聞く技術研究所

サステナブル・トラベルの可能性~気づきをサービスとして提供することとは

SDGsに見られるように、世界的に環境への意識が高まっています。この環境に対しての配慮は、今企業の社会的な責任であるとも言えます。どのような業種であっても同様な課題を持っているかと思いますが、今回は特にホテルを通して、生活者へのアプローチを考えていきたいと思います。

日本のエコホテルと世界のエコホテル

環境に配慮したサービスを行っているホテルのことを「エコホテル」と呼びます。日本のエコホテルは3R活動(リデュース/リユース/リサイクル)を推進することにより、環境に配慮しています。
他方海外、主にヨーロッパのエコホテルでは環境保全の取り組みに対しての基準が高くなっており、ホテル内で提供される食材や使用されている洗剤、石けんなども環境への配慮がなされているものとなります。また、エネルギーを再生可能エネルギーとするための太陽光パネルを設置したり、緑化のために屋上庭園を作成するなど、ホテルの設計から環境保全に対する意識を高くすることにより、よりユーザーに選ばれるホテルとなっています。

サステナブル・トラベルという言葉の認知がされていない

エコホテルを宿泊場所として選んだり、一つの場所に長く滞在する(移動に関する排気ガスの削減を目的としている)など、環境に配慮した旅行スタイルを「サステナブル・トラベル(持続可能な旅)」と呼びます。これは近年外国人に人気の旅行スタイルですが、日本での認知はどうでしょうか。今回、ドゥ・ハウスでは2017年1月~2020年2月の間に国内のホテルに宿泊をした生活者を対象にアンケートを行いました。その結果、この言葉の認知率は33.7%で、その中でも意味まで理解していたのは全体の12.5%でした。(2021年3月5日ドゥ・ハウス調査)
これは少ないようにも感じますが、一方でしっかりと意味も含めて浸透させていく余地が十二分にあるとも考えられます。サービスを提供する側としても、言葉と意味、言葉と目的をセットにして説明していくことにより、宿泊者が「自ら選ぶことによりサステナブルな行動をしている」と満足することができるでしょう。

気づきのチャンスをサービスにする

近年、ホテルステイをすると「地球のためにできること」などと書かれたエコカードを見かけるようになりました。連泊時にシーツやタオルなどのリネン交換の回数を減らしたり、アメニティの追加を断ることを促しているものです。ホテルによりサービスの種類は異なりますが、いずれも清掃や洗濯による洗剤排水等の削減を目指したものです。
また、チェックイン時に通常記載する宿泊者記録についても、ペーパーレスとなり、タブレットでのサインであったり、スマートフォンアプリでの対応などが増えてきています。
これらはすべてエコホテルのサービスといえますが、サステナブル・トラベルを意識していないホテルユーザーにとってみると、すべてが一つの目的に則っていると感じにくい部分もあります。
このようなサービスをホテルユーザーが選ぶことで、「あなた」が地球に対して、社会に対して、どんなことができているのかを提示してあげると、そうした気づきをくれるホテルということで、ホテル自体への評価も上がっていくことでしょう。また、こうしたサービスを世界的に使われている「サステナブル・トラベル」というような用語で説明し、提供することにより、ホテルの価値が高くなり、日本人ユーザーの紹介による、ビジネスユースのインバウンド需要の際に選んでもらいやすくなるかと考えられます。
提供する一つのサービスに複数の意味を持たせることにより、ホテルユーザーである生活者の満足度をよりあげていく機会となることでしょう。