ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2005.08.30
マーケタープロフィール

vol.09[04]

 しつこくやる。諦めない

インタビューの後半、ハーゲンダッツ製品のロングセラーを作り出す原動力になっているものを、改めてお聞きしました。うなります。ぜひ最後までお読みください。

Pick Up!

ハーゲンダッツ バニラ

商品育成への視点

左:坂東氏 右:染谷氏

-10年ロングセラーというのは厳しい条件だと思うのですが、ハーゲンダッツでも、最近のアイテムで長生きする率というのはどのくらいなのですか。

染矢:新商品ですか? 新商品は、最近シーズンセレクション、季節限定という出し方をしています。例えば春夏ですと、マンゴー&ココナッツというのを出しています。それを9月くらいまで。秋の新商品が出るまで出しています。そういうシーズン性を出しています。あと、定番的な部分に関しては、バニラ、ストロベリー、クッキー&クリーム、グリーンティーは10年。グリーンティー以外は20年。同じフレーバーで全く味も変えていませんし、ずっと発売しています。その中心的な4アイテムの後に、過去に新商品だったもの、例えば2~3年前に新商品で、今でもずっと売り続けている商品もあります。バニラほど売れ行きはないのですが、そこそこお客様の支持を得られている商品というのがその後に続いています。フレーバーで言うと、アズキ。アズキは2年前か。リッチミルクも2年前なんですよね。そのもう少し前になると、マカデミアナッツとか、ああいうのもずっと発売しています。マカデミアナッツも10年くらいになるのではないですか。中心的な4品があって、そのちょっと後に定番の商品があって、その商品群を中心にして、新商品を季節限定で出しています。消費者の方は新商品を発売するとすばやく反応してくださいます。でも、新商品も最近はかなりたくさん発売しているので、どうしても目移りされてしまう傾向があります。それは我々もわかっていますので、それなら例えば春になるとハーゲンダッツの新商品のセレクションが出る、いつもの安心できるシーズンセレクションの新商品がきたねと。冬だとラムレーズンというのも秋冬の限定なんですが、もう10年近く発売しています。フレーバーの特性で季節を決めて、それを毎年出していくというのも、商品を長生きさせる1つの方法ではないかな。

-秋冬を出して、次の秋冬を出そうとするときに、新商品の話で言うと、短期間で芽が出なければバッサバッサという傾向がありますよね。御社が店頭をがっちり確保できているというバックグラウンドがきっとおありなのだと思いますが、この商品を育てていこうということで力を注がれていますか。

染矢:うちはどちらかといったらしつこいですね。なかなか諦めない。

-それは、先ほどの「担当者がしっかり見ているから」につながりますか。

坂東:何でしょうね。やはり最初の頃からの伝統的なものではないでしょうか。最初はフレーバーが少なくて、それをゆっくり売っていったという流れの中から、だんだんサイクルが早くなっていますが、基本はそういうところから入っていると思います。

染矢:社風の部分がありますね。ショップからスタートして、売れ筋商品を出して。工場も小さかったので、そんなに新商品がなかったんですよね。その代わり、ある物を大切に売っていこうと。我々社員はたぶん、自分のところの商品が結構好きな人間が多いんですよ。自分なりの思い入れ、それぞれに思い入れがあるんですよ。開発者も思い入れがあるんですよね。営業も、苦労してこの商品をどこかのチェーンに入れたなという思い入れがありまして、それが結構社風になっています。営業の方も思い入れを持って活動しているというのが、伝統的に根付いている販売手法なのかなと思います。だから、ダメだったから、や~めたというのはないですね。

-あまりいかないねという場合に、次のシーズンまでに小さなリニューアルを加えていくということはしていらっしゃいますか?

坂東:リニューアルはしていないです。例えばグリーンティーだったらこの味が一番ハーゲンダッツのグリーンティーとして受け入れられる味だという確証というか、これでいいなと思えるところまでやって出すことになっているので、発売したら基本は変えないです。それはもともと親会社の方針で、ブランドのポリシーとしてあります。例えば日本でそれを出したとしたら、他の国でも同じレシピで出さないといけないんですね。簡単にレシピを変えてはいけないことになっているので、変えにくいということもあります。だから、ほとんどそういう小さなリニューアルはないですね。

見えない品質管理

染矢:基本的な味は変えません。例えばグリーンティーが、今は好調に売れていますが、売れなくなってきたら、ちょっといじくって出そうというのはないですね。出すのだったら全く違うグリーンティーになるのではないですか。

-アイテムを増やすということで味覚の変化に対応しているということですか。

染矢:そうですね。開発する段階で、これは物珍しくて、トライアルは多いけど、リピートは少ないなというのはあるんですよね。そういうのはシーズンセレクションで発売します。でも、どちらかというと開発の傾向は、長持ちするようなフレーバー、飽きがこないようなフレーバーになります。

-バニラというのは相当普遍的な味なのですね。

坂東:そうですね。

染矢:ただし、バニラに関しても、レシピは変えていますが、見えない品質管理というのは、やっています。

-見えない品質管理とは?

染矢:例えばバニラビーンズを栽培している所に行ったりします。我々の基準であるミルクとか、副原材料が届くように、きっちり品質管理をしている。例えばイチゴだったら、農作物なので、ヘタとかが入ってしまったりしますが、そういうのは、現地まで行って、検品する手法をうちの方から提案し、変えてもらって、ご指摘を無くすような努力もしています。レシピ的には何も変わっていないように見えるのですが、その裏ではいろいろなことをやっています。

品質とブランド

染谷氏

-品質に関するこだわり他に、ロングセラーになっている理由は、何がありますか。

染矢:我々は、馬鹿みたいに、品質とブランド、品質とブランドと言ってきていますね。

坂東:そうですね。

染矢:さっきも言いましたが、しつこいんですね。品質、ブランドというのをずっと言っていますし、毎年全社の方針発表のときも、まず品質とブランドなんですよ。それはずっと一貫していますね。だからこれといった目新しいものはないですね。

坂東:そうですね。ないですね。

染矢:何かあったら品質とブランド。ただ、やり方はいろいろ変わっていますよ。新聞等でも出たと思うのですが、「品質キャラバン」というのがあります。アイスクリームというのはデリケートな商品ですので、例えば流通の現場の方で1回溶けると売り物になりませんよね。1回溶けてそれをもう1回冷蔵庫に入れてしまうと、とんでもなくおいしくない商品になってしまいます。夏の暑いときには、そういう指摘がお客さんからあります。お客さんが暑い中、30分歩いて持って帰って、溶けたのを冷蔵庫に入れたという場合もありますが、例えば店頭で冷凍ケースが壊れていたとか、そういうケースもあります。でも、アイスクリームというのは、1回溶けたらおいしいものではありませんし、お客さんは1回再凍結した商品を食べてしまうと、当然2回目はなかなか食べないんですよね。そういうことを、「品質キャラバン」というキャラバンを組んで、スーパーなどの流通であるとか、問屋とか物流会社とかに、訴求してまわっています。1年中、北海道から九州まで。例えば問屋さんだったらトラックが帰ってくるのが夕方の6時くらいですが、その時間にうちのセールスと品質保証部の人間が行き、プロジェクターを持っていって、パソコンを立ち上げ、「アイスクリームの品質」、「ハーゲンダッツの品質」について、30分か1時間くらいずっとやるんですよ。それはもう2年くらい前からやっています。新聞にも取り上げられたんですが、あと3件か4件で、47都道府県全部になります。それは流通であったり、問屋さんであったり。馬鹿みたいに同じことをやっています。うちはしつこいんで。

-しつこいって大事なことですね。

染矢:言うのは全国同じことで、アイスクリームというのは、とてもデリケートだということ。うちのなめらかさというのは、アイスの中に入っている氷の結晶が限りなく小さいことからきています。再凍結すると、氷の結晶が大きくなる。大きくなるとザラザラする、ザラザラするとおいしくないというのをずっと繰り返して言っています。だからお店でも、問屋さんでもきっちりしたいんですね。でも、初めはいやがられたわけです。何でお前らに言われなければいけないのか、こちらはプロだぞというのがありました。でも最近はだいぶご理解いただけるようになりました。時代環境としても「品質」が結構注目されて、大事なファクターになってきていますよね。だから最近は結構感謝されている。それはもうずっとやってきたことですが、それくらい品質ということにはこだわっています。その品質を保っていることで、ロングセラーになったのではないかと思います。広告マーケティングとか、そういうのではないんですよね。もちろんマーケティングも必要なのですが、その根底にあるのは、やはり品質です。

-品質キャラバンでは、何かお願い事をするのですか。こんな風に扱ってくださいとか。

染矢:当然あります。

-向こうが感謝するようになったというのは、どういうことですか。

染矢:例えば、品質でずっとやっていたら、そこのお客様からのご指摘というのが当然あります。アイスクリームってこんなにデリケートな商品だったんだと、改めてわかるわけです。キャラバンで行った時に、わざと再凍結したアイスクリームを食べさせるんです。それと普通のアイスクリームと。こんなに味が違うでしょうと。

-コンシューマーになってもらうんですね。

染矢:そうです。初めは本当に煙たがられていたのですが、最近は本当に理解されています。それもブランドの中では大事なファクターではないかと思っています。

-キャラバンはどのくらい続いていらっしゃるのですか。

染矢:3年前からやっているのですが、本格的に全国をまわりだしたのは2年くらいです。

-数年かけて横断しているということですか。

染矢:例えば来週、北海道から来てくれと言われたら調整して行き、極端な話、次の日は福岡だよと言われたら福岡に飛びます。順番にではなくて、向こうのスケジュールに合わせて行きます。うちのセールスがプランニングして、担当者が行きます。セールスが言うよりは、専門家が話をした方がわかりやすい。でも、こじんまりした所では、セールスも勉強して、セールス自身で行くようになった。これは手弁当で行きます。うちはそういう地味な会社なんです。派手な会社っぽく見られるんですけど、地味だよね。

坂東:地味ですね。

染矢:だけど、それがやっぱり1つの秘訣なのかな。

-地味というのは、やっていることが、という意味ですか。

坂東:そうですね。地味な活動の積み重ねではないでしょうか。広告で見える部分は、それなりの華やかさも必要だと思うので出していますが、広告でいいことをやっていても、実際に後が着いてこなかったらすぐわかりますので、支える部分に注ぐエネルギーの方が、たぶん大きいのではないかと思います。

染矢:断片的な部分では、コマーシャルなどがハデで会社自体もハデに思われがちですが、その中身は本当に地味な活動です。

-活動が地味。人柄はどうですか。

染矢:人柄はいろいろありますね。地味な人間もいますし、派手好きもいますし、ちょっと変わっている人間もいますし。

坂東:風土として派手ということはないですよね。変わった人はいるかもしれませんけど。

染矢:一人の天才マーケターが引っ張っているような会社ではありませんし、グリコさんのポッキーみたいに一人の天才開発者がいてムースポッキーを考えたとか、そういう話でもありません。チームワークでやっている会社だと思います。よく我々、「チームハーゲンダッツ」と言います。ショップのときから。「チームハーゲンダッツ」というジャンパーを作ったことがあるくらいです。作業するときですよ、私服ではないですよ。「チームハーゲンダッツ」という言い方が社内でも頻繁に使われるくらい、チームワークの良い会社だと思います。チームワークで仕事をする。開発も当然チームワークですし、僕は企画なのですが、企画は当然マーケとチームワークでやらないといけませんし。「チームハーゲンダッツ」という言葉が好きなのかな。チームワークで仕事をする会社だと思いますね。

-いいですね。

染矢:そうですか。何かあったら「チームハーゲンダッツ」と言うよね。

坂東:そうですね。割とその言葉が定着しています。開発のメンバーも、R&Dの方も、全体的に年代が若いんですね。20代後半から30代の頭くらいがほとんどなので。

-平均年齢も30才くらいですか。

坂東:会社としても、30才ちょっとですよね。

染矢:34~35才じゃないかな。

坂東:特に開発は若手が多いので、誰かが突出しているというよりは、それぞれが協力しあってやっているという含みが強いと思います。

-見かけと中が、ずいぶん違うんですね。見かけと言っても僕らが言う見かけはたぶんCMだと思うんですけどね。

染矢:CMは意図的に作っていますので。

坂東:社内があんな会社だったらいやですよね。(笑)

染矢:いやでしょう。手でアイスクリーム食ってたらね。あれはあくまでもハーゲンダッツモーメントを表わすための、一番わかりやすい手法なのかな。

-CMのイメージみたいなものを地味な活動をやっていらっしゃる方達が考えるときというのは、広告代理店の提案がよかったのですか。要するに地味な活動をやってCMをというと、割と堅実で、もう少し地味なCMかなと思うのですが。

染矢:一人一人は地味なんですが、ハーゲンダッツモーメントがあります。昔からショップの前にみんな並んでいただいたときとか、一番初めにコマーシャルをやったときはあんな感じで。創業当初からイメージ的には、ああいう風なイメージだったんですよね。そのイメージを急に変えたら、ロングセラーの商品もあったものではないので。創業当時に、ああいう風なイメージでいこうという部分がありました。お付き合いの長いところが多いので、代理店もあまりコロコロ変えないんですよ。パートナーとして長いお付き合いをやっていただいていますので、ハーゲンダッツの歴史観とか、ハーゲンダッツの考えていることとか、訴えたいことは、割とコミュニケーションよく伝わっています。ただ、商品によってはいろいろなブリーフィングをして、この商品はこういうコンセプトなので、こういうイメージのコマーシャルでと、コマーシャルによって、最近は変えています。ただ、基本的なイメージは同じです。一人一人が地味というよりも、地味が普通ですよ。

-CMのイメージと社風が全然違うところにありますが、矛盾は感じないということですね。

坂東:それはないです。

染矢:それは全然ないです。みんなそういうものだと思っています。しつこくやってきたので。あまり違和感はないと思います。



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