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ソーシャルメディアを活用した潜在層マーケティング|「共感」を得ると共に「いかなる人も傷つけない」投稿を|株式会社リクルート住まいカンパニー SUUMO

新生活の季節でもある、春。皆様の中にはこの4月から新たな土地で新生活をスタートされた方もいらっしゃるかもしれませんね。そんな住まい探しの際に便利なのが、不動産・住宅情報サイトSUUMOです。今回はそのSUUMOのサイトのFBページ運営についてお伺いしてきました! 現在ファン数は14万人に迫る勢いで、1投稿への「いいね!」数は1,000を超えることも多い人気ページ。「住まい」という低頻度・高単価商材を、FBページでどのようにアプローチしているのでしょうか?さっそく伺ってきました!

現在SUUMOのブランドマネジメントを担当されている伊藤さん。

FBは、「潜在層」とのコミュニケーション

 

さっそくですが、どのようなきかっけでFBをはじめられたのでしょうか?

実はSUUMOのFBページをスタートする以前、プロモーションについてさまざまな課題を抱えていました。 従来、ブランドプロモーションはCMなどのマス広告を中心に実施していましたが、SUUMOの認知度が上がるのはCM投下時のみで、CMを投下しない時期はゆるやかに元に戻っていく。要はCMを実施し続けないと、せっかく獲得した認知度が保てない状態でしたので、これを何とかしたいという思いがありました。 また、従来までCMは「今まさに住まいを探している」という「検討層」のみをターゲットにした内容で実施していたのですが、実際多くの方にとって「住み替えをする」という行為は人生においても非常に頻度が少なく、特に購入においては一般的に1~2回ですよね。また、賃貸においても引越しは頻繁にするものではないですし、SUUMOが取り扱う「住まい」という商材は典型的な「低頻度・高単価商材」にあたります。 ですからCMを投下しても、大多数を占める「今すぐに住まいを探しているわけではない」という「潜在層」や「成約層」にとっては「自分に関係のないCM」としてスルーされてしまいます。「検討層」だけをターゲットにしたマーケティングはいずれ限界がくる。「潜在層」や「成約層」にどのようにプロモーションしていくかということがテーマとして挙がってきたのです。 一方、自社の強みを振り返ってみると、SUUMOというブランド名については、潜在層の方々でも高い認知度を獲得していることがわかりました。また、キャラクターについては、好意度が高いという数字が出ていました。ちょうどその頃ソーシャルメディアを使う方々が多くなってきたこともあり、ソーシャルメディアとSUUMOのキャラクターを組み合わせることによって、今すぐには住まいを探していない「潜在層」や「成約層」の方々にもブランドのアプローチができるのではないかという仮説を立てたのです。 そこで、2010年10月頃、SUUMOのキャラクターコンテンツを利用する形で、FBページをスタートさせました。

SUUMOのプロフィールは意外なものばかり!年齢10,030歳、地球にやってきた理由は母親に家を追い出されたから…等、「そうだったの!?」という内容が満載です(笑)

※SUUMOのプロフィール&相関図はこちらです
 

2010年にスタートされたとは、FB運営の先がけですね。

とはいえ、ソーシャルをはじめた当初はまだまだ暗中模索で手探り状態。物件情報や住まいに関する記事リンクなど、検討層向けのコンテンツを掲載していた時期もありますが、ファンの方々の反応は弱かったですね(苦笑)。 その頃はSUUMOの公式ソーシャルページがどういうトーン&マナーの場で、そこに来てくださるファンの方々がどういうものを期待しているのか、どういうコンテンツが喜ばれるのか、ということが整理できていなかったのだと思います。 そこに気付いてから、FBの運営を「潜在層とおしゃべりをする」という位置付けにシフトしました。SUUMOブランドとファンの方々とのライトなコミュニケーションの場とすることで、ファンの方々にSUUMOというブランドを身近に感じていただいたり、親しみを持って好きになっていただけるようになったと思っています。

反応がいいのは「キャラクターに対して突っ込みどころのある投稿」。 「いかなる人も傷つけない」という点を留意。

 

なるほど、そういう背景があってFBに住まい探しに関連する投稿がほとんど載っていないのですね!人気の投稿記事にはどんなものがありますか?

最近は特に記事への「いいね!」数が多くなってきて、1記事あたり1,000を超えることも増えてきましたが、人気記事の内容は本当に様々ですね。 1番反応がいいのは、「突っ込みどころのある画像やネタ」です。写真やイラストにこっそり「くすっ」と笑える突っ込みどころを入れておくと、ファンの方々は気付いてくれてインタラクションも高いんです。たとえばSUUMOのマンガで、マフラーの巻き方をハチマキをしめたような巻き方にしてみたところ、「マフラーの巻き方! 笑」なんてコメントで突っ込んでくれたりして。こちらも「あ!気付いてくれた!」という瞬間が1番嬉しいんですよね(笑) また、最近では新しいネタとして地域性、エリア性を軸としたコンテンツ「ご当地イラストクイズ」をスタートしました。自分のエリアが紹介されると喜んでいただけますし、そもそも「住まい」に多少なりとも関係があるネタですので、SUUMOのコンテンツとの親和性も高いのではないかと考えました。ファンの方に飽きられないように、都度仮説を立ててコンテンツを工夫しているところです。 基本的にはイラスト、写真、グラフィックを使用した投稿のインタラクションが高いので、そこに絞って投稿していくようにしています。

4コママンガは去年からスタート。「画像はインタラクションが高いですが、やはり続けていると飽きられてしまうので、画像というベースは保ちつつ新しいコンテンツとしてマンガを始めました」(伊藤さん)

 

投稿の際、心がけていることはありますか?

重視しているのは、世の中のシーズナリティにあわせること。最近でしたらバレンタインやひなまつり、お花見等のイベントと連動させてアップしましたが、やはり反応が全然違います。また、誰にでも共感してもらえるような「鉄板ネタ」を意識することも重視しています。分かりやすい一般的なネタにちょっとだけひねりを入れていく形です。 そしてもう1つ、とても気をつけていることがあります。「誰にでも共感してもらえる」ということに似ていることではありますが、「いかなる人も傷つけない」ということです。ある特定の層の方々にとっては喜んでいただけるネタであっても、違う立場の方々には不愉快な内容である可能性もあるんです。そこは見落としがちですし、難しいのですが…。 要は、想像力ですね。どれくらい相手のことを思いやれるか、気遣えるか、それがソーシャルではすごく重要だと思います。その投稿を見た方がどんな気持ちになるかをイメージしないとブランド離反を招いてしまうことにもなりますし。 そしてあとは日々の積み重ね、ひとりひとりの方と丁寧にコミュニケーションを持って運営を継続して続けていくことが何より重要だと思います。 企業のFBページは、どんな人柄の担当者が運営しているか分からないですけど、できるだけファンの方々には、身近さ、親しみやすさ、といった感覚を持ってもらえたらと思って運営しています。

誰にでも共感してもらえるような「鉄板ネタ」は必須☆

マスメディアとの連携等、新しいことをどんどんやっていきたいですね

 

FBを運営する上で、指標はお持ちですか?

最終ゴールはSUUMOのサービスの利用経験率を高めることです。今、半年に1度ほど行う大規模なプロモーションの前後に調査を行っていますが、SUUMOブランドの利用経験率や利用意向度、好意度などを定量的にはかるようにしています。でも数値の上下には様々な原因があるので、中間指標として、ファン数・ファン層、インタラクション数などもモニタリングしています。 潜在層向けにプロモーションを行った場合、その方々がいつサービスを使ってくれるか分からないですよね。人によっては来月住まい探しのきっかけがあるかもしれないし、他の方は10年後にその機会が訪れるかもしれないし。 そこが潜在層マーケティングの難しいところです。中長期的効果の可視化をテーマにしながら、とにかく継続的なコミュニケーションができるようにしておくのが重要だと思っています。

今後はFBをどのように展開されていきますか?

今後もFBは潜在層の受け口として運営していきたいと思っています。FBではファンになってくださった方々とどうやって継続的にコミュニケーションをとっていくかが課題。これからも同じようなコンテンツだと飽きられてしまうので、新しい仕掛けが必要になってくると思いますが、常に皆様に喜んでもらえるようなことを考えていきたいと思っています。 また、マスメディアとの連携についても考えています。マスメディアはブロードリーチする力はありますが、15秒でメッセージを伝え切るには限界があります。マスでリーチした方々にブランドを体験してもらう手法として、Web上におけるリッチコンテンツや、ソーシャルメディアを活用していく予定です。 ただ、FBのようなソーシャルメディアの制約としては、フォーマットが固定化されている点が挙げられます。ですから、表現力が自由なWebキャンペーンサイトを並行して活用するケースが多いのですが、逆にキャンペーンサイトは、サイトへの誘導CVRの課題もありますし、お客様には新たにユーザーインターフェースを覚えていただく必要性も出てきます。 そこで、最近興味があるのは、Webサイトの広告上で直にブランド体験をすることが可能なリッチコンテンツ領域です。たとえば、バナー上でインタラクティブなコンテンツを体験していただくことができれば、効率が良いのではないかと思っています。

SUUMOたちと伊藤さん。「ソーシャルメディアに関する施策を経営層に理解してもらうことは非常に大切だと思っています。よく『FBを実施することで売り上げはいくらあがったか?』『資料請求は増えたのか?』なんてことを指摘されがちですが、『潜在層をターゲットとした未来への投資です』ということを理解してもらうようにしています。また、弊社では経営層のメンバーにソーシャルメディアの効果を実感してもらうために、例えばゲームコンテンツを開発した際などは、実際に遊んでもらうこともあります。コンテンツを直に体験してもらうことで、定量的な数字だけでは測れない効果についても理解してもらうことができました」

「突っ込みどころのある投稿」「想像力を持って運営する」「マスメディアとの連携」等、大変勉強になりました!ありがとうございました!
取材を終えて SUUMOのゆるい愛されキャラは、まさに「潜在層」のファンとのインタラクションにピッタリ♪投稿記事には「SUUMO可愛い~!」「ドンマイSUUMO!」などのコメントがあとを絶ちません。ちょっとドジなキャラが、ファンに「ほっとけない」と思わせるのかもしれませんね。 そして、「突っ込みどころのある投稿」「鉄板ネタ」「誰も傷つけない投稿」…何気ない投稿に見えて、細部まで気を配っているからこそファンが付いて来てくれるのですね。「共感」と同時に「誰も傷つけない」という難しい投稿も、「想像力」でカバーしている点、とても勉強になりました!ぜひ真似したいです。 また、Web広告のバナー上で体験できるリッチコンテンツ、これは遊びやすそう!今後の展開もとても楽しみです。ためになるお話をありがとうございました! Facebook ケーススタディでは「取材ってどんな風にやるの?とりあえず打ち合わせさせて」「なにかFBで新しいことやりたい。提案してくれない?」等々のお問い合わせをお待ちしています。ぜひお気軽にご連絡ください。