになる。

高島屋、古着回収し衣料再生。三陽商会など15社と連携

高島屋が10月からアパレルメーカーを中心とした15社と連携し、最大100社ほどに広げる試み。BRINGというシステムを使用する。高島屋で回収した衣料をBRINGで繊維にし、リサイクルする。そして「BRINGで再生した素材である」とトレーサビリティを明らかにしたうえでメーカーに戻す。その後、ブランドが新しい服を「BRINGで再生した素材を使った」衣料として、高島屋で販売する仕組みだ。百貨店での販路を確保しつつ、量産効果で収益も確保しやすくし、再生衣料の普及につなげる狙い。小売りとメーカーが大規模に連携するのは珍しい。メーカー1社だけで取り組むと長い道のりになるが、小売や流通が入ることにより、生活者との接点を作ることができ、良い取り組みになりそう。消費者の環境意識が高まるなか、価格面を含め持続可能な循環システムを構築する取り組みだ。広い視点で考え、幅広い関係者と話してみると、枠を跨いだ取り組みも行うことができるかもしれない。

サーキュラーエコノミーはモノと作ったり売ったりする全ての企業が考えられること。だが、一社で全部行おうとすると大変で、効果も出にくい。小売やメーカーとが結びついてプラットフォームを作るという考え方になっていけば、色々なことできる可能性がある。サーキュラーエコノミーにどう対応するか考えることを課題にしていってほしい。何か1つの仕組みでは循環経済にすることはできないので、同時多発的にする必要がある。

エイジテックでモノ・カネ・情報が正しく流れる

65歳以上が最多の3640万人。働く高齢者は4人に1人

総務省統計局から発表があり、高齢者の総人口に対して占める割合は世界201の国・地域のなかで最も高くなった。今後も上昇を続け、2040年には35.3%まで上がる見込み。働く高齢者は数も割合も増えている。15歳以上の就業者数に占める65歳以上の割合は13.6%と過去最高を記録した。

エイジテックによって、シニアの情報格差を縮小

元気に働く高齢者の構成比が増える中、高齢者の市場を元気に循環させる取り組みの一つとして、高齢化社会の課題をクラウドなどデジタル技術で解決するのが「エイジテック」。世界的な高齢化社会に向けて、米国でも介護分野の人材マッチングや高齢者向けフィンテックサービスが伸びている。

ケアビー:コンシェルジュ付きタブレット

コンシェルジュとセットで端末販売するサービス。高齢者がタブレットを介して通販や、家族や友人とコミュニケーションをとれるようになる。使い方が分からない時にコンシェルジュがサポートしてくれる。

家族信託:財産管理クラウドサービス

高齢者の財産をクラウドサービスを使って家族と一緒にシエアして管理し、運用できるよう、支援するサービス。財産を生前から家族と共有して、運用することで、自身の生活を豊かにもできる。これまでは高齢者の生活に寄りそうサービスが多かった。これからは情報格差をなくし、家族と一緒のレベルで色々なものが考えられ、情報が周るようになれば、シニアの持っているものが世の中に回ったり、増えていく環境をつくることができるかもしれない。DXすることで、モノやカネもスムーズに循環できる仕組みが作られるといい。

日本では個人が持っている金融資産の総額は1千9百兆円で、半分以上が現金だと言われている。現金は銀行に預けっぱなしか、タンス預金になっていることが多い。そして、その大半は高齢者が持ってるらしい。お金を使ってもらおうと、シニアマーケットにアプローチしてきたが、上手くいかないケースも多い。長く生きた時のためのリスクヘッジのために、老後なのに、まだ老後の費用を心配しているシニアもいる。眠っている現金を家族信託で投資に回すだけで、違いが出る可能性がある。運用を促進すれば日本の経済に対して貢献できるようになるかも。

アメリカの場合、金融資産の内現金は10数パーセントで、あとは投資して運用していることが多い。運用の有無で一定の年齢に達した時の金融資産を比べると、日本は1.5倍、アメリカは3倍になっており、開きが出てくる。

2021年10月の提言:「循環」の視点を持とう

先進国から新興国へ、売り手から買い手へ、親から子へ、といった一方通行の流れではなく、ヒト・モノ・カネ・ジョウホウが世界や世代を循環する方法を考えよう

次回の「よげんの書」は11月19日(金)の開催となります。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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