月刊:よげんの書アーカイブ~【2020年10月号】後編―――ポジティブな批判をしよう

よげんの書は、生活の変化や経済・環境の変化など、社会課題を背景に少し先の生活を考えるマーケティングコンテンツです。企業や個人がマーケティングに取り入れるべき時代のナラティブをみなさんと共有するために定期的にセミナーを開催し、毎月10のよげんを発表しています。

本ブログでは、2020年10月に発表した10のよげんの中の5つをセミナーでお話した内容のサマリとともにお届けします。

目次

2020年10月号のよげん:後編

ブランドが顧客を選ぶ時代がやってくる

英国アパレルメーカーの「フレッド・ペリー」は、2020年9月24日に米国で政治活動を行う「プラウド・ボーイズ」に対する批判的な声明を発表し、同時にプラウド・ボーイズがユニフォームとして着用する、フレッド・ペリーの特定デザインのポロシャツについて、米国での販売を停止することを発表しました。

自社の顧客とはいえ、ブランドや企業の信念に反する行動をする顧客に対して、不承認を明確にした事例です。企業やブランドのガバナンスへの課題が示されたり、注目が集まる社会において、それが顧客であっても批判の姿勢を明らかに発信すること、行動を起こすことの大切さを見て取ることができました。

FRED PERRY JAPAN | フレッドペリー日本公式サイト
プラウド・ボーイズに関する声明(Proud Boys Statement) | フレッドペリー日本公式サイト
プラウド・ボーイズに関する声明(Proud Boys Statement) | フレッドペリー日本公式サイトプラウド・ボーイズに関する声明

アフターコロナのサプライチェーン戦略が変化する

日経新聞が行った調査によると、「コロナ問題を機に、調達戦略で重要と考えるポイントは?」という問いに対し、「調達先(国・地域)の分散」や「危機発生に対応した機動的な調達先の変更」といった項目に票が集まりました。これは、コロナ禍中に多くの先進国が自国でマスクひとつ作れないことに気がつき、痛い目にあったことがきっかけとなっています。

製造拠点として中国に過剰に依存する体制は、世界のサプライチェーン戦略の根本的な不安材料でした。ポストコロナ、アフターコロナの世界では中国一国に依存しない、サプライチェーンの再構築がはじまっていくと考えられます。

うがい薬の買い占めで、日本の教育の特殊性が見えてくる

2020年8月には、大阪府の吉村知事によるCOVID-19対策としての「ポビドンヨードのうがい薬」に関する会見と、それによる買い占め問題が話題となりました。直近のトイレットペーパーの買い占め問題の反省も活かさず、発表に対して無批判に行動する日本人の性格・特性を教育の特殊性から考えてみます。

経済協力開発機構 (OECD) が行った「国際教員指導環境調査(2018年度)」の、「中学教員の授業での取り組み」に着目します。ここにある「批判的に考える必要がある課題を与える」という項目に対し、日本での実践率は12.6%と他国と比べて大きく低い結果が出ています。他国の結果は、調査に協力した48カ国の平均が61%、アメリカは78.9%、イギリスが67.5%、オーストラリアが69.5%、韓国が44.8%、国民の体制批判に敏感な中国(上海に限定)でも53.3%の教員が「批判的に考える必要がある課題を与える」取り組みを実践しています。日本以外の47カ国は40~87%の範囲に収まっている中で、日本がダントツに低い12.6%という結果になっています。

日本においては目の前に提示された話を鵜呑みにするのではなく、客観的事実に基づいてゼロベースで論理的に考える力をつけるための教育がなされていないために、今回の「うがい薬」や「トイレットペーパー」の買い占め問題など、無批判に行動するという日本人の性格が浮き彫りになるのではないかと考えました。

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ページが見つかりません:国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research国立教育政策研究所

政治がジェンダーギャップ解消の足を引っ張る

2020年9月16日に組閣された菅内閣において、20の閣僚ポストのうち、女性は上川陽子氏(法務)と橋本聖子氏(五輪)の2人に留まり、閣僚に占める女性の割合は10%でした。この男女の構成比は、G7(先進7カ国)の中で最も女性比率が低い結果となります。世界的にジェンダー平等が叫ばれる中、その潮流に逆行する組閣となりました。

世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数 2020」を見ると、世界153カ国中の日本の順位は121位となり、分野別の政治における順位では144位です。ジェンダーに関する「意識」を変えるためには、まずは「人数を合わせること」として、様々な組織を構成する男女比を平等にすることから取り組む国も増えています。日本においても、ジェンダーギャップの解消のために、人数を合わせるという具体的な行動からはじめる必要があるのかもしれません。

World Economic Forum
Global Gender Gap Report 2020
Global Gender Gap Report 2020Gender parity will not be attained for 99.5 years – that’s the sobering finding of the Global Gender Gap Report 2020

スクリーンニューディールが否応なしに立ち上がる

ポストコロナの対応として、米国ニューヨーク州ではクオモ知事の政策により「人と人との接触を避け、オンラインで様々なサービスを作り上げる試み」が進められています。その実行のために、民間のハイテク企業の幹部や、大学・病院の関係者などが集められ、座長はグーグルのエリック・シュミット氏が務めます。

世界的には「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉で、ニューノーマルな環境づくりとして進められていますが、ニューヨーク州のこの取り組みは、緊急時ということで、多額の税金が短期間の内に投入され、教育の大きな改革が、議会での議論や学校や生徒などの声を反映させることなく進むのではないかと懸念が広がっています。惨事便乗型資本主義の懸念を書いた「ショック・ドクトリン」の著者「ナオミ・クライン」はこうした状況を「スクリーンニューディール」と呼び、警鐘を鳴らします。

DXによるニューノーマルな環境づくりは進めるべきことだと理解しつつ、我々はそこで検討されている変化について関心を持ち、正しい方向へ民主的に進める方法を常に考えるべきだと思います。

2020年10月号のよげんから考える提言

いま、様々なモノ、コトの再定義が求められています。再定義のためには、批判的な精神が必要です。ポジティブな批判のためには、自分が学ばなければならない。ポジティブな批判には、行動が伴う必要がある。ビジネスや生活の「質」の向上のために、ポジティブな批判の視点を持ちましょう。

 

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この記事を書いた人

株式会社ドゥ・ハウス 執行役員 聞く技術研究所 マネジャ

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