ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2005.06.07
マーケタープロフィール

vol.07[01]

 カルピス酸乳への着目

「The Marketer」を始めるに当り、ロングセラー商品の条件として10年をひとつの目安に考えてきました。しかし、インタビューを続けていくうち、10年といえども、安泰を約束されるわけではなく、それはまた次の10年の商品力をつくれるかどうかの節目でもあることを知りました。特保商品のさきがけとも言えるアミールSですが、今回この商品がどんな課題に直面し、どう乗り越えようとしているか、お聞きしていきます。

Pick Up!

アミールS

中間原料への着目と研究

喜山:アミールSの開発背景を教えてください。

安本氏

安本:アミールSはプロダクト・アウトの商品なんです。もともと、私たちはコンクと呼んでいるんですけれど、濃縮タイプの「カルピス」を売ってきました。その一方、濃縮タイプの「カルピス」の中間原料で、カルピス酸乳というものがあるんですが、その生理機能に興味があってずっと研究していました。そもそもで言えば、創業者の三島海雲がモンゴルを旅したときに、モンゴルの現地の方に発酵乳を飲ませてもらったんです。それを飲んで三島は体が元気になるのが分かったんです。三島は滋養強壮効果があることに気づいて、そこにヒントを得て日本に帰ってきて作ったのが「カルピス」でした。「カルピス」は「おいしい」というイメージがあると思うんですけど、そもそもは「身体にいいものを国民に広めよう」というのが出発点で開発された商品だったんです。発売は1919年の7月7日でした。

その時のパッケージには「滋強飲料、美味整腸」と書いてあります。「カルピス」は今でこそ、「健康」というよりは「味の美味しさ」で売っていますが、もともとは「滋養強壮」プラス「美味しさ」をコンセプトにしたものだったのです。でも時代の流れのなかでどちらかというと、美味しさの方に特化してきました。ですから美味しさ以外に滋養強壮についての理論的な解明も研究の対象になりうると考えたのです。そこでわれわれが目をつけたのが、「カルピス」そのものではなくて、その手前の創業者が飲んだものに近い、すっぱい乳、酸乳という中間原料でした。

喜山:いつ頃から研究は始めたのですか?

安本:ずっと研究をしていましたが、きちんと開始したのは1972年頃です。乳酸菌の働きや「カルピス」が体に与える影響について調べました。そして8年後の1980年のマウスの実験で、寿命の延長効果があることが分かったのです。そこから、これは本格的にやろうということになり、なんで寿命が延びるのかということを調べていくと、どうも循環器に関わる病気が減ってマウスが長生きしているのが分かりました。さらにその流れの中でずっと調べてきたら、血圧降下作用もあったんです。大発見ですよね。創業者が出会って「カルピス」に入っていた乳酸菌の働きの一つに、血圧という測れる指標で効き目が分ってきたのですから。これが1982年です。

喜山:純粋な研究の産物だったんですね。

安本:そこで、カルピス酸乳の何が効いているのかもっと研究を進めました。カルピス酸乳は、脱脂乳にカルピス菌を植えて発酵させてできるものなんですが、その過程でできるVPPとIPPという2つのペプチドがどうも効果があるということが分ってきました。われわれがラクトトリペプチドと呼んでいるものです。さらに、色んな乳酸菌がありますけれど、カルピス菌が持っているタンパク質の酵素だけが、このペプチドをうまく分解するんです。これは独自性がありますし、血圧を下げる効果もわかっている。こうなれば当然、製品化したくなります。

そこに特定保健用食品という制度ができて、食品でもちゃんとした有効性、それから安全性を証明すれば、「血圧が高めの方に」と言えるようになりました。今までは食品では決して許されなかった、ある程度具体的な表現も認められるという制度の改革もあり、タイミングも合致したのですね。

先行したカルピス酸乳

喜山:それが「アミールS」ですね?

安本:実は、アミールSの前に「カルピス酸乳アミール」というのを出しています。1997年だったでしょうか。それは血圧に特化しないで、カルピス酸乳は元気が出るいいものだということが分りましたからそれを売りにしたんですね。「モンゴル酸乳アミール」という名前で、1996年、はじめに九州地区でテスト販売をして全国発売に移りました。

喜山:「アミールS」の姉妹版のような位置づけでしょうか?

安本:いいえ、「カルピス酸乳アミール」は、特保を取っていませんし、別のものと捉えていました。

特保商品としてのスタート

安本氏

喜山:その上で「アミールS」を出されたわけですね?

安本:そうです。1997年の6月に特保の許可が下りましたからその後に出しています。

喜山:「カルピス酸乳アミール」と「アミールS」は、並存したのですか?

安本:「カルピス酸乳アミール」は終売しました。

喜山:「カルピス酸乳アミール」は「アミールS」の前身という位置づけではないですよね?

安本:そうではありません。「カルピス酸乳アミール」は、「身体にいいから摂りましょう」と謳っている通り、ターゲットは広いわけです。ところが、「アミールS」は「血圧が高めの方」がターゲットですから、自ずとターゲットも狭くなります。「カルピス酸乳アミール」は、特保の対象とは考えずに出していますし。われわれとして「アミールS」に力を入れていこうと判断したわけです。結果として、幅広い層へはあまり浸透しなかったですね。

喜山:「アミールS」はどういう意味ですか?

安本:「アミール」は、モンゴル語で、発酵するとか、蘇るとか、そういう意味があります。「S」は、スーパーとかスペシャルの「S」です。ふつうのものより優れていることを表したかったわけです。発売日は、1997年の7月7日でした。

喜山:もともとの「カルピス」と同じ七夕ですね。

安本:ええ、それだけ社内の期待も大きかったのです。



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