ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2005.04.26
マーケタープロフィール

vol.05[04]

 新しさを発見し続ける

ロングセラー商品のマーケターは、その商品にどう向き合っているのでしょうか。80年続いて熟知している対象なので、新製品を開発するのでなければ、販促や広告が関心事なのでしょうか。今回は、商品自体への向き合い方もお聞きすることができました。

Pick Up!

キユーピーマヨネーズ

マヨラーは個人的には抵抗があった

喜山:「マヨラー」という言葉がありました。あのマヨネーズの流行現象は市場を後押ししたと思うのですが、嬉しい事態でしたか?

高宮:それがそうでもなく個人的には抵抗がありました。マヨネーズは前回申しましたように名脇役でなければならない。その名脇役であるものが、主役になるような感じがありましたから。マヨラーという言葉もわれわれが仕掛けたものではなく、世の中の流行から出てきた単語です。もともとは安室奈美恵さんのアムラーが発端です。流行とは振り子のようなもので、行き過ぎると必ず今度は逆方向に振れますね。それを考えると、基礎調味料のマヨネーズがブームになることは手放しで喜ぶ事態ではなかったんです。

喜山:マヨラーの人物像はありますか?

高宮:若い人たちが多いという特徴はありました。その人たちは食べ物に対する興味があって積極性があるのでしょう。マヨラーさんたちは、マヨネーズの魅力について自然に学習し、実践した人たちだと思っています。われわれは、油が細かく分散した食べ物が好きなんです。牛肉の霜降、マグロのトロ。そうでしょう?繰り返しですが、マヨネーズには油が含まれていますから、マヨネーズをかけると、どんな食べ物も油が散った形になるため美味しくなるんです。この秘密を自分の舌で発見し、メニューを開拓していった素敵な人たちです。ツナマヨだったり、お好み焼きにかけるだったりという使いこなしですね。

喜山:そういえば、わたしの父親は昭和初期の生まれですが、マヨネーズは食べられない人です。わたしたちはもう何の抵抗もなくマヨネーズは好きでした。マヨラーはそんなマヨネーズを調味料として使いこなして育った世代の子どもたちなんですね。

高宮:そうだと思います。マヨネーズは、サラダと二人三脚でやってきたわけですが、途中でドレッシングという選択肢も出てきました。だから生野菜をマヨネーズで食べる量は減っていきました。でもそういう状況下で、今度は色んな料理にマヨネーズが顔を出すようになりました。外食産業やコンビニエンスで誰しも食べている経験があるのではないでしょうか。マヨラーさんはまさにコンビニエンス世代ですから、全く抵抗無くマヨネーズの使いこなしをしてくれたのでしょう。

コンビニエンスは楽しかった

高宮氏

喜山:ところで高宮さんはマヨネーズの開発マーケターをする前は、どういうステップを歩んで来られたのですか?

高宮:最初研究所に入り、調理食品やソースの開発をしていました。それから、90年代初めはブラブラ社員をやっていましてね。

喜山:ブラブラ社員?(笑)

高宮:いわゆるマーケティングです。当時は、デスクワークしているよりは、街に出て何か新しいアイデアを出すという時代でしたから、街へ出てぶらぶらしていたんです。それから研究所に戻ってコンビニエンスストア関係の仕事もしました。コンビニエンスストアは楽しかったです。

喜山:コンビニを担当して楽しかったとおっしゃる方は滅多にいないと思うのですが(苦笑)。

高宮:コンビニという業界はすごいスピードで動いています。ですからこちらも動いていかないといけない。だから常に躍動感がありました。それにコンビニはトレンドが作ることができると同時に、白黒がはっきりしているので、わかりやすい。自分の想いも形にしやすいし。その後、99年から今の仕事に就きました。

マヨネーズを未知なものと見なす

高宮氏

喜山:今、力を入れていることを教えてください。

高宮:わたしはマヨ・ドレグループというところにいて、もちろんモノづくりを中心にやっていますが、同時に体系的な整理も行っています。

喜山:それはマヨネーズの体系的整理ということですか?

高宮:たとえば、こういうことがあるんです。お客さまから、「天婦羅をつくるときに、薄力粉にマヨネーズを混ぜたらサクサク仕上がるんだけれど、なぜですか?」と、問い合せをいただいたことがありました。

でもわたしたちはそれを知らなかったんです。そこで実際やってみたら、確かにサクサク、からっと仕上がっているんですね。「さて、なぜだろう」と研究所のメンバーが集まって議論するわけです。

サクサクするというのは、衣の水分が抜けるということで、どうしてそうなるのかと。そして実験をして、衣の中で油の粒子が発熱体になって、周りの水を蒸発させるからだということがわかりました。もう1つ、ハンバーグを作るときにひき肉に少量のマヨネーズを加えるだけでとても美味しくジューシーに仕上がることも見つけました。これはデータを整理して学会にも発表しています。

喜山:学会ですか? マスコミ向けにリリースをかけるのではなくて。

高宮:今は、エビデンスが求められるのです。証拠ですね。だから、学会でも発表を行うわけです。もちろん、最終ゴールは、新しい魅力としてお客さまにお届けすることですけれど。

喜山:そうすることで信頼性が増すわけですね。

高宮:先日も研究の結果、サラダとマヨネーズの組み合わせは、脂溶性の栄養素を効率的に吸収することができるということがわかったんです。動物での試験結果ですが、サラダを生で食べるより、サラダとマヨネーズを一緒に食べると野菜の中のβ-カロテンの吸収量を7倍に高まる効果です。

喜山:そうなんですか。そうすると、サラダとマヨネーズの組み合わせは、それこそ戦後に始まっていたわけですから、この間のマヨネーズのよさを再発見することにつながるわけですね。

高宮:そうなのです。そうした成果を体系的に整理していこうとしています。

喜山:80年続いた商品ですから、先入観としてはもうわかりきっているといいますか、「マヨネーズとは既知のものである」と思いがちですが、そうではない未知のものであるということなんですね。

高宮:そうです。それこそ研究者は毎日、新しい発見があるんじゃなかと探しているのです。まだ自分たちの知らない魅力があるんです。

喜山:びっくりしました。そうですか。80年経つ商品を未知のものとみなして新しい発見をしていくのですね。

高宮:そういう意味で、マヨネーズはまだ進化をしている途中だと思うんですよ。

喜山:ああ、そうですか。感銘を受けます。お話、尽きませんが、未知としてのマヨネーズを伺えたのはとてもよかったです。ありがとうございました。


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