BMR
このコンテンツはドゥ・ハウスが2007年に「10年商品をつくるBMR」を出版した際、連動企画として作成されたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
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【コンテンツ】 1.BMRとは   2.本の紹介(第1章 BMR各要素/第2章 要素間の関係/第3章 消費者の声を聞く/第4章 開発秘話)   3.付録 製品開発の切り口   4.本の成り立ち

マーケターとは

マーケター

■感度はマスト

自称ってよく言われますけど、私は社内で、自分をマーケターと言っています。範疇が広いんじゃないですか。デザイナーさんは絵を描かれる。マーケティングって下手すれば物流だって生産だってマーケティングじゃないですか。水口先生が言われるなら、今7Fになったんでしたっけ。7F全部マーケティングですから、販売製作から全部広くなると、営業さんもマーケターだし、商品企画もマーケターだし。定義として広いので、たぶんはっきりしないんですよね。

うちの会社は、開発と企画の言葉で使い分けています。そういう意味では、私は企画の人間なんですけど、何が必要なんでしょうね。ありきたりですけど、感度というんですかね。テレビドラマ、テレビコマーシャルを見て熱く語るとか、いろいろなものに。私で言うと、少年ジャンプを見て、未だに泣くんですよ。先々週のワンピース、泣きましたよね。あれは4回読んで4回とも泣いていますからね。ゴーイングメリー号沈む話で泣いて、今週号コビーが出てきたじゃないですか。コビーに泣いていますからね。そういう感性。テレビコマーシャルでも泣いたことはありますかね。ダニエル・ピンクの「ハイ・コンセプト」に、ゲームとかを見ていて感動してなく人間が、これから大事だみたいに、きちっとしたビジネスモデルで書かれているんですよね。

例えば街で流行っているお店とか、デパ地下に並んでいたら、意味なく並ぶとか、とりあえず街で配っているものはやみくもに取って全部読むとかいうのは、やっています。

今商品企画を4年くらいやっていますけど、その前はリサーチを6年くらい、もともとはそういう人間ではなくて、それまでは営業でした。営業も4年くらいやっていて、吹かず飛ばずの営業だったんですが、その頃は全然意識がなかったし、デパ地下に並ぶなんてかっこ悪いと思っていたんですよ。いわゆる大衆に流されるということが嫌い。

それが、リサーチにいくようになって、消費者調査オンリーのセクションだったんですが、一番最初は、木曜日に渋谷で定量調査に行きました。キャッチっていうんですけど、当時高校生をコアにしていた時期があって、木曜日に、渋谷でターゲット誰取るんですかと言ったら、高校生とかって言われて。木曜の10時に高校生いないですよと言ったら、わんさかいるわけですよ。茶髪とか、当時ガングロとかの。最初はカルチャーショックでした。自分が否定してきた世界ですよね。結構まじめに生きてきたんで、何だこいつらと思いました。試食調査とかで現場に入ってアンケートを採るんですけど、自由回答の部分って、彼らは書けないんですよね。最初の頃は怖くて。女の子もビビるんですけど、特に背がすごく高くてパンツ半分見せて、ドレッドにしているような男の子、結構いるんですよね。おいしいじゃわからないから、どうして?って聞かないといけないわけですよ。味が濃いからいいの?とか聞くと、あー?とか言って、彼らは答えられないし、最初怖かったんですよ。それが、最初にへーと思ったのは、試食を終わった後に、180くらいあって、ドレッドにしていて、パンツ半分見えているお兄ちゃんが、ポリポリ行儀悪く食べるんですけど、食べた後のチップスをウェットティッシュで拭いていたんですよ。こいつだったら分かり合えるなと思って、それから平気になって、道ばたに座り込んで話をしたりするようになりました。

女子高生の実態で、お小遣い5千円しかもらっていないのに、なぜか携帯2台持っていて、バイトしていないのに全部自分で払っているとかね。どうなっているのとか、そんな話しながら。そのときに、知らない世界ってあるなと思いました。とにかく知らない世界を知らなきゃだめだなと。

そこから本と雑誌は、目について迷ったら買うようにしました。本の投資はぜったいいる。どうしようか、止めようって結構あるじゃないですか。そうしたら買う。あとはデパ地下で並んでいるものは、基本的に並ぶ。街で配っているチラシは全部取る。これはやれることなんで、やろうと思って。あとは、昨年9月に広島に行ったんですね。週末にいると、今日は西に走ろうとか、東に走ろうとか。もともとは引きこもり系だったので、あまり外は好きじゃなかったんですけど、尾道に行ってラーメン食べて帰ってくる。片道200キロを尾道に行ってラーメン食べて帰ってくる。そういうのを普通にやっているんですよ。あと、山の中のパンやがおいしいと雑誌に載っていたから、パン屋にパンを買いにいこう。500円のパンを、往復3時間かけて買いに行って戻ってきたり。そういう好奇心とか感度というものは、マーケターとしてはマストです。

あともう1つは、これはちょっと偏見が入っていますが、ことに食品のマーケターは料理しないとだめだと思います。開発のベースが何をやっているかというと、スーパーで買ってきて、それを練り込んだりするわけですよ。例えばベーコンを買ってきて自分で包丁で切って、フライパンで炒めて油をティッシュで拭いて、それを乾燥機に入れて乾燥させて、生地の中に入れたりということを普通にやるんです。料理の延長なんですよ。

企画なので、素材を知らないと話にならないじゃないですか。えびだって、金沢の白えびがどうだとか、じゃあ桜えびと言ったら、静岡の倉沢がおいしいから、さくらえびのフルコースを、そこに行って食べてこようとか。例えば白えびを知らなければ、当然白えびの商品企画というのはできない話で、お客様は教えてくれない。えびせんのアイデアとしてどういう味がいいですかと言って、えびをワーッと出したときに、白えびを知らなければそこで提案できないし、野菜なんかでも壬生菜を知らなかったら壬生菜のコンセプトって作れないわけだから、それは全部知っておかないといけないんですよね。

そうすると料理することは大事で、じゃあペペロンチーノ味を作るときに、作り方がわからないと、味を再現するのに何を入れていいのかわからない。そういう意味では、食品のマーケターは、とにかく食べ物に興味があって、料理をしてということをしていかないといけない。夜12時くらいに帰って、そこから料理しますからね。別に高いものを食べているわけではないんですが、食べ物は妥協したくないので。



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■監修者プロフィール: 山中正彦 株式会社KSP-SP 代表取締役社長。法政大学キャリアデザイン学部教授。慶應義塾大学工学部管理工学科修士課程終了。上智大学外国語学部比較文化学科修士課程終了。国際ビジネス専攻(1983年)。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン/スクール留学(1983-1984年)。味の素株式会社中央研究所管理部システム室入社(1972年)。味の素株式会社食品開発部専任部長(1993-1999年)。株式会社味の素コミュニケーションズ(1999年)。2003年3月、株式会社KSP-SP代表取締役社長就任。2005年4月、法政大学キャリアデザイン学部教授就任。http://www.ksp-sp.com/


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