聞く技術研究所

【開催報告】月刊:よげんの書2021年4月号(前編)―― ニッチな領域の観察をはじめよう

ドゥ・ハウスでは毎月「よげんの書」セミナーを開催しています。 「よげんの書」では日本国内に限らず、世界の経済、政治、エンタメなど、多角的な視点とデータで「今」何が起きているのかをご紹介しています。時代の流れを捉えることで、企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のテーマを掴むヒントを得る一助になれば、と願っています。 今回は4/16に行われた「月刊:よげんの書4月号」の前半で発表された内容をご紹介いたします。 ※よげんの書は大久保氏と舟久保のテーマ発表&コメントで構成されています。開催報告ではセミナー中に取り交わされたコメントなども記載いたします※

従業員の人権に耳をすます企業がふえる

札幌地裁が同性婚を認めない民法などは違憲との判断を初めて示した

ビジネス界でも近年、性的少数者の人々も働きやすい制度・環境づくりが必須の課題。

ハラスメントを含む「いじめ・嫌がらせ」は前年度比5.8%増に上る

レイシャル・ハラスメント、テクノロジー・ハラスメントなど、ハラスメントの種類も多様化しており、今まで日常だと思っていた会話がハラスメントとして問題に上がる可能性もある。

人権アプリのオープン利用が開始

「働く」に関する悩みについて相談できる窓口「ASSCワーカーズボイス」の人権アプリ「ゲンバワイズ」のオープン利用が2021年3月より開始。(テストは2019年から行われていた)誰でもアプリを通じて相談ができるようになる。 人権に対して配慮しなければいけない、気が付かなければいけないことがたくさんある。声を聞く手段は増えているので、それを利用して従業員の人権も耳をすませて聞きましょう。  
ハラスメントについて訴えたい、伝えたい人が何とかしてほしくても中々できない時代があった。相談できる窓口が増えてきたことによって、泣き寝入りせずに済む世の中になっていくのだろう。良くないことに対して声を上げようという流れができている。
無意識のハラスメントなどで、やっている本人は「そんな気なかった」「そんなことしていない」と言っても、受け手からすると、十分ハラスメントであることもある。ハラスメントであることを教えてあげた方がいいね。
労働者の声を拾い上げていかないと、格差が広がってしまう。だから、どんどん拾うのがいい。

ウェルビーイングに注目が集まる

世界幸福度ランキング、日本は先進国では最低順位

4年連続で世界幸福度ランキング1位のフィンランドは、新型コロナウイルス感染者数が欧州最少レベルだった。「フィンランドは、他者との相互の信頼関係に関する複数の指標でも非常に高い値で、これがパンデミックのさなかにも命と生活を守る一助になった」との見方を示している人もいる。

心身ともに良好な状態にあることに注目が集まる

ウェルビーイングとは、心身ともに良好な状態にあることを意味する概念。Covid-19による「コロナうつ」や「孤独」、世界のあらゆる領域で進行する「分断」の問題など、メンタルヘルスの問題に対して、ウェルビーイングの実現が重要だとされる。

ITを使ったサービスが拡大

トップランナーがアメリカの「calm」という会社。スマートフォンのアプリを使った瞑想(めいそう)の指導や快眠のための読み聞かせを提供している。ダウンロード数は1億回に達し、約1年で世界の有料会員が倍増し400万人まで増えた。 日本では「ラフール」と「ニューロスペース」などがあり、企業が従業員の福利厚生として活用することができる。

ウェブのコミュニケーションを通して心身をより良い状態に持っていく取り組みは、様々な企業にチャンスがある

実際の薬や治療ではなく、デジタル薬というウェブのコミュニケーションを通して心身をより良い状態に持っていく取り組みもある。 味の素も健康に配慮する(提案する)アプリを出した。生活者に提示できる領域になっているので、マーケティング的にも注目していく領域。  
幸福度ランキングの中で日本が低いのは自殺が多いから。体の健康だけでなく、心の健康をどう保つかが課題になっている。
フィットネス、ヨガをネット配信するサービス伸びている。メディアからサービスが出てくると、より変化が進んでいく。

思いもよらない場所を観察することで機会が生まれる

下水を分析しコロナ流行の兆候を把握

日本で変異ウィルスの初確認したとの発表は12月25日だった。それよりも20日以上早く、北大の北島正章助教らは2020年12月4日に国内で取った下水から変異ウイルスを検出した。 どこを観察すれば、より早く、予兆が感じられるのかを考え、下水の観察を始めたというところにマーケティングの視点としても学ばなくてはならない。

発見が難しい病気も、AIを利用してスクリーニングがする可能性がある

東京大学の秋下雅弘教授、亀山祐美特任講師らのグループと東京都健康長寿医療センターの亀山征史医長らは、AIが認知機能の低下した患者と健常者の顔写真判別ができることを発表。人の表情での診断が可能となれば、時間も費用も節約できる新たなスクリーニング方法となる可能性がある。 アルツハイマーは患者のプライドや躊躇などがあると、診断が難しい病気。観察を通して発見した部分を、機械が検知できるとようになるかもしれない。  
最近話題なのが、目でコロナに罹っているかを判断するという試み。通常では考えてもいなかったことから兆候が見つかる場合がある。コロナ患者のにおいをかぎ分けて、患者の前で座り込む訓練を受けているコロナ犬も現在アメリカで活躍中。
これらの発見は相関で見つけることができる。その相関を見つけるのはビックデータから。さらに、AIで解析がドンドンできる。だからこそ、大本の観察力、どこに機会を発見するかが大事になる。オブザベーションが大事。
『ソーシャルマシーン』と言って、エアコン、冷蔵庫、車に人格を持たせて、ソーシャルメディアなどで発言させるアイデアもある。機械であっても「修理して」「●●して」と頼られると、やらなければと思うかも。

コロナが30年続いた底辺への競争を終わらせる

先進国による法人税の引き下げ競争が終わろうとしている

アメリカのイエレン財務長官が法人税の国際的最低税率をG20で協議しようと持ち出した。グローバル資本主義の中で各国がけん制し、法人税が引きさがっていった。それが企業に富みが集まる理由になり、貧富の格差が広がったと仏経済学者のトマ・ピケティ氏は分析している。

きっかけはコロナ禍

コロナで医療機会の格差について実感し、格差は命に係わることに気が付く人が増えた。それにより、ブラック・ライブズ・マターという運動が世界に広がった。格差の是正をしよう、平等であろうという動きになった。  
たくさんのネガティブ面があるコロナだが、30年続いたことを終わらせたのもコロナがきっかけになった。
コロナで困った時(失業時など)、助けてくれるのは国になる。企業は自社の従業員しか守れない。国民を守るための財源は税金で、法人税もその一つ。今後、どうなるかが注目されるものの一つ。

食べ合わせの実験がはじまる

人工舌コンピュータで「おいしい」を探る

『悪魔の食べ合わせレシピ』鈴木隆一著が 2021年3月5日発売になった。人工知能を活用した人工舌コンピュータ「味覚センサーレオ」で「日ごろは食べ慣れていないが、実はおいしい食べ合わせ」のレシピを88個紹介している。

新しいコラボや食べ合わせのヒントになる可能性がある

5つの味覚をレーダーチャート化しているので、食品の組み合わせは突飛だが、データでみると納得する。 インターネットでバズったレシピとして「カップヌードルに雪見だいふく」「ポカリスエット+オロナミンC」などがあるが、ヒットコラボや新しい食べ合わせを狙っていこうとするときに、人口舌ヒントになるかもしれない。  
AIは人間の常識をことごとく打ち破るね。いかに人間は固定観念を持っているのかを実感する。

2021年4月の提言:ニッチな領域の観察をはじめよう

まだ誰も注目していない領域を粘り強く、色々な視点で観察してみると、2020年代におわったこと、はじまったこと、新しい発見が得られるかもしれない。

次回の「月間よげんの書」は5月21日(金)の開催となります。ぜひお申し込みください