ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2005.03.08
マーケタープロフィール

vol.04[01]

 開発、企画、サポートの三位一体

モノだけではなく、コトも「製品づくり」の対象です。今回は、そのコトの「製品づくり」の代表例として『ホームページ・ビルダー』の開発マーケターの加藤さんにお話を伺います。

Pick Up!

ホームページ・ビルダー

エンジニアのアイデアから生まれた

喜山:加藤さん、ホームページ・ビルダーが生まれた背景から教えていただけますか?

加藤:まず、私は、最初から関わっていたわけではないのですが、最近、聞かれることが多くなったので年表を作りました。それを見ながらお話ししますね。

ホームページ・ビルダーは、95年に最初のバージョンが完成しました。IBM版のUNIXをAIXというのですが、ちょうどインターネットが普及しようとしていた初期に、AIXの開発チームのエンジニアの中でGUI作成ソフトのプロジェクトが走り始めていました。

GUI作成ソフトってちょっとわかりにくいかもしれないですね、GUIとは“グラフィカル・ユーザーインターフェース”の略ですが、もうちょっと簡単にいうと、ユーザーがコンピュータを操作するときに接する画面がグラフィカルであること、とでもいいましょうか。今でこそWindowsなどコンピュータの操作がGUIであるのは当たり前のことですよね。でもその頃は、Windowsでさえ95以前のWindowsがようやく出てきた時代で、UNIXもそうですし、インターネットもテキストベースの世界でした。ただ、世の中の風潮は明らかにGUIに向かっていて、UNIXでもグラフィカルな画面遷移を持ったアプリケーションを作ることが必要になるだろう、それにはそのGUIが作れる開発ソフトがまず必要だろう、といってスタートしていたのがこのプロジェクトでした。

喜山:そのプロジェクトがどのように発展したのでしょうか。

加藤:Mosaicってご存じですか? 米国の国立スーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)で開発された、世界初の画像表示可能なWebブラウザです。Netscapeの前身ともいえます。インターネットで画像情報が扱えるようになったわけですから、本当に画期的でした。インターネットが広がる大きなきっかけとなったといわれています。で、話は戻りますが、先ほどのGUI作成ソフトのプロジェクトに関わっていたエンジニアの一人がこのMosaicの登場に触発されましてね。「じゃあHTMLでGUIを作れないだろうか」ということで試行錯誤を始めたんです。その結果、生まれたのが、ホームページ・ビルダーなんです。最初はAIX版で。

喜山:えっ、ホームページ・ビルダーって、HTML作成ソフトですよね。それなのに、HTMLを作るのではなくて、HTMLで何かツールのようなものを作るということですか?

加藤:両方といいますか、WebイコールGUIという考え方ですよね。最初のホームページ・ビルダー、つまりバージョン1自身も、HTMLでできていたんですよ。自分自身のレイアウトやアイコンを変更できたりしたんです。今思うと面白いことで。エンジニア達もわくわくしながら開発していたそうです。AIX版に続いて、OS/2版、そしてWindows版を続けて開発しました。

喜山:当時はどんな人が使っていたのですか?

加藤:やはり、早期のインターネットに関わっていた人というと、IT関係に携わる人たちですよね。この製品が出て、エンジニア層にはとても喜ばれましたよ。HTMLのタグを打たなくてもWebが作れるから、作業効率がいいですよね。うちの開発者も、自分が使って便利なものを追求し続けていました。

喜山:エンジニアの発想から生まれたんですね。開発エンジニアの方は当然、HTMLは書けるわけですから、Webの制作ツールは要らないといえば要らないですよね。それを作ろうと発想したのは、初めから誰かのために、と意識されていたんでしょうか。

加藤:エンジニアはもちろんHTMLは書けるわけですが、たとえばテーブル(表)などはスクリプトで書くのは実に力仕事でして効率がよくないですから、GUIのツールで済ませられたら自分自身も楽だということもあったでしょうね。でもやはり、インターネットのオープンな精神を生んだUNIXの流れを持つAIXチームであればこそでしょう、世のためになるツールを、という思いが生まれたのだと思います。

喜山:加藤さんご自身はどんな役割だったのでしょうか。

加藤:インターネットに関連するビジネスをしたくて97年に中途で入社しました。ですから、それまで外からホームページ・ビルダーを眺めていたんですよね。最初はコンシューマソフト全般ということでViaVoiceという音声認識ソフトにも関わっていまして、ホームページ・ビルダーを主に担当し始めたのは99年からです。いわゆる製品担当と呼ぶ、製品企画に始まり出荷までのプロセス、出荷後のプロモーションやお客様の声を次への企画につなげるまでの一連を見ている役割です。

喜山:売り始めた当時はどんな市場だったのでしょうか。

加藤:他社も合わせて4~5種類のホームページ作成ソフトがありました。いや、もっと多い時もあったかな。10万円もする競合製品もありましたが、ホームページ・ビルダーは14,800円という、パソコンショップで個人の方が買える範囲の価格に設定しました。当時、すでにOS/2を店頭でパッケージ販売していましたので、そのしくみに乗ってとりあえず販路はスムーズに確保できました。でも売れるかどうかなんて、まったく予想もつかない状況でしたよね。

その後毎年一回バージョンアップを行いながら次第に売上を伸ばしていったのですが、大きく伸びたのは2000年でした。低価格パソコンが次々出てきまして、その一方で、電話回線より速いインターネット接続形態としてISDNが一般家庭に入り始めたりして、パソコン買ったらインターネット、っていうムードが盛り上がりましたね。そうした要素ひとつひとつが大きな追い風になりましたね。

伸びた理由のひとつは三位一体

加藤氏

加藤:それから、これは今日のお話の核心になると思うんですけど、伸びた理由のひとつは、製品企画、開発、サポートがそれぞれいい役割を果たしていたことがあります。

喜山:加藤さん、いきなり核心ですか?(笑)

加藤:はい(笑)。パソコンのコールセンターはもともとありましたから、そこにホームページ・ビルダーのコンシューマー向けのサポート窓口を作ってもらって、そこからお客様の声が上がってくるようにしました。それからその声を吸い上げて、製品をわたしたちが企画して開発に伝える。開発はそれに応えて製品のバージョンをあげる、という三者のサイクルがうまくいったんです。それぞれが小さなチームですし伝達がうまくいったんです。いまでいえばCRMと言うんでしょうけど。

喜山:三位一体ですね。でも、加藤さん。そういう役割分担は、教科書にもよく出てきますし、そうでなければならないという話としてもよく耳にします。うまくいった理由は「小さい」という以外に何があったのでしょう?

加藤:そういう意味では、当時からグループウェアを導入して、お客様の声のDBも構築していて、三者がいつでも声を共有できるようにしていたことは言えますね。わたしたちの場合は、ロータスのノーツですけれども、IT系のインフラがしっかりしていたんです。

喜山:加藤さん。いまで言えば、そうしたインフラは社内共有できているのは当り前になってきていますね。でもそのこととうまくいくことは別で、大抵、耳に入ってくるのは、うまくいってないという話です(苦笑)。それから、こういうアプリケーション・ソフトの場合、開発者は、どちらかというと自分の作ったこの機能「どんなもんだい」の態度で、あまり顧客の生の声については我関せずを決め込むというのもよく聞くのですが、そうでもないということも不思議なことに思えます。ということで、うまくいった理由はもっとあるんじゃないかと(苦笑)。

加藤:開発者自身がお客様の方を向いていたのが大きいと思います。開発者自身が、オタクとまではいいませんが、オタクになるくらいビルダーを気に入って使いながらやっていたんです。私もそうでしたしね。

喜山:開発者自身がユーザーになっていたということですね?

加藤:ええ、それにビルダーのファンでもあったんですね。企画もそうでしたけど。それがあるのかもしれませんね。

喜山:開発チームはおいくつ位の方たちなんですか?

加藤:大和の研究所なんですけど、リーダーは32、3才でプログラムを書いているのは20代のメンバーだったと思います。

日本発の製品であること

加藤氏

加藤:ホームページ・ビルダーは、弊社には他にあまり例のない、日本発の製品なんです。大和研究所で内製でプログラムを書いてきました。

喜山:あ、そうなんですか。言われてみれば、なるほどと思いますが、ホームページ・ビルダーは、日本発の製品なんですね。

加藤:そうなんです。日本の市場を理解しながら作ることができたのはよかったことですね。ところで最初の数年間は、社外よりも社内での認知度のほうが低かったんですよ。さっき申し上げたように、私は中途入社で、入った時にはこの製品をよく知っていたのに、社内では知られていない(笑)。このギャップが面白かったですね。かというと社外では、ヒアリングしてみるとどうもこの製品がIBM製だということが知られていなかったり。「ホームページ・ビルダーって名前はよく聞くけど、IBMの製品だったの?」という具合に。

喜山:ある意味では理想的な認知経路ですね。コーポレートよりプロダクトの方が先んじるというのは。コーポレート・ブランドに依存しないで、プロダクトが普及していったということですから。




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