ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2005.05.31
マーケタープロフィール

vol.06[04]

 マーケティングは恋愛に似ている

次の「植物物語」の物語を担う丸山さんに、開発マーケターとしてのプロセスと開発マーケティングに求められるものを伺いました。

Pick Up!

植物物語

考えたことをわかってもらうのがマーケティング

喜山:丸山さんはどういうプロセスを踏んで来られたのですか?

丸山:開発研究を経てマーケティング部門に来たのですが、最初に、リサーチ部門へ配属されました。その時、発売当初の「植物物語」の調査も担当したんです。ですからこのブランドへの思い入れも強いんですかね?「植物物語」の石鹸の次は、どんなカテゴリーに広げていけばいいかという調査をしました。そう言えば、その時に、「次の「物語」をつくらなきゃいけない」という提言をした覚えもあります。それが今、自分に降りかかってくるとはって感じですかね(笑)。

次に、商品企画に行って「オーラルケアの商品企画」を5~6年、担当しました。そして3年前から今のビューティケア事業部に来ています。

喜山:マーケティング部門に来るまでの典型的なプロセスはありますか?

丸山:当社では、営業部門を経験してからマーケティングに来る人と、研究開発部門からやってくる人に分かれます。大きくは文科系と理科系の二つの経路と言ってもいいかもしれません。現場を経験した上で、マーケティングに来いという流れだと思います。ただ、これからを考えると、マーケティングを体系的に学ばせるような体制があってもいいかなと思うこともあります。たしかに、現場を知ってることは重要だと思うんですが、マーケティングに求められる要件って、経営から生産、知的財産、流通政策まで、かなり多岐に渡るようになっている気がしますからね。

喜山:出身母体はあまり関係ないですか?

丸山:もはや、ないかもしれませんね。それじゃどういう人がマーケターに向いているかというと、マーケティングは恋愛に似ていると思っているので、恋愛上手な人が向いているかもしれません。

喜山:恋愛ですか?(笑)

丸山:僕は、思ったことや考えたことを伝えて、人を動かすことがマーケティングだと考えています。恋愛も好きだという思いを相手に伝えて、相手もそう思ってくれたら恋愛は成立するし、伝わらなかったり相手の思いを得られなかったら失恋しますよね。失恋すると、どうしてだろうって落ち込みますよね。どうしたら、自分の想いを受け止めてもらえるだろうって考えますよね。だから、そういう対人関係の経験(つまり、失恋経験)がたくさんあった人が、マーケターに向いていると思うんですよ(笑)。だいたいよく言っているのが、あんまりね若い頃にモテモテだったってのはダメだよと。むしろ、失恋を多く体験していて、でもちゃんと彼や彼女がいるとかね(笑)。そういう人の背景にはきっと努力があるわけですよ。

喜山:失恋してこそのマーケターですね(笑)。

丸山:実際、マーケティングの現場で、お客様に分ってもらうことの難しさを痛感しています。自分たちの考えたことや想いを宣伝やプロモーションに施策化しますが、それが最終的に消費者に伝えきれない難しさですね。施策がひとりよがりなものになっていないか、ということです。

喜山:ロングセラーの「植物物語」ですから、もっと順風満帆なマーケティングを安易に想像していたのですが、常に分ってもらう課題はあるのですね。

丸山:「植物物語」は長いでしょう。長く続いているブランドを復活させるというのは、ある意味では、新たに女の子を口説くより難しいわけですよ。例えて言えば、いまの奥さんに対して、一度失った信頼を取り戻すというかね。それに近いわけですよ。

喜山:いや、失ってないと思いますよ(苦笑)。

丸山:実生活は別にして(笑)、想像してみてくださいよ。マンネリでやや冷え込んだ夫婦だとして、もう一度恋愛関係に持って行こうというんですから...相当に難しいんです。「そもそも私のどこが好きなの?」って聞かれたら、即答できなかったりしますから(笑)。

喜山:説得力ありますね(苦笑)。

丸山:そういう意味では、ロングセラー・ブランドを維持するのは一番、難しいと思いますよ。

喜山:ああ、リニューアルの難易度は高いと聞きました。どこをいじっていいか、いけないか。

丸山:そうなんです。よかれと思っていじったら取り返しのつかないことがありますから。

打たれ強くてこそのマーケター

丸山氏

喜山:マーケターに向いている資質というのはあるのでしょうか。

丸山:ぼくはね、マゾ体質じゃないかと思っています。

喜山:打たれ強いということですか?

丸山:打たれ強いというだけじゃなくて、それ(打たれること)が好きだという位じゃないと(笑)。だって、製品開発やマーケティングは、うまく行くのは全体の1~2割あるかないかですからね。うまくいかないことの方が多いわけです。その度に各方面から、どうなっていると責められるわけですから。"マゾ体質"、意外とこれは共感してくれる人、多いと思いますよ。

喜山:なるほど(苦笑)。でも、マーケティング部門は一種の憧れといいますか、行きたい部門でもありますよね。

丸山:メーカーですから一度は、商品に携わりたい人は多いでしょう。でも社内では、半分は大変そうだなぁと見られていると思いますよ(苦笑)。モノがよければ売れるというものではないし、かといってモノは良くなければいけないし、その辺が難しいです。

花火大会の興行師

丸山氏

丸山:今のマーケティングは、イベンターに近いところありますね。新しいモノを作ればいいってものじゃないから。モノを出しながら、店頭でどうやってムーブメントを作っていくか、お客様や流通を常に刺激していかなければなりません。モノづくりを知っているだけでいいというものでもないし、店頭の現場を知っていればいいというのだけでもない。全体を把握してなければならないんです。その意味で、マーケターは花火大会の興行師みたいだなぁと思うんです。イベンターとかプロモーター的な動きが必要なのかなと思います。

喜山:どういうところがですか?

丸山:火大会の成功には何が重要でしょう?もちろん、花火ですよね。花火がないと始まりません。でも、花火がよければ人が集まるかというと、今やそういうものでもないでしょう。隅田川花火大会とか、東京湾大華火祭とか、どんな場所で、いつ、どんな人を集めて大会をやるのか、シチュエーション設定が非常に重要になってきていると思います。花火作りに没頭しているわけにはいかないんです。場所も探さなければなりません。それに花火大会はそこに人が集まらなければ話になりません。

喜山:製品づくりと販売ですね。

丸山:一番大事なのは、その次の年もお客さんが来てくれるかどうかということなんです。そういうトータル的なことが求められる気がするんです。

喜山:また、来たいと思わせなかったら、興行が成り立たないということですね。その場限りではなく。なるほど。丸山さんが参考になったテキストはありますか?

丸山:マーケティングと関係があるかどうか分らないですけれど、TBSブリタニカ(現、阪急コミュニケーションズ)から出ている『アイデアのつくり方』と個人的に大好きな小室直樹の『超常識の方法』(祥伝社)です。「アイデアのつくり方」って本に書いてあったのは、色んな情報を集めて、一回頭のなかで寝かす時間があって、あとは寝て待てば、神様が降ってきてアイデアを出してくれるって。でも、アイデアを出してくれるかは保証の限りでないとあって、ふざけるなと思ったけど(笑)、でもそういうことだと思うんですね。それから、マーケティングを考える上で、ルールを極めた上でルールを破るというようなことが大切ですね。「知っての狼藉か」と同じで、知った上で違うことやるのがポイントだと思うんですが、そういう点で『超常識の方法』は、とてもためになりました。

喜山:新しい「植物物語」のスタートという意味でとても大切な春ですね。

丸山:はい。何とか順調に立ち上がっています。今流行の言葉でいうと、想定の範囲内です。もともと、ブランド価値を再発見、再認識してもらおうというプロジェクトですから、道は遠く決して平坦ではないと思っています。地道な店頭活動を通して、お客様や流通に我々の思いを伝えていく覚悟でやっていきます。




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