ドゥ・ハウスの「聞く技術研究所」の責任者を務めている舟久保です。当社は創業以来40年以上にわたり「聞く力」に拘り、基本技術として力を磨いてきました。フィールドマーケター「DOさん」による、主婦の台所で行う「台所フォーラム」からはじまり、各種リサーチや「モラタメ」「テンタメ」などのデジタルプロモーションまで、当社が展開するマーケティング・サービスにはすべて「聞く力」のエッセンスが詰め込まれています。企業が作るモノやサービスを消費する役割だった生活者の声を聞き、情報の生産者として活躍してもらうことで、マーケティングを活性化する事業を展開してきました。
不確実な時代だからこそ、マーケティングには「聞く力」が必要です
2020年代はCOVID-19のパンデミックからはじまりました。情報化社会になってからの人類が経験したことがない状況下において、COVID-19に関するたくさんの情報が飛び交いました。喫緊の課題が目の前に迫り耳目を集める時、生活者の耳に企業からのメッセージは届きづらく、心にも残りづらいことに気が付かされました。企業が「話す」マーケティングの限界を感じる場面でした。一方で企業が生活者に「聞いて」みるとどうでしょう。情報を浴びるばかりだった生活者は、自分のこと、世の中のこと、気づいたこと、変化したことをたくさん話してくれます。情報過多の環境において「聞く力」は、コミュニケーションを活性化する推進力になります。
「聞く」対象は生活者だけに留まりません
2020年代のCOVID-19のパンデミックによって気づかされたことがもう一つあります。2010年代から問題視されていて、でも特に日本ではまだ顕在化していなかった社会課題の多くが生活者にとって具体的な問題となって表に出てきました。格差社会の問題による感染の広がりや、気候変動による災害、欧米のブラック・ライヴズ・マター運動の再拡大による人種差別問題の顕在化など。普段は考えていないけれど、ふと考えると、ふと気づくと怖くなる大きな社会課題の存在感が強くなりました。当社では変化や新たな機会を見つけるための「聞く」対象として「生活者」に加えて、こうした「社会課題」に関する情報も取り扱っていきます。
生活者に新たに生まれた小さなウォンツと、社会課題による小さな変化の発信を続けています
前提として、日本人の生活には大きな不満はなく、だいたい満足な暮らしをしている人が大半だと感じています。しかし、その環境の中でまだ取り残された小さな不満や欲求(ウォンツ)を見つけることが、マーケティングの機会になります。加えて、COVID-19によって今まで感じることがなかった全く新しい不満や欲求が生まれてきています。このような生活の変化を当社では「事実新聞」として定期的に整理して発行し、紙面とセミナーを通してみなさまにお届けしています。社会課題へのアプローチは、環境や経済の変化など、社会課題を背景に、少し先の生活を考える「よげんの書」を毎月セミナーにて発信しています。ぜひ、多くの方にご覧いただき、今よりも少しずつ良い生活を実現するための議論や前進する力として貢献していきたいと思います。
株式会社ドゥ・ハウス
上席執行役員
聞く技術研究所マネジャ
舟久保 竜