ザ・マーケター
このコンテンツはドゥ・ハウスが2004年12月から2005年10月までマーケターにインタビューし、HTMLメールで配信していたものです。一部、本文中の商品情報やご協力いただいた方々の情報については現在と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。
2004.12.07
マーケタープロフィール

vol.01[01]

 モノの本来の意味を考える

伝説のビール「ハートランド」は如何にして作られたのか。それは時代原理の読み解きから始まりました。

Pick Up!

ハートランドビール

伝説のビール『ハートランド』

いわゆるマス広告を打ったことはほとんどなく、知る人ぞ知るブランドとして愛され、商品に触れた人のクチコミで生きる。もともと商品とはそういうものだという素型あるいは理想型を感じさせてくれるブランドがハートランドです。

ハートランドは、生れて19年目になるビール。86年にオープンした六本木6丁目のビアホール ハートランドは、そこでしか飲めないハートランドを核に、当時、熱狂的な支持を受けるも、再開発計画にあわせて90年に閉店。場を失ったハートランドは一時、低迷しますが、支持者のクチコミでじわじわと成長を遂げてきました。そして、2003年4月、六本木6丁目に再び、ネイバフッド・バーHEARTLANDとして「場」が再生したのです。

今回は、伝説のブランドの第二世代を築いたブランドマネジャーの山田さんと、新しい「場」の副店長を経験された井本さんに、ブランドの引き受け方に焦点を当ててお聞きしました。

ハートランドの時代原理を読み解く

山田氏(左)、井本氏(右)

喜山:ハートランドはどのように生まれた商品ですか?

山田:ハートランドの生まれた時代背景を考えてみますと、開発に着手した80年代前半は、70年代と異なり、モノだけでなく、心、自分にとっての本物を求めるように時代が動いた時代でした。

また、キリンの社内を見てみると、当時、キリンのシェアは安定的に約6割ありましたが徐々に進行する危機が迫っていました。ひとつはキリン離れの危機。「キリン(ラガー)は確かにいいビールだけど、自分達のビールではない」と思う人の増加。そして、もうひとつ、ビールに対するイメージは「風呂上りに枝豆でグイっと飲る」等、ビールが生活の演出シーンに登場することが減り、イメージが画一的となり、かつ関与も減ってきつつありました。いわゆるビール離れがもっと進むと予測されたのです。

この時代、86年の雇用機会均等法の施行、88年のHanako創刊は、飲食の世界ではエポックメイキングであったと思います。従来の、飲食店を会社の上司や先輩から教わる時代から、「情報」で飲食店を選択する時代となり、飲食の中心が女性にシフトするようになってきたのです。そんな新しい時代がやってきつつある時代に開発された商品です。

こうした背景があって、キリンとしてどういうアプローチができるかということで、これはやはり新しいビールブランドを企画したいと考えたのです。その時に行なった時代原理の法則、いわゆるコンセプト・ワークみたいなものがあります。時代がこうなっていくという読み、ですね。私が初めて見た時に、予言の書のようだな、と感じ、それ以来「ノストラダムスの予言」と呼んでいるのですが、

 1)「個」の確立
 2)「能動的」情報判断へ
 3)「感性」の時代
 4)新しい「本物」の時代
 5)「Less is More」、語り過ぎないこと、押し付けないこと

いまはどれもそうなっていると後になって言えるものだと思いますが、こうした仮説をもとにブランドづくりに入っていきました。

コンセプトは、「素」

山田氏

コンセプトは「素」でした。実はこれは私自身も最初誤解していたのですが、当時珍しかったオール・モルトという、素材にこだわったビールだからというだけではありません。これは素(そ)と読むだけではなく、素(もと)とも読みます。素(もと)ということに徹底してこだわっていると言っていいかもしれません。「もと」・・・つまり、原点にもう一度立ち返って、モノ本来の意味について考えようということです。

ハートランドビールは、別の言い方をすれば、モノの本質が見えにくくなっている今だからこそ、もう一度「素・もと」に返って、商品なり、コミュニケーションなり、売り方みたいなことを考えてみようというプロジェクトの意味なのです。

ビールの本場はドイツと言われている。そこでもともとどうつくられているかといえば、麦芽とホップと水だけでつくっている。じゃあ原材料はそれでいこう、と。昔のびんにはもともと派手な色のラベルなんて無いのじゃないか。じゃあ、エンボスを刻んだだけでラベルがないボトルにしよう。樹と大地のデザインもありのまま、もともとの姿をイメージしていますし、ハートランドというネーミングも、「心と大地」で、ほっとした時に戻るもとの場所。ダイヤモンドシェイプのブランドシンボルも、三角形、四角形、円と図形のもともとの要素が全て包含されている。コミュニケーションとはもともと双方向なもので・・・。

とまぁ、こんな風に「素(もと)」をコンセプトにして作っていきました。

こうやってできたハートランドビールは、味覚や嗅覚だけでなく、目に優しいグリーンボトルは視覚を、エンボス部分は触ったときに気持ち良く触覚を刺激しますし、注ぐ音で聴覚を刺激します。五感に訴えるビールが出来上がったのです。飾らないもののすがすがしさ。シンプル、ナチュラル、あたたかさが感じられると思います。

また、余談ですが、樹と大地のシンボルのもとになった絵は、イリノイ州の穀倉地帯を描いているのですが、イリノイって言葉はもともと人間を意味する言葉だそうで、これもまたハートランドらしいなと思っています。

喜山:山田さん。「もともと」を頻発されますね(笑)。

山田:そうなんです。ハートランドに関わって、「もともと」とか「本来」を連呼するようになりました。他の仕事をしていても、「それはもともと、どう言う意味で・・・」「本来これは・・・」とか発想するようになりました(笑)。

その意味では、単なる担当ブランドと言う存在以上に、「ブランド」の意味について、自分のビジネス観、マーケティング観について教育してくれた存在とも言えるかも知れません。




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