月刊:よげんの書アーカイブ~【2021年2月号】前編 ―― 黒い粘土と白い粘土を見よう

よげんの書は、生活の変化や経済・環境の変化など、社会課題を背景に少し先の生活を考えるマーケティングコンテンツです。企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のナラティブをみなさんと共有するために定期的にセミナーを開催し、毎月10のよげんを発表しています。

本ブログでは、2021年2月に発表した10のよげんの中の5つをセミナーでお話した内容のサマリとともにお届けします。

目次

2021年2月号のよげん:前編

嗅覚インターフェイスがスクリーンを凌駕する

210201.嗅覚インターフェイスがスクリーンを凌駕する

2021年に嗅覚の信号をコード化、記録、レポートする洗練された方法が登場すると言われています。データ化された嗅覚信号は、検索エンジンにも登録されます。検索結果でテキスト、画像、動画に加えて、臭いをかぐこともできる。そんな仕組みが整ってくるのではないでしょうか。

そうした、嗅覚データに関する先進的な取組をしているのが、アメリカのアロマイクスと、スペインのオロラマテクノロジーの2社です。オロラマテクノロジーでは、すでに200を超えるデジタル香りを販売していて、ネット通販で買えるようになっています。植物の香りや焦げたような香りのデータを買えることができる。そんな状態になっています。加えて、購入した香りのデータを音声で呼び出すデバイスも展開しています。例えば、VRゲームの画面と音声に合わせてヘッドセットから臭いが出てくるような、そんな没入感ある体験をすることができます。

こうした香りのコンテンツは、生活者の購買場面での活用が期待されています。実店舗での多感覚体験を演出するだけでなく、オンラインコマースにおいても、嗅覚に基づいたウェブサイトの経験価値を再構築するブランドが売上を伸ばすのでは。と予測されています。

日本でミソジニー狩りが広がる

210202.日本でミソジニー狩りが広がる

日本では2021年が明けて早々に女性蔑視の問題が大きく取り上げられましたが、それに関連しミソジニー狩りが広まる。というテーマを設定します。ミソジニーは、女性や女らしさを蔑視する概念のことを言います。また、そうした概念を持つ人のことをミソジニストと呼びます。ミソジニーは人間の心や行動の中にあるものなので、意図せずともそういう言動が発露されてしまう。そんな意図していないところが問題なのかと感じています。

森元会長の発言問題で一番いけなかったのは「女性はこうだよね」という、思い込みや自分の解釈によって言い切ってしまったことだと思います。こういう男性が偉そうに女性を見下しながら解説することを「マンスプレイニング」と言います。こうした態度が、今一番問題になっていて、マンスプレイニングしてしまった人が、批判され炎上の的になると感じています。

森元会長の発言も良くないことだとは思いますが、こうしたミソジニーやマンスプレイニングの問題を日本で真剣に向き合わないとというきっかけにもなったと感じています。その機運は2021年に高まっていると思っていて、本年1月に発売された「令和GALSの社会学」という本は、帯のコピーがすごくて読まないと思って手に取りました。「ギャルの意識こそが現代を生き抜くヒント!」です。この本の中でも、著者である3人のフェミニストに、男性がマンスプレイニング的に主張する一節が印象に残りました。

一方で、世界に目を向けると、ネットフリックスのリミテッドシリーズドラマで昨年最も観られた「クイーンズ・ギャンビット」というドラマが話題となっています。このドラマは、1950年代からのチェスの世界を描いたドラマです。10代前半の女性がチェスの世界に飛び込み、年上の男性をバッタバッタと倒していく、女性活躍を表象する内容になっています。このドラマで良かったのは、相手の男性です。主人公に負けた後、潔く負けを認めて、年下の女性であってもしっかり称える。そして、その後彼女の活躍を支援してくれたりする。今、こういう男性の姿勢に対する評価もあって、世界で賞賛されるドラマになったのだと思います。

そして、改めて森元会長なのですが、7年前の2014年のソチ五輪のときにも失言をしています。フィギュアスケートの浅田真央さんへの言葉でした。ここで共有したいのはその後の浅田真央選手のそれに対するリアクションです。「ああいう発言をして、森さんも少し後悔しているんじゃないかと少し思います。」というコメントを残しています。自分の意見を主張するわけでもなく、相手の立場になって相手を慮って発したコメントが評価されました。自分は正しいという思い込みではなく、相手の気持ちになって考えてみることが大切だと思いました。

コロナで加速したお一人思考で発想しよう

210203.コロナで加速したお一人思考で発想しよう

飲食店にシステムを提供するテーブルチェックのデータでは、COVID-19によって、飲食店の来店者数は前年を大きく下回る一方、1人での利用は最大2割増え、カラオケや宿泊でも1人客が好調である実態が見えてきました。日本ではコロナ禍前から「おひとりさま消費」の市場規模は大きく、拡大傾向にありました。

そうした近年のおひとりさま市場の拡大で、飲食業界でもそのニーズを意識して展開する店が増えています。以前にあった「ぼっちめし」という言葉は、「ソロめし」というかっこいい言葉に変わってきています。飲食店もおひとりさまニーズを意識して対応をはじめるお店が急増し、加えてサービスとしてもアプリでソロメシを訴求するものが増えています。

玩具もひとり遊び用が注目されています。一人遊び用の玩具「気泡わり」や、ひとり用カードゲームの「シェフィ」など。自分のペースで遊びたい。ひとりの時間を楽しく過ごしたい。というようなニーズに応えています。ということで、もともとあった少子化や単身世帯の増加という環境要因に加えて、COVID-19がドライブをかけた「お一人思考」というのが、消費ビジネスを動かす源泉になるのではないかと感じてます。

黒の視点から緑の視点への変換が求められる

210204.黒の視点から緑の視点への変換が求められる

本テーマが元にしている言葉は、デンマークの電力会社オーステッドの前CEO「ヘンリク・ポールセン」の「黒から緑へ転換する」という方針です。オーステッドはもともとは、化石燃料を使った電力会社でデンマークの温暖化ガスの3分の1を排出する「黒い企業」だったのですが、ポールセンの英断でそれらの電力小売り部門を売却し、再生可能エネルギーによる電力会社に生まれ変わりました。そうした大きな構造改革を経て、それを成し遂げたことによって、オーステッドは石油の5大メジャーのひとつBPの時価総額を超える企業価値を持つようになりました。

こうした緑の視点による構造改革を行っている企業が日本でも現れてきているので情報を集めました。NTTは、同社が持つ全国の7300の通信ビルを蓄電所として活用する取り組みをはじめています。再生可能エネルギー発電(グリーン電力)は自然環境に左右され需給調整が難しい。ビル内に大容量の蓄電池を置いて「蓄電所」となれば、地域の再生エネ発電の受け皿となれるとされています。

また三菱商事が開発する技術では、地球環境に配慮したコンクリート生産手法の確立に取り組んでいます。この技術ではコンクリ原料のセメント製造時に出る二酸化炭素を建物の壁などに封じ込めることができるようになります。これらの技術によって、元々は製造時に二酸化炭素を排出していたセメントの製造過程によって、発生するよりも多くのCO2を閉じ込めることができるようになります。今後、企業の成長には、こうした環境にも配慮する「緑の視点」で新規事業を考えることが求められるでしょう。

ニューノーマルはアート思考で創る

210205.ニューノーマルはアート思考で創る

アートシンキングという言葉を聞く機会が増えました。特にCOVID-19禍を通して叫ばれるようになった「VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)な時代」に対応する新しい思考法として注目されています。アーティストのように自由な発想で仕事を考える「アート思考」は、論理的に説得して物事を進める「ロジカル思考」、顧客ニーズに合ったものを開発する「デザイン思考」と対照的な方法といわれています。

具体的にアート思考を活用しているNTTデータでは、社会課題を起点に「問題意識」から「問いを立てる」手法としてアート思考を活用しています。アート思考によって「問題の本質を見抜く」「本質を表現する力を養う」ことにより、社会や市場の兆しを正しく捉えビジョン化していく力の強化に取り組みます。本記事のもととなっている、セミナー「よげんの書」も社会や市場の「兆し」を正しくとらえようと取り組んでいるものですし、アートも取り入れたいと考えています。アート作品やポップカルチャー作品のヒットしている作品を追いながら、その背景にある、多くの人が共通して話しをするべき「時代のナラティブ」の発見に役立てています。

NTTデータ公式サイト
アート思考~先行きが不透明な時代の思考法~ | NTTデータ
アート思考~先行きが不透明な時代の思考法~ | NTTデータ「アート思考」とは「アーティストが作品を生み出す時の考え方、思考プロセス」です。この「アーティスト的なものの考え方」が豊かな生活やビジネスの創造に活用できるとし...

2021年2月号のよげんから考える提言

210200.黒い粘土と白い粘土を見よう

白い粘土は体験・経験に基づく行動をする自分です。黒い粘土は「私は正しい」という思い込みで行動をする自分です。VUCAな時代で思考方法や視点が多様化しています。「私は正しい」という身勝手な行動をしてしまっていないか、黒い粘土を見つめなおしましょう。

 

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この記事を書いた人

株式会社ドゥ・ハウス 執行役員 聞く技術研究所 マネジャ

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