R(R&D)

■台所にあるものだけで作る-作り手のこだわり

裏面を見ていただければわかりますように、えびせんはスナックにしては原材料がシンプルです。とはいっても膨張剤とかアミノ酸とか、いろいろ入れているんですが、もともとの開発のコンセプトは、キッチンにあるものだけで作ろうという考え方でスタートしているので、企画はいいんですけど、開発の人は死にそうになっていました。膨張剤と言っても、クッキーとかを焼くときのイースト、ふくらまし粉みたいなものなんですけど、だからこういう食感なんですね。

今回は、台所にあるものだけで作ろうと考えたのは思いこみですね。代表的な意見ではないんですが、定性調査をやっていく中で、1人だけ、わからない名前はちょっと気持ち悪いと意見があったんですよ。

例えばデキストリンは、スナックとか食品にはよく入っているものなんですが、デキストリンって訳わからないですよね。えびせんには使っていませんが、訳が分からないものを子どもに与えるのは抵抗があることでした。かなり神経質だし、きっちり全部おやつでも何でも自分で作っているというおかあさまで、そういう意味では意識のすごく尖った方なんですが、その人が1人だけ、知らない言葉って気持ち悪いし、それって親がわからないものを子どもに与えてたくないという意見があって、ああそうだよねと思ったんです。

また、そういう層がいるというのは事実ですが、大半の層はそこまで気にしていないんだと思うんですね。というのは、かっぱえびせんブランドとか、カルビーブランドで、基本的には安心感を感じてくれているというのが当然ブランドの強さなので、そこまで気にされていないと思うんですが、ここはもう伝わらなくてよくて、作り手のこだわりなので、膨張剤を抜いてくれと。ただ、今まで40年間こういう作り方をしていたものが、こうするわけなので、開発サイドは地獄でして、今回吉川という人間がやったんですが、ものすごく大変でした。

■吉川がいなかったらこの商品はできていない

うちは単純に言うと、企画、開発、工場と分かれていまして、企画というのは、基本的には顧客ニーズからアイデアを出す部門です。開発というのがそれをものにする部門で、開発が工場に落として、初めて生産になるという構造なんですよ。企画は基本的には、生産ラインとか技術を一切無視してはいけないんですが、無視して、顧客のほうだけを向いて、無理難題を言う。無理難題を言わないとプロダクトアウトの商品しかできないので。そして、開発は、えっ?という世界からやっていく。最初は膨張剤なんか抜いたら膨らまないと言われました。でも、吉川は職人なんですけど、ねばってねばってねばって、今の食感にしているんです。

開発は素晴らしい人間なので。たぶん吉川がいなかったらこの商品はできていないんですよ。普通の人間だったら諦めていると思うんですね。そして、これが一旦できてしまうと、どんどん展開できる。

あと、技術の話で言うと、えびせんは生えびを丸ごとミンチにしたものを小麦の中に配合しています。それから次に、石臼ではないんですが、石臼に近い構造のもので、一旦ミンチにしたものを更にマイクロ単位にすりつぶし、えびとして入れる。そうしないと、えびの細かい粒がこの中に残っちゃうんですね。よく見るとえびせんには黒いところがあるんですが、これはえびの身なんですよ。あとは、時々白いえびの殻とかが入っていたりするんです。でも1才でそれをやるとすごく目立ってしまうのと、殻とかは口溶けにつながってくるので、そういったことは技術的に解決しました。

流通(D)

■チェーンテストですごく売れた

スペックが決まって、さあ売るぞというときに、弊社ではチェーンテストをするんですね。いきなり全国発売しないでチェーンテストをする。カルビーの文化が、売れればいいという発想ではなくて、店頭できっちり売るんだということなんですね。営業は売上げを上げることが偉いのではなくて、店頭で全て新しい日付のものが並ぶのが偉いんですよ。売れるか売れないかわからないものをいきなりバッと広げてしまうと、ある店舗では鮮度がむちゃくちゃ古くなってしまうとかがあるじゃないですか。

なので、必ず弊社のトライアルで、特殊なものに関してはチェーンテストと言いまして、数店レベル、時には数チェーンレベルで、テスト販売を10週とか13週でやるんですね。その結果を受けて生産の体制の改善とか、全国発売をしていきます。

でも、「1才」のチェーンテストの導入をやろうとしたときに、営業にかなり不安感がありました。まず初回生産前にコンセプトの話をしていくわけです。自作ラボで作ったもので、こういうパッケージでカラーコピーでこういう風にやるということをやるんですね。それを本生産に入る前にやるんですけど、スーパーで1才をターゲットにして売れるの?とか。えびせんってみんなが買ってくれるから売上げがあるのに、1才だけじゃやばいでしょうとか、買う人がいるかもしれないけど、店頭では回転が悪くて、売れないよとか、テストは協力するけどさ、みたいな世界があるわけですよ。ここまでターゲットを絞った商品ってなかったんですよね。

人口で言うと年間110万人くらい生まれてきて、そこしかお客さんがいないわけです。2才は買ってくれるなというコンセプトですから。そういう意味では、この100万ちょっとというターゲットをどう掴むかが大切です。でも、掴んで広げたとしても、全国に100万人ですから、各スーパーに置いたときには、みんながヘビーに支持してくれても、週2個しか売れないという可能性は大いにあるわけです。いろいろなシミュレーションをして、大丈夫だという計算はしているんですけど、不安感はありました。

一応テストですからということで、当時スーパーと、四国のドラッグストア、メディコさんにお願いしました。メディコさんは商談の窓口がなかったので、営業さんに連れて行ってもらい、東京から来たからやってよ、面白いんでやろうよみたいな話になりました。ドラッグのテストというのはそれまでしたことがなかったんですが、ドラッグというチャネルを1つ見たかった。あとはスーパーでやったんです。でもやっぱり不安なわけですよ。もちろんテストだから売れなくていいんですけど、在庫の山を抱えるとショックですし、営業からも売れなくて得意先に迷惑かけたと言われると、やっぱり辛いですよね。

蓋を開けると、チェーンテストですごく売れたんですよ。特にドラッグあたりは、13週のお願いでやっていたんですけど、最後延長できないかと言われました。有り難いお話なんですけど、そのくらいドラッグは動いたし、スーパーも定番で残れるくらいの売上げできっちり残りました。それがチェーンテストの成果です。後々、発売してわかるんですけど、普通のえびせんの3倍くらいの頻度で買ってくれるんですよ。かっぱえびせんというのはとにかくオールターゲットでと言ったんですが、普通のえびせんよりも、3倍から4倍の購入頻度で買ってくれている。そうすると100万人のターゲットであっても4倍買ってくれるわけですから、きちっと売り場に残る。そこは想像よりもかなり強いリピートでした。

競争製品(C)

■完全にスタンドアローンな市場

競合は、ボーロとかビスケットなんですね。ところが、競合と言いながら、しょっぱい系というところで、独自の牙城はあるんです、横に関しては。縦に関してはスナックなんですけど、他社さんとかを見ても、1才向けだと、お魚のビスケットとか、そういうものはたくさんあるし、クッキーとかボーロとかはあるんですけど、スナックベースのものはないんですよね。そういう意味では完全にスタンドアローンな市場だと思っています。だから今のところ競合がなくやれています。

ベースのブランドに安心感がないと入って来られませんが、幼児向けスナックと言ったときに、安心感のあるブランドが何かというと、えびせん、サッポロポテト、その辺ですよね。うちはたぶんメーカー的に圧倒的に強くて、その中で更にこの辺のブランドが強いです。他社、例えば湖池屋さんとかがそういうブランドを持っているかというと、持っていないですから。1才からのスコーンって言っても買わない。そういう意味では、いいところに入って、安定しています。

2003年から売っていますが、売上げは出荷ベースでは右上がりだし、店頭でも横ばいで安定しています。非常にこだわった製法なので、実は生産能力が非常に低くて、普通のえびせんの生産能力の五分の一くらいしかありません。最初、工場は嫌がっていたんですが、安定的に売れるというのは、工場にとってはありがたい商品で、今は非常に味方してくれています。



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