ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2005.05.24
マーケタープロフィール

vol.06[03]

 21世紀の新しい価値の創造

1992年、時代を先取りするように市場にデビューした「植物物語」がどのように課題を持つに至ったか。丸山さんに伺ってみます。

Pick Up!

植物物語

家族・ユニットへの回帰がやってくる

丸山:90年代の後半になると、「自分にとっていいこと」というように、付加価値を加える方向に市場は動いていきました。「ラックス」や「アジエンス」に代表される女性個人(OL層)をターゲットとした商品が伸びていきます。個人の時代と言えるかもしれません。そこで、「植物物語」が市場とミスマッチを起こし始めたのです。

喜山:時代と合わなくなったということですね?

丸山:21世紀に入って、我々は「植物物語」が持っている「安心・安全・やすらぎ」という基本価値がもう一回、見直されるのではないかと考えています。「パーソナル」に対する価値がひと回りして、「家族・ユニット」への回帰が必ず起こると予測しています。意外と家族は大事にされてきていると思うんです。我々の調査では、生活者は必ずしも個人であることを求めているわけでもない、という結果が出ています。この5年間で家族と一緒に過ごす時間が増えたという人が35%を越えてきています。どんどん個族化するかというと、そうではなく、もう一回、前と同じじゃないけど、違う形で家族を大事にするようになっているし、家族のことを考えて商品を買うようになっていると思います。それから、家族とか家族生活に何を求めるかといえば、「ほっとすること」「リラックスすること」という回答が返ってきます。もっと、「便利なこと」とかそういうのが来ると思っていましたが、違うんです。だから、もう一回、「安心・安全・やすらぎ」に回帰すると考えています。

喜山:そこに「ユニット」とあるのは、従来の家族だけではなく、という意味ですか?

丸山:そうです。「家族」といっても、従来の家族そのままではないかもしれません。お父さん、お母さん、子どもがみんな同じシャンプーを使うかといえば、そうではないですよね。でも、じゃあ全員が違うシャンプーを使うかといえば、それも違うんじゃないかと。「ユニット」は、新しい暮らしの形態というような意味合いで使っています。それも新しい家族の形なのではないでしょうか。現実に、「携帯電話」のようなIT機器にしても、当初は、パーソナルな側面が強調されていましたが、今、見ていると、携帯電話によって家族同士のコミュニケーションは増えていますよね。携帯電話会社も家族に照準したサービスを増やす傾向にあります。特に、今ですと、「お母さんと娘」というユニットが仲がいいというか、双子のような親子と言われたりしていますね。

喜山:なるほど。ユニットには、家族のような新しい組み合わせと家族の中の組み合わせという意味があるんですね。

「ハーブ」という価値の発見

丸山氏

丸山:そこで、「家族・ユニットへの回帰」をもとに「植物物語」をもう一度、見直してきました。

喜山:丸山さんが一番、最初に「苦しみました」と、過去形か現在完了形でおっしゃったのはこの過程のことですね?

丸山:そうです。その見直しの中で、私達は「ハーブ」という価値を見出したのです。「ハーブ」というのは、いまはアロマテラピーなどで「香り」のイメージが強いのですが、もともとは「植物そのもの」という意味です。ライオンには、「生物科学センター」という研究所があるんですが、そこでの研究で、ハーブには高いうるおい効果があることが分りました。植物は動物と違って自分で動けないですよね。だから、植物は生きていくために、自分の中に戦う武器を持っているんです。菌が来たら菌と戦う抗菌力を自分の中で作ったり、砂漠の中でも自ら水を保持する機能を持っているわけです。その中でもハーブは、そういう機能を強く多く持っていることが分かってきました。昔の人々は、それと識らずにハーブを生活に取り込んでいたんですよ。それなら、そのハーブにある機能をひとつひとつ汲み上げていけば、新しい「植物物語」が作れるんじゃないかと考えたのです。

喜山:「植物物語」の素材に改めて着目したのですね。

丸山:はい。植物という素材のよさを最大限、くみ上げることを考えました。そこで、今回のリニューアルでは、「ハーブブレンド」というサブブランドを付けています。サブブランドをつけるのは初めてのことです。

開発研究において、ハーブが持っている色んな機能や効能を、シャンプーやボディソープとか、それぞれのカテゴリーに求められている性能に合わせて最大限にくみ上げてきたつもりです。そういった植物の素材のブレンドにライオンのノウハウも考えも集約されるという想いで、「ハーブブレンド」という名前にしたんです。本当は、「ハーブ・カクテル」にしようかという案もありましたが、「カクテル」じゃあわかんないね、夜のシャンプーになっちゃう・・・って(笑)。ただ、コンセプトの概念としては「カクテル」に近いかも知れませんね。

喜山:植物そのものの意味の「ハーブ」に着目することで、「植物物語」の価値を再発見したということでしょうか。

丸山:サブブランドを付けたということは、何か今までのものに付加したと思われるかもしれませんが、そうではなく、「植物物語」の素材の価値を強調したのです。今回の商品を我々は「植物物語」の第2章のスタートと位置づけているんです。「安心・安全・やすらぎ」という基本価値はもう一回、見直されるだろう。じゃあその時、「植物物語」はどんな風に見直されたいかと考えると、ただ、植物の原料でつくりましたよ、というだけじゃなく、もう少し踏み込んで、「植物が何でいいの?どんなのがいいの?何をしてくるの?」という辺りを掘り下げて進歩させなきゃいけないなと考えたのです。そして新しい時代に向けて、我々ライオンという企業が考えている想いや提案を、こだわりを持って伝えていきたいと思っています。

次の「物語」を築けるかどうか

丸山氏

喜山:新しい「植物物語」ですね。

丸山:そうです。家族のいろいろなユニットに対応できるように、複数のタイプを作っています。例えばボディソープでは基本機能のうるおいに加え、入浴時の気分で「リラックス」「リフレッシュ」「ヒーリング」「ハッピー」をテーマにハーブをブレンドしました。「ハッピー」ではベリーの香りになっていて、小さいお子さんがいる家庭には喜ばれると思いますよ。

喜山:ああ、気持ちが和むような香りですね。ユニットへの対応ということでいえば、女性だけではないわけですね。

丸山:そうですね。いままでは、お母さんが選んで、というのがあったんですけど、今は子どもがお母さんに新しい情報を伝えることもあるみたいですから、「家族・ユニット」の誰にも選ばれるようにしています。男性でしたら、「リフレッシュグレープ」が合うと思います。もともと「植物物語」は中性的なイメージを持っていますから、男性でも受け容れてくれると思っています。たとえば、コンビニでは「植物物語」は男性も選びやすいブランドですよね。

喜山:主なチャネルはどこですか?

丸山:スーパーとドラッグですね。

喜山:最初に、「もう「植物物語」は違うんじゃないの」という流通からの声があるとお聞きしました。今回の提案に、流通の反応はいかがでしたか?

丸山:半々です。なるほどと受け止めてくれたところと、まだまだパーソナルなんじゃないか、というところと。

喜山:価格の下落に対してはどのような提案をされたんですか。

丸山:植物物語の昔からあるブランドで、手頃な価格で求められるという価値も提供していますから、価格はこれでなければならないという強い要請はできないと思っています。ただ、今回は新しい技術・新しい価値を加えた新製品として価値に見合った価格での販売をお願いしています。価格下落への対応は、10年以上続いてきた市場全体の課題なわけですから一朝一夕ではいかないと思っています。ですから、こういうベーシックな商品で地道にやっていくことと、イノベーションする商品なども加えて、マーケット全体で対応していかないと難しいと思います。

喜山:イノベーション、というと?

丸山:たとえば、植物素材の研究をさらに追求した高機能な「植物物語」という商品もあるかもしれません。まあ、その時は「植物物語」という名前でいいかどうかはまた考えますけれど。ただ、「植物物語」という名前を冠しているということは、次の「物語」をつくるということがユーザーへの約束だと思っています。

喜山:丸山さんは何年、「植物物語」を担当されているのですか?

丸山:ビューティケア事業部に来てからですので直接ブランドに関わってからは、3年になります。このブランドは、90年代に時代の物語になったブランドですから、担当してそういうブランドからマーケターに要求されるものの大きさをひしひしと感じています。

喜山:この間、この難しいテーマに取り組んで来られたのですね。

丸山:2003年には、「種(たね)の保水力」というキャッチコピーでリニューアルしています。シーズ発想で出したものでしたが、苦戦しました。「植物物語」に付加価値をつける足し算の考え方ですね。でも、もともと「植物物語」は、「安心・安全・やすらぎ」をテーマにして植物の素材のよさをアピールする引き算の論理でやってきたわけですから、そこに足し算の論理を持ち込んだことが失敗の原因だったと思っています。「種」を持ってきて付け加えましたというように、「足し算」に見えたということです。

喜山:「苦しみました」という言葉には、そういう背景もあったのですね。「植物物語」は、引き算の論理でつくられているから、足し算の論理に走ってもうまくいかないという話はとても説得力があります。

いくつかカテゴリーがあるわけですが、「植物物語」のシンボルになるのは、シャンプーですか、ボディソープですか、それとも。

丸山:ボディソープでしょうかね。家族で使ってもらえるものですし、「安心・安全・やすらぎ」が求められるものとジャストミートしますね。わかりやすいんだと思います。

喜山:そうすると、パーソナルといわれているものがシャンプーだとすると、その土俵で何かをするのではなく、家族にマッチしたボディソープに軸足を置くということですか。

丸山:現時点では、そうです。ブランドのメッセージを最もお客様に伝えられるカテゴリーだと思っています。ただ、ボディソープよりシャンプーの方が市場は大きいわけで、流通はシャンプーを前提として話をしてきます。そういう難しさはありますね。

喜山:そういう困難の中で、新しい「植物物語」が始まっているんですね。

丸山:実際、21世紀型の「植物物語」の「顔」を作れるか、今が正念場だと思っています。事業を越えてライオンの顔にもなっているブランドです。ここ数年、シェアは若干下がってきていますが、認知も高く、愛されているブランドだという実感はあります。実際、いいブランドだと思うんです。そういうブランドを自分たちがダメにしちゃいけない。ここで無くしたら、いいものを自分たちが活かしきれなかったことになります。ライオンは、「環境対応優良メーカー」の上位に選ばれたりしています。その「顔」を担っているのが「植物物語」ブランドですから大切にしていきたいと思います。

最初にお話したように、いまはブランドすら消費されていきかねない時代ですから、きちんとしたストーリー性がないとダメなんです。そういう意味では、「植物物語」のことを考えた時に、キリンさんの「ハートランド」のことを思い出したりしました。ハートランドみたいにするにはどうしたらいいだろうって。そこには消費されないストーリーがあると思うんです。

喜山:私もさきほど「引き算の論理」とお聞きしたときに「ハートランド」と似ているなぁと思いました。「ハートランド」も「もともと」ということに徹底してこだわって、製品の属性を規定していましたから。



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