ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2004.12.14
マーケタープロフィール

vol.01[02]

 『買われるための仕組み』をつくる

「売るための仕組み」ではなく、「買われるための仕組み」とは何を指しているのでしょう。 3つの逆転の発想が語られます。

Pick Up!

ハートランドビール

「ターゲット」という考え方を止める

山田:良くマーケティングでは、「ターゲットの特定」をしますが、ハートランドでは、ターゲットという考え方を止めました。「ターゲット」という言葉自体一方通行の考え方で、そもそもハートランドらしくない。「価値観を共有できる人々」と言う言い方・考え方に変えて、そんな方々と一緒にブランドを育ててもらいたいと考えました。この人達は、デモグラフィックで切りづらい存在で、いわゆるエイジレス、ジェンダーレスであると思っています。

「買われるための仕組み」をつくる

86年にオープンしたハートランド

こうやって生まれた商品の販売の仕方ということですが、ハートランドは、自分で能動的に情報判断できる人と価値を共有するのだから、当然マス広告-マス消費―マス生産という通常のビールブランドのサイクルで売れるものではありません。

今の時代でも良く言うことですが、メーカーの一方的な押し付けではモノは売れなくなっていて、お客様は、自分の主体的な選択によって選んだモノ・コトに対して強いロイヤリティを感じるようになって来ている。また、従来のカバレッジ発想では、ブランド育成ができなくなっているとも。

そこで、ハートランドについては、時間がかかるだろうけれど、商売のもともとである対人・対話に立ち戻って、小さくても確実な核=コアなファンをつくって、それに共感する人がまたその輪を広げていくようなやり方をしていきたいと考えたのです。つまり、「売るための仕組み」から「お客様に買われるための仕組み」への転換を志向したのです。お客様に押し付けるのではなく、「気づいてもらいたい。」「自分にとっての本物を見つけてもらいたい。」ということです。

「買われるための仕組み」として、本物の商品を提供することと、その商品にふさわしい演出を行うこと、推奨してくれる仲間を増やすこと、そして、マス広告ではなく、お客様の主体的選択にかなう情報の提供が必要条件と考えました。

で、そうするために「ハートランド自身を表現」し「情報が貯まって行くところ」、つまりハートランドを飲み交わす「場」=飲食店を通じてコミュニケーションをしていこうと考えたのです。つまり「場」「商品」「スタイル提案」の掛け算でお客様に価値を伝えていこうということです。

六本木6丁目に86年にオープンしたハートランドは、昭和初期の蔦の絡まる洋館をレスタウロという手法で改造したビアホールで、今でいう隠れ家レストランの走りだったような側面もありました。私は入社内定式の二次会でこのビアホールに初めて行ったのですが、それは本当に格好よかったですね。キリンは老舗で、伝統的で、お固い企業というイメージが強かったので、こんなこともやっているのか、という幅を感じて、ますます好きになりました。

ビアホール・ハートランドでは、ハートランドビールや美味しい食事の提供だけでなく、アート展覧会やライブも開催するなど、サブカルチャーの発信拠点のような雰囲気があり、やっぱりどこかとがった人たちが集まる場所のようでした。現在著名になられたアーティストも若い頃、来てくれていたようですし、新しいHEARTLANDを設計いただいた小坂竜さんも通っていたとのことです。

よくコミュニケーションプランを作る場合、私も「それじゃまずテレビを2000GRPで・・・」と言ったりするわけですが、本来、アクションがあってリアクションがあると言うように、双方向的になってはじめてコミュニケーションですから、「素」のビールであるハートランドは、本来のコミュニケーションの意味に立ち返ってみたと言えます。

ビアホール・ハートランドは、狙い通り、受けました。気に入ってくれた人が友達を連れてきて、そこでハートランドを好きになっていただいて、また・・・というクチコミ・パブリシティの連鎖でとても賑わっていました。

Aランクの料理を変える

山田氏

それと、このビアホールは、毎月メニュー変更をしていたのですが、何とABCランク分析をしたうえで、Aランクの料理を変えていたのです。

喜山:Cランクではなくてですか?

Aランクです。これは私には伝聞なので正確にとらえているかどうかわかりませんが、二つ意味があると考えました。

一つは、お客様はもともと飽きるものだという発想からです。たくさん出るAランク商品はお客様にたくさん接触して情報が消費される。だから飽きないように変えるという意味。もう一つは、本来世の中には美味しいものがもっとあるという発想です。つまり、ABCランク分析というのは、売れないものは分るけれど、本当に美味しいもの、売れるものは分らない。世の中にあるもっと美味しいもの、売れるものを探索するために、あえてAランクの料理を変えるようにしていたのです。料理長は大変だったと聞きますがね(苦笑)。単品管理でのABCランク分析、商品の絞込みが売れるための常識と言うような考え方がありますが、このABCランク分析の本来の意味を取り違っている方も多いのではないかと思います。

そのお店も六本木6丁目の再開発計画に従って90年にクローズします。お客さんは多かったので、何度か延期してもらっていたのですが、時間切れでの閉店だったのです。人気絶頂のときにクローズしたわけですから、強烈な残像が残りますよね。そこで行っていた活動が、お客様の心の中に強烈に残り、それでビアホール ハートランドは、「伝説」になったのだと思います。




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