月刊:よげんの書アーカイブ~【2020年9月号】前編―――イチ早く経済活動を再開した若者(Z世代)と話をしよう。

よげんの書は、生活の変化や経済・環境の変化など、社会課題を背景に少し先の生活を考えるマーケティングコンテンツです。企業や個人がマーケティングで語るべき時代のナラティブをみなさんと共有するために定期的にセミナーを開催し、毎月10のよげんを発表しています。

本ブログでは、2020年9月に発表した10のよげんの中の5つをセミナーでお話した内容のサマリとともにお届けします。

目次

2020年9月号のよげん:前編

Z世代のフィーメイルアイコンが人々を動かす

Z世代のフィーメイルアイコンが人々を動かす

2020年5月28日に香港国家安全維持法が導入されました。中国によるこの決定に対しては世界から多くの批判が寄せられました。日本でも報道を目にする機会がありましたが、その中国と香港の動向について、より多くの日本人の耳目を集めるようになったのは、8月10日に香港の政治運動家の「周庭(アグネス・チョウ)」が逮捕・拘束されたタイミングでした。

かつて、マザー・テレサは「大衆を見ても私は行動しない。個人を見たときには私は行動する」という言葉を残しましたが、まさにその通り。国単位の大きな変化よりも、個人の行動や変化を目の当たりにしたときに、私たちは心を動かされることに気が付かされました。その周庭は1996年生まれの「Z世代」と呼ばれる若者です。近年、彼女のようなZ世代の女性が世界の制度や体制に対して声を上げて、注目を集めています。

2019年には、スウェーデンの環境活動家である「グレタ・トゥーンベリ(2003年生まれ)が、同年に開催された「国連気候変動サミット」でのスピーチがきっかけで大きな注目を集め、TIME誌が選ぶ「パーソン・オブ・ザ・イヤー」にも選出されました。同様にアメリカの銃規制の活動家「エマ・ゴンザレス(1999年生まれ)」も、銃規制を訴えるスピーチで多くの人たちの共感を得ました。

世界では、これから社会・環境・地球と永く付き合っていくZ世代が大きな声を上げ、人々の行動を促しています。日本においてもこうした若者が近々現れてくるかもしれません。人々を動かすZ世代に声をもっと注意深く聴く必要があります。

ラスト・ワンマイルの争奪戦が激化する

ラスト・ワンマイルの争奪戦が激化する

COVID-19による自粛生活を経て、家までの宅配を担う「ラスト・ワンマイル」の機能の重要性が高まりました。大きな新市場に対しての競争も激化しています。2020年8月には、日本におけるフードデリバリーの2大サービスのひとつである「出前館」が、もうひとつの大手「ウーバーイーツ」の買収を検討しているという報道が出されました。後日、出前館からは否定のリリースが出ましたが、争奪戦の激化を感じさせるニュースでした。

また同じく8月に、アマゾンは「米連邦航空局(FAA)からドローン(小型無人機)を使った配送サービス「プライムエアー」の商用化に必要な認可を受けた」ことを発表しています。ラスト・ワンマイルの争奪戦はいよいよ人だけでなく、ドローンの活用も具体化され激化していくことになります。

加えて、こうしたラスト・ワンマイルの争奪戦による宅配サービスの充実は、前述のような大きなプラットフォーマーだけでなく、メーカーや個人店の「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)市場」にも成長を促すドライバーとなります。D2C市場は世界で見ると、その基盤を提供するカナダのショッピファイの4~6月の売上高が、7億ドル強(約750億円)と前年同期比2倍に増えました。

日本では「和製ショッピファイ」とも呼ばれるBASEの4月の流通総額は3月の2倍に。リアルでの休業を余儀なくされた店舗が次々とネットに進出し、消費者にダイレクトに商品を届けるようになりました。今後もこの動きは加速が予想され、商品との出会いは「家」が増える。新たな「おもてなし」の機能の充実が必要になると考えられます。

若者が消費と経済の復興を牽引する

若者が消費と経済の復興を牽引する

2020年5月末の緊急事態宣言解除後の東京都の感染者数の推移を見ると、緊急事態宣言前と比較して30代以下の若者の構成比が高くなっています。ネガティブな情報ではありますが、若者がイチ早く経済活動を再開したと言うこともできる状況です。

その一つの指標として、これまで延期が続いていた新作映画の公開が再開された映画館・映画業界のデータを見てみます。7月17日に公開された「今日から俺は!!劇場版」の公開後土日2日間の動員は48万6000人でした。10代、20代中心に映画館に訪れました。一方で8月7日に公開した「映画ドラえもん のび太の新恐竜」は、公開後土日2日間で動員33万4000人。毎年日本の映画興行ランキングの上位に食い込むキラーコンテンツである映画ドラえもんの動員数が、今日から俺は!を下回る結果となりました。2019年のドラえもん映画の「月面探査記」と比較しても、公開後土日2日間で59%と大きく減少しています。

この結果から見ても、緊急事態宣言解除後もファミリー層の自粛は継続しているが、一方で30代以下の若者は経済活動を再開しているとみて取れます。COVID-19からの復興はまず若者が牽引していくものと考えます。

メンタルヘルスへの対応が急がれる

メンタルヘルスへの対応が急がれる

全世界的に長引くCOVID-19への対応によって、人の心への悪影響への対策が急がれています。アメリカではコロナ禍によって精神的に苦痛を感じる人の割合が45%に上がるというデータもあり、その状態を「コロナうつ」と呼ぶ言葉も生まれました。日本においても、2020年8月に厚生労働省がはじめて1万人規模でメンタルヘルスの全国調査を行う方針が固められたそうです。

6月~7月に「国際成育医療センター」が行った調査によると、コロナ禍の自粛生活中に、大人は子どもの「集中できない」「暴力を振るう」などの行動的な側面に目が行き、叱ったり子の努力不足だと捉えがちだという結果がでました。そうした家族全員が自宅で自粛している環境において、子どもの7割超がストレス反応を示しているそうです。

こうした精神的苦痛を感じる状況、癒しを求める状況に対する世界の空気感は、8月~9月に日米でヒットした音楽アルバムで見て取ることができます。日本では「米津玄師のSTRY SHEEP」が、アメリカでは「テイラー・スウィフトのフォークロア」が、それぞれWithコロナの今、日米でロングヒットを続けています。前者は「果たしてこれでいいのだろうか」と、後者は「空想や歴史、想い出の中に逃避する」という想いを込めて創られた「内省的」な音楽だと言われています。

メンタルヘルスへの対応は、こうした生活者に寄り添い、気持ちを理解して共に今の状況を省みるようなコミュニケーションが必要だと思われます。

新しい井戸端会議がはじまっている

新しい井戸端会議がはじまっている

withコロナのニューノーマル環境において、生活者は今までの「井戸端会議」のようなコミュニケーションの場をデジタル空間のあらゆる場所で再現をはじめています。とても興味深かったのは、アメリカで「ZOOMママ」と呼ばれる人たち。11月の大統領選の鍵を握るとも言われてるママたちは、郊外に住む55歳未満の母親で、中~上流層の家庭の主婦です。「政府がもっと結束して新型コロナウイルス対策をとればいいのに」。などといった井戸端会議で交わされていた話題を、ビデオ会議サービス「Zoom」でワインを片手にママ友と時に不満をぶつけ合っていると言われています。

またゲームの中の世界でも新しいコミュニケーションがはじまっています。任天堂の「あつまれ どうぶつの森」は、世界で外出を避ける動きが広がるなか、仮想空間で交流したい需要を取り込みました。企業や美術館などがこれに注目し、商品や所蔵作品をゲーム内で公開して消費者との接点を創りはじめています。

同様にEpic Gamesが配信・販売するオンラインゲーム「フォートナイト」では、緊急事態宣言下の4月26日に、世界的なラッパー「トラヴィス・スコット」がゲーム内でライブを開催し、全世界1230万人がこれに参加しました。日本でも、8月7日に米津玄師がライブを行い50万人を集めるイベントになりました。

各所ではじまっている新しい井戸端会議の場所は、リアルな集まりの代替から、その場所だからできること、その場所でしかできないこと。を実現するコミュニケーションのフィールドとしてこれからも活かされていくと考えられます。

2020年9月号のよげんから考える提言

若者と話そう

2020年9月のよげんから考える提言は「イチ早く経済活動を再開した若者(Z世代)と話をしよう」としました。

イチ早く経済活動を再開しはじめた若者(Z世代)です。一方でコロナや気候変動を含む社会課題に対して意識が高く、メンタルヘルスへの対応が必要なのも彼らです。不安や不満の解消には「対話」が有効です。方法はソーシャルメディアでもZoomでもいろいろあります。対話によってモチベートされた若者はいずれ企業の味方になって、情報を発信し、伝播してくれるインフルエンサーにもなってくれるかもしれません。

COVID-19や気候変動など、深く考えると怖くなる社会課題が表面化された未だからこそ、彼らと話をすることが、今を、そして未来を考えて、一緒によい社会・環境を作るきっかけとなると思います。

 

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この記事を書いた人

株式会社ドゥ・ハウス 執行役員 聞く技術研究所 マネジャ

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