【開催報告】月刊:よげんの書2021年7月号(後編)―― 勉強しよう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。

「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。

今回は7/16に行われた「月刊:よげんの書7月号」の後半で発表された内容をご紹介します。よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されており、開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載します。

目次

経済安全保障でリスクとチャンスが入り交じる

日本の製造業の復権もありえるか

経済安全保障とは、国家の安全保障を軍事力ではなく、経済の面から実現する考え方。バイデン米政権は半導体や蓄電池、重要鉱物、医薬品など重要部材のサプライチェーン(供給網)づくりで同盟国や地域と連携すると発表。対立する中国に依存する供給網からの脱却を目指す。サプライチェーンはグローバルになったため、素材の輸出を止められてしまうと、自国で製品が作れなくなってしまうからだ。日本は中国と多く取引しているが、同盟国としてアメリカと協調せざるを得ない。将来、中国と対立した時の政策や戦略を考える必要がある。日本の企業も巻き込まれる話。バイデン米政権が今後サプライチェーンづくりをするとした半導体、蓄電池は日本が強い分野。日本の製造業の復権もあるかもしれない。ファーウェイが排除された時、NECが欧州で5Eの基地局作成を受注し、拡大の方向に動いた。経済安全保障によって、日本にもチャンスが生まれる可能性がある。

真の経済安全保障の議論を

寺島実郎氏の発言から引用。

単純な「中国封じ込め」のための経済安保論へと、話を歪めてはいけない。真っ先に議論しなければならないのは「食と農」だ。戦後日本は、「食と農」を犠牲にして、工業生産力モデルで経済復興を果たしたといえる。その結果、食料自給率はカロリーベースで37%という、欧米諸国に比べても驚くほど低い水準に陥っている。さらにコロナによってマスクも医療用手袋も防護服も海外に依存している現実を目の当たりにした。国民の安全を担保するためには何が必要なのか、あらためて経済安全保障という観点から議論されるべきだ。

安全保障面で考えると、食べ物を輸入できなくなったら日本は飢えてしまう可能性さえある。輸入だけではなく、輸出できなくなる可能性ある。

食と農、フードサプライチェーンが重要だという議論も多くなっている。作る、運ぶ、使う、捨てるというサイクルの中では、生活者もサプライチェーンの中に入る。資源は有限なので、これ以上ものが作れなくなった時、使う時と捨てる時を考えなければいけない。自分たちの生活の中で考える必要がありそう。

日本の企業が人権に目覚める

ユニクロに対しフランスの検察が人権問題で捜査

フランス検察当局は中国新疆ウイグル自治区での人権問題を巡り、人道に対する罪を隠したとしてユニクロ含む衣料品小売り4社に対する捜査を開始したと司法関係者が明らかにした。捜査対象となっているのは「ユニクロ」のフランス法人と「ザラ」ブランドを展開するスペインのインディテックス、フランスのSMPC、米スケッチャーズの各社だと説明し、告発に基づいて反テロを担当する検察部門が動いたと付け加えた。フランスでは4月に、2つの非政府組織(NGO)が新疆ウイグル自治区での強制労働や反人道行為に関わったとされる複数の企業を告発している。アメリカではユニクロの綿製のシャツが輸入禁止の対象となるなど、日本の企業も人権問題に巻き込まれ始めている。

日本企業の人権問題

日経が社長100人アンケートで人権問題によるリスクについてたずねたところ、「高まっている」とした企業が79.8%にのぼった。事業リスクとして捉える必要があるのだ。ただ、人権問題の調査、監視の範囲は社内、直接取引先がほとんど。その先までは調査、監視していないので、リスクになりえる。万が一その先で何かあったらどうするのか。懸念しているのは「企業イメージの低下」「投資家離れ」など。人権問題について、考えなければいけない時代になっている。

各国では人権リスク対応を求める法令が広がっている

国連の人権理事会は2011年に全会一致で「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択。しかし、日本政府が行動計画を策定したのは2020年10月。9年間なにもしなかったということだ。これは世界で24番目と出遅れたことになる。欧州では義務化の流れが強まっている人権デューデリジェンスについては努力目標にすらせず、導入を「期待する」との表現にとどめた。経団連は、人権デューデリジェンスの法制化には慎重で、政府が国別行動計画をつくる際には、「直ちに義務化するべきではない」と表明。日本は人権に対する意識が薄く、人権侵害に対してゆるいことが伺える。しかし、世界的な流れから考えて、今後はより人権問題にも巻き込まれていくことになる。そして、消費者の人権に対する意識も変わってきているので、無視することができない分野になる。

マーケティングの基本は相手の身になって考えること。基本に立ち返れば、人権問題にも対応することができるかもしれない。香港のアグネスチョウさんは逮捕され、出所後、発信をほとんどしなくなってしまった。マザーテレサも全体を見るより、誰か一人の身になってみた方が、行動に移せるという言葉がある。彼女のことを考え、人権について身につまされて考えるようになった。人権問題をリスクとして、どう備えるか考える時代になった。

デュアルライフを目指す人が増える

テレワークが普及し、二拠点生活が現実味を帯びてきた

デュアルライフとは、二拠点生活のこと。テレワークが普及したことで「テレワークシンドローム」が起こり、人々の生活意識が変わっている。内閣府調べによると、生活重視するように変化した人が64%、職業選択/副業等の希望変化した人が46.3%、地方移住に関心がある人は四人に一人だった。働く「場所」からの解放が起こっており、二拠点で生活する現実味がでてきた。以前から二拠点生活にあこがれていた人はいたものの、毎日会社に出勤する必要がある人にとっては現実的な選択肢ではなかった。それが、テレワークで出社しなくてもよくなったので、変化してきている。

近郊都市に人口が流出している

東京の中心からの人の動きを衛星データからみると、大体50キロから100キロ圏内で移動している。リクルートが二拠点居住者にアンケートを取ったところ、20代30代が6割を占めた。昔は二拠点生活というと別荘のイメージがあり、年代が上の人が住んでいた。現在はもっとアクティブにライフスタイルを作りたい人が二拠点生活に踏み切っている。「自分の時間を過ごしたい」「癒し・くつろぎのため」が決め手となった人もいる。日経では「いいとこどりの二拠点住居」とまとめもしていた。地方自治体も二拠点生活に期待しており、誘致をしているところがある。長野県佐久市は月2万5000円を上限に、通勤で使えるよう新幹線の乗車券などを補助する制度を始めた。栃木市は空き家のリフォームにかかった費用の半分を、最大50万円まで負担するとしている。空き家問題は全国で問題となっており、地方の方が深刻。空き家ができた時、地方では次に入る人がいなくなっている。二拠点生活する人が増えると、この問題も少し解決するのではないか。

二拠点生活が人口減少、空き家など様々な問題を解決する可能性があるのであれば、地域の行政の頑張りどころが増えるかもしれない。コロナで低下した出生率だが、行政が頑張っている沖縄県金武町などは高いままである。出産・育児を手厚くサポートをすれば、子供を育てやすいし、育てようと思える人が増える。デュアルライフをする場所として、行政のサポートが手厚い場所を拠点にしよう、などと判断する人が出てくるかも。

ワークライフバランスではワークとライフが分かれているが、テレワークが普及して地方でも働けるとなると変わるかも。ワークライフインテグレーションとなり、統合していく考え方でいい人生を送る人も出そう。仕事も家庭も含めて両立させる考え。

社用族が絶滅危惧種になる

コロナ禍で固定費が減っている

社用族とは、会社の経費で生活費を賄っている人のこと。日本の2020年の税収は過去最高の60.8兆円だった。消費税が伸びたのもあるが、法人税が想定より増えていた。

コロナ禍で交際費は激減

コロナ禍で上場企業の2021年3月期は対面での営業や会議、イベントが減り、出張費や交際費などの関連経費が前期比で約7兆円減った。固定費削減で損益分岐点が低下した。7兆円というと、化粧品のマーケットと同じくらい減っている。逆に言うと、それを相手にしていた人の売り上げが7兆円減った。交際費のピークはバブルの絶頂期である1992年。交際費だけで6兆2000億円だった。2018年度で約4兆円になり、2020年度は使うところがなくなったので、大幅に減るのではないか。数兆円規模の事業が蒸発している可能性がある。

疑似社用族仕様もしぼむ

コロナ禍で出社しなくなると、スーツを着なくなるので、買わなくなる。総務省の家計調査によると、1世帯当たりの背広服の年間支出額も減っている。化粧品も出社しなくなると、使わなくなる。購入する人が減ると、市場がしぼみ、別の市場に入れ替わっていく。スーツからカジュアルウェアに変わるなど。ワークマンでも仕事着の作り方で背広を作ったところ、好調だった。市場が入れ替わってるところにチャンスがあるかもしれない。

経費が使われなくなると、企業の利益が伸びて、税収も増える。法人税の増税も検討されているが、企業が儲かっているのであれば実現も可能だろう。そうすれば、教育、出産、育児などの分野、つまり、未来を担う人材に分配できる。コロナ禍のいい側面になるかもしれない。

法人減税は効果がなかったのではないかと言われている。法人税の減税で内部留保が増え、自社株買いなどが行われた。普通の生活者にメリットがなかった。

フレキシキュリティへの期待が高まる

フレキシキュリティ(福祉国家における労働市場政策モデル)とは

フレキシキュリティとは、デンマーク等、福祉国家の労働市場政策モデルのこと。雇用の柔軟性と安全性のバランス目指す試み。北欧モデルとも言われる。3つのポイントがある。

緩い解雇規制で社員を簡単に解雇できるようになる。そうすると、解雇された人は別の所に勤めるので、労働力の流動性が高くなる。また、失業者個人に対する手厚い社会保障があり、生活を守る権利と、学びなおしの義務(職業訓練など)を課している。人の生産性は学びなおすことによって上がっていく。ダメな企業は淘汰して企業の新陳代謝を促す一方で、淘汰された企業に勤めていた人は守る。労働者には再教育によって生産性を上げてもらい、成長産業に入っていくようにする。よい循環を生むようにしている。日本でも取り入れられる可能性はある。

労働市場政策のタイプを整理

コロナ禍で働き方はどう変化したか

リクルートのワークスインデックスが5千人に変化を聞いている。2020年はワークライフバランスは改善した。しかし、学習・訓練が悪化した。解雇規制が厳しいと終身雇用になりがち。在籍しているだけで給料は右肩上がりになるから、必死に勉強しなくてもいい。会社に行かないと用意された勉強会がなく、自分一人では勉強していない可能性がある。フレキシキュリティで失業している間に生産性を上げてもらった方が、日本全体の生産性も上がるのではないか。

2021年7月の提言:勉強しよう。

人生100年時代は本当にやってくる。皆さんが、70歳まで働く未来を想像すれば、同じスキルで働き続けることは、できないことがわかるはず。勉強しよう。

次回の「月間よげんの書」は8月20日(金)の開催となります。ぜひお申し込みください

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この記事を書いた人

ドゥ・ハウス 広報部 マネジャ
聞く技術研究所 所員。

新橋で働く30代OL。DINKS。夫婦で在宅することが増えたので、いかに家を快適にするかを考え中。

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