商品は、どのような空間で、どのように使われ、ユーザーにどんな感想を抱かれているのでしょうか?
企業が生活現場を見たり生活者の声を直接聞いたりするためには、生活者に会場に集まってもらったり、訪問調査など企業側が生活者のいる場所に出向くといった方法が一般的でした。しかしCOVID-19の感染拡大を機に、移動や密を避けるという新たな生活様式が必要となった今、そういったオフライン調査が難しくなっています。
一方、ビジネスシーンではZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオ会議ツールが急速に浸透。自宅にいながら対面でのコミュニケーションがしやすくなり、コロナ禍における新たなインフラとなりつつあります。企業にとって都合の良い場所(=生活者にとっての”アウェー”)ではなく、”ホーム(自宅)”にいる生活者同士を繋ぐことで、生活現場の事実を企業に届けることはできないだろうか? 今回は、そんな思いから生まれた取り組みを一部ご紹介します。
Zoomを活用した調理&試食付き座談会
2020年11月、ドゥ・ハウスの主婦マーケターネットワーク「DOさん・ネット」を活用し、調理&試食付きのZoom座談会を開催しました。
<実施概要>
- テーマ商品:料理用ソース
- 実施規模:1グループ5~6名。2日間で15グループ開催。1回1.5時間。
- 参加者の流れ:
- 事前に送付された商品を自宅で使いこなす。
- 当日朝までに座談会の試食時用メニューを準備しておく。
- 座談会当日、指定時間にZoomにアクセス。全体説明の後、各ブレイクアウトルームに分かれて座談会に参加。
今回は、上記の形で20代~80代までの計85名の主婦が参加しました。ブレイクアウトセッション機能を活用したことで、1日目は11グループ、2日目は4グループ、それぞれ同時刻に開催しています。
事前にZoom研修を行うときのポイント
設計・運営を行うにあたり、前段でポイントとなったのは事前のZoom研修です。ZoomはURLをクリックするだけでミーティングに参加できる便利なツールですが、座談会当日にカメラやマイクが作動しないというリスクや、参加者の未知のツールに対する心理的負担を軽減し座談会に集中してもらうため、事前に参加者全員にマニュアルを送付し、希望者に対し一人20分~30分程度の研修をZoom上で実施しました。押さえたポイントは次のとおりです。
- マイク、ビデオのオンオフ
- 表示方法の種類と、切り替え方
- 名前表示の変更の仕方
- チャット機能と使い方
- 画面共有とは何か
- レコーディング機能とは何か
- ブレイクアウトルームとは何か
- メッセージボードとは何か
- 退出の仕方
- 再入室の方法
2組に分かれやすいよう1回につき参加者3,4名+運営側2名の体制で行ったため、ブレイクアウトセッションも理解がスムーズに進んだようでした。今回は座談会当日のグループ分けとは関係なく研修を行いましたが、座談会メンバーが確定している場合は、そのメンバーで事前研修を行うのがベストだと思います。
後から、余裕があれば触れておいた方がいいなと思ったのは、「低照度に対して調整」。画面が暗いときに自動で明るさを調整してくれる機能です。当日自宅環境により顔が暗くなってしまうことがあったため、事前研修またはマニュアルで触れておくと、当日慌てずに済みます。また、背景画像が設定されている場合、人以外、例えば紙や料理がうまく映らないことがありました。座談会の内容によって、背景画像の設定をOKとするかNGとするか、事前に決めて知らせておくと良いでしょう。
座談会設計時のポイント
座談会についても触れていきたいと思います。
まず、オンラインによる疲労を念頭に、通常当社で実施する2時間~3時間よりも短く、全体で1.5時間で設計しました。およその配分は下記のとおりです。途中に試食準備の時間を挟むことで、身体の動きが生まれるようになります。
- 自己紹介&ディスカッションテーマ2つ(商品コンセプトについて/パッケージの印象)(35分)
- 試食準備(5分)
- 試食&ディスカッションタイム(そのメニューにした理由・味などについて)(30分)
- ディスカッションテーマ2つ(購入意向/もっと○○だったら…)(20分)
もう1つ、今回のオンライン開催にあたり気をつけたことは、進行役だけでなく、参加者に対しても事前にある程度情報共有をするということです。おおまかなタイムテーブル、そしてどのようなテーマについて話してもらいたいかについて、参加者用マニュアルに記載したほか、ホームユース時のことをメモできるようにしておきました。
”ホーム”を繋ぐことで生まれる価値
最後に、今回の取り組みを通じて感じられた(実感した)価値について、ご紹介します。
使用現場に近いところで語れる生々しさ
事前にホームユースする工程を挟むことで、商品を使ったときのこと、家族の反応などの記憶を想起しやすくなります。中には、話の途中で調理時に使用したスプーンを持ってきて使いやすさを話したり、「こういう容器だといいんだけど・・・」と家にある他の容器を取り出して説明する参加者もいました。
試食タイムで更に商品理解が深まる
同一会場ではないため、同じ条件下で商品を試すことはできませんが、逆に、参加者それぞれが自由に調理したメニューを持ち寄って紹介し合うことで、商品の使用イメージが更に膨らみます。「こう使ったら美味しかった」「こうしたら家族に好評だった」といった会話を重ねることで、商品自体への理解が促進されるだけでなく、「○○にすると美味しいという話だったので、翌日試してみました」という声にみられるように、その後の使用意欲も喚起されます。
マーケティングの場と生活現場が、シームレスに繋がる
”会場”という切り出された空間ではなく、“ホーム”にいる生活者を繋ぐことで、リサーチやプロモーションといったマーケティング活動が、参加者それぞれの生活空間にシームレスに繋がることになります。それによって、その場で感じたことや思ったことが、その後の生活行動の中に反映されやすくなると期待されます。
そして、そのためにもう1つ重要なことは、ただオンラインでやればいいというのではなく、その時間をいかに楽しく、有意義なものだった、参加して良かった、と感じてもらえるようにするか?ということです。ドゥ・ハウスでは主婦マーケターと共に、オンライン時代における聞く技術を更に磨いていきます。
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