ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2005.05.17
マーケタープロフィール

vol.06[02]

 「安全・安心・やすらぎ」がマーケティングテーマ

「ブランドすら消費される」という「植物物語」の現在の核心的な課題を前回は教えていただきました。しかし、ロングセラー・ブランドは一日してならず。そこで今回は「植物物語」の来し方について、改めてお伺いしました。

Pick Up!

植物物語

「植物」という素材への着目

喜山:「植物物語」はそもそも何に着眼してつくった製品なんですか?

丸山:「植物」という素材へ着目したんですね。そもそもは「石鹸」から始まったんです。石鹸は出発原料として植物性、動物性、合成のものがあったんですけど、その中であえて、当社が「植物」に着目してつくったものです。当時、この植物原料をつくる工場も作りましたので、それを活かそうという機運もありました。

喜山:「植物」に着目したのはなぜですか?

丸山:それはやっぱり環境問題ですかね。当時は石油の枯渇問題も言われ始めていましたし、安全や安心への関心の兆しも出ていました。ライオンという会社として今後の原料素材を求めたときに、環境的に言っても資源の問題から言っても、「植物」に答えを求めるのがベターだろうということで、こだわって研究を続けておりました。

それで、そういう植物原料をベースとした石鹸ができて、どうやって売ろうかという段階になったときに、植物が素材であることを前面に出すのがいいだろうと考えて、「植物物語」という商品名で出したんですね。

「安全・安心・やすらぎ」がマーケティングテーマ

丸山氏

喜山:素材を前面に、既存にないものを出したのですね。どういう考えから生まれたのでしょう。

丸山:当時のマーケティング・テーマが「安全・安心・やすらぎ」でした。それが素材に着目する視点の背景にありましたね。

喜山:「安全・安心・やすらぎ」ですか。年譜を見ると、92年の出来事には「ジュリアナ東京」とあります。まだバブルの余韻醒めやらぬときですね。その当時に、「安全・安心・やすらぎ」がテーマになりえたこと自体、大変なことですね。

丸山:それまでの右肩上がりが怪しくなって、もっと豊かに豊かにというところから、みんなが見方を変えはじめたときでしたから、「安全・安心・やすらぎ」は新しかったと思います。アンチというニュアンスもあったと思いますね。

喜山:「ジュリアナ」って言っている最中には新しかったんじゃないでしょうか。95年の地下鉄サリン事件と阪神大震災の後は、「安全・安心・やすらぎ」はスタンダードになっていきましたから。「安全・安心」に加えて、「やすらぎ」というのはいいですね。

丸山:植物原料にこだわった製品作り、そしてそれを「植物物語」という日本語のストレートなブランド名にし、それが全体としてのブランド価値の安心感、そして「やすらぎ」というものが、どうも伝わったなという手応えがあったんです。そこで、これをベースにして、シャンプーを出したりボディソープを出したりと広げてきたんですね。

固有名詞で使われる初めての石鹸

丸山氏

喜山:でも、このブランドはネーミングの勝利といいますか、いいですね。

丸山:そうですね。当時、日本語ストレートのブランドって無かったのではないでしょうか。

喜山:「物語」というネーミングの先駆けでもあったんですか?

丸山:たしかに、その後、旅のキャンペーン名にも使われたり、かなり流行りましたね。ひょっとしたら、「植物」というところは、「安心・安全」をサポートして、ネーミングの「物語」というところは、「やすらぎ」や信頼感をサポートしているのかもしれないですね。その当時も100通りくらいネーミングアイデアを出して、どれもピンと来ないねと言ってたんです。新しいことをやるんだから、これで行ってみようと「植物物語」になったんです。

喜山:確信があったのでしょうか。

丸山:高付加価値化で進んでいた時代で、うちで出す商品もそういうのが多かったときですから、導入当初は、多くの新製品の中の一つという位置づけでした。発売したら、非常にお客様に受け入れられて、我々も改めて、そのコンセプトが時代を捉えていることを再認識した、という経緯でした。

喜山:最初に受け入れてくれたのはどの層ですか?

丸山:環境問題に関心を持っていて、「安全・安心・やすらぎ」を支持する層ですね。最初から強い支持母体ができた様に思いますね。

喜山:「植物物語」のブランド名のもと、カテゴリーを増やしてブランド拡張を行なったわけですね。

丸山:最初に石鹸である必然性は無かったのかもしれないんですが、でもライオンという会社がもともと石鹸と歯磨きからスタートしていますから、そういう意味ではね。石鹸というのはひとつのシンボリックな商品であるかもしれないですね。

喜山:ライオンのアイデンティティを背負ってる面もあるでしょうか。

丸山:そうですね。「安全・安心・やすらぎ」ですからね。ブランド自体が、ライオンのアイデンティティにかなり近いかもしれないですね。ベーシックな価値が受けて流通にも喜ばれました。消費者にも、それまではどこのブランドを使おうが石鹸は石鹸だったのですが、「植物物語」の場合、ブランド名で呼ばれるようになったのです。

喜山:そういう意味では、固有名詞で呼ばれる初めての石鹸でもあったわけですね。


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