ベネフィット(B)

■薄味のかっぱえびせん

いろいろなこだわりをやりましたが、結果的にお客様に一番支持されているのは、薄味というところです。

かっぱえびせんは、スナックユーザーの中では薄味なんですよ。価値構造を見ていくと、うちでは、他にはないその商品ならではの選択基準となるベネフィットをプライマリーベネフィットという言い方をするんですけど、かっぱえびせんのプライマリーベネフィットは、「やめられない、とまらない、薄味」なんですね。かっぱえびせんの薄味は、他のスナックにはない。だから「やめられないとまらない」なんだという価値構造を持っている。薄味の要素としては、あっさり塩味とか、口溶けの良い食感とか、適度なえびの塩。えびをものすごく濃くすることは求めていなくて、適度なえびのダシの味がするから、「やめられないとまらない」とか、全部こういう風なつながりかたをしてくるんです。100グラムあるんですが、やめられないとまらないからあれくらいの量でもいいとか、薄味だから好き嫌いがなくみんなが食べられるというのは価値構造としてあります。

でもそれはスナックユーザーの話でして、1才をターゲットにした場合には、薄味が薄味ではなくなってしまうんですよ。元々薄味のかっぱえびせんが更に薄味にシフトしてくるという構造になっています。「1才からのかっぱえびせん」のプライマリー・ベネフィットは、同じように「薄味のかっぱえびせん」なんですね。えび2倍でカルシウムたっぷりとか、手が汚れないとか、そういうことが構造としてついているという感じです。

製品属性(A)

□大きさ ■グループインタビューに感じたよそ行き感

うちの子が1才になる直前くらいに開発していたんですけど、そういう意味では一番リアルなターゲットが家にいるので、いろいろ最初のプロトタイプを食べさせたんですよ。子どもを見ているとこうやって掴むので、最初は結構長いタイプで、赤ちゃんせんべいみたいな形状を想定していました。かじってべとべと、べとべと食べるイメージだったんですが、これだと喉を突くんですよね。オエッとなるし、そのうち噛み散らかしてその辺グダグダになるし、挙げ句の果てによだれでデロンデロンにすると、ソファとかもグジョグジョになるしということで、歯がためのこのタイプはだめだなと思いました。

結局ミニサイズにしたりしていまして、とにかく試作を作ると、家に持って帰って子どもに与えて、食わないとかなんとか。そういう話です。今、無事4才になっています。

定性調査では、基本的に購入者を呼ぶので、1才の長子のおかあさんを呼び、グループインタビューみたいな手法で、6人くらいでインタビューして、いろいろな評価を聞くわけです。それを何ステップかやっていると、何かうちの嫁さんが家でする話とちょっと違うというか、すごくよそ行き感を感じてきました。みなさんいいおかあさんで、おやつもなるべく手作りで、市販のものはなるべく与えないのよとか言うんですけど、実際購入履歴をインタビューで聞いていくと、ガンガンお菓子を買っている。

ああいう定性調査は、お客様の声を聞くと言いながら、すごくかしこまった実験的な場所じゃないですか。もちろん分かりきれない世界ではあるんですけど、今回特に1才の子どもということで、更に分かりきれないと思いました。要は徹底的に自分のことを語るわけではないんですよね。最初、「どうなの?食べるの?」と聞けば、「うちの子食べるわ。」という人もいれば、「食べさせてみないとわからない。」という人もいたり。当然親にはおいしくないわけですよ。1才は薄味にしていますから、普通のえびせんのほうがおいしい。そういう中で、「お子さん食べますか?」と聞くと、「うちの子絶対食べるわよ。」という人もいれば、「食べさせなければわからない。」という人も半分くらいいて。じゃあ食べさせてみないといけないね、実際子どもがどういう行動をしているのか確認したいねということで、子どももその場に呼んでリアルに聞くということになりました。

■家にあがりこんで聞いたら、全然違いました

行動観察的な手法と言うんですが、子どもは実際発言しない人たちなので、発言しない中でどういう動きをするかということを目で見たくなり、最後何ステップかは、実際お子様のいる方に御協力いただきました。消費者モニターを少し持っていまして、普段は通常食品の送って簡単なアンケートに答えていただくということでお願いしているんですが、無理を言いまして、何名かの方にご協力いただきました。家にあがりこんで、お友達を呼んでもらって、その方達と食べながら話を聞くということをやったら、全然違いました。

結局おかあさん2人とお子さん2人、あとは私と書記みたいな感じで話をしていくと、子どもは当然黙って座っていないわけですよ。当たり前の世界なんですけど、例えば1才のかっぱえびせんどうですか、とやると、大人なんかは食べて、「あっ、こぼさないわね。」とやるんですけど、子どもはばさっとこぼすんですよ。しかもこんなのを落としたら踏むわけですよ。私も人の家におじゃましている立場だから、すいませんとか言いながらやっていて、お友達も、汚しちゃったら、ごめんなさい、とかなんとかと言いながらやるんです。最初油をちょっとかけていたら、汚しちゃうんですよ。指紋をつけたりすると、お友達のおかあさんは、その家のおかあさんにすごく気を遣われるんですよね。

ということは、お友達の家に行ったときには同じ状況が起きているはずなので、これはもう油とか塩はかけちゃいけないなと。

■子どもから目を離したいニーズの発見

あと、最初歯がため的なものを考えていまして、これは定性で出てきがちなんですね。1才というと歯が生えてくる頃なので、歯がため的なものがいいというのは、定性調査では結構支持があったんですよ。ところが実際やり出すと、おかあさん達は一生懸命うちの子はこうでこうでと話をしてくれるんですが、横のおもちゃで子ども達は遊び出すわけです。そこに歯がためのやつを持っていくと、割るし喉に刺すし、ということがあったりしました。

実際そのおかあさん達のリアルな話を聞いていると、メールしたりとか、電話したりとか、テレビを見たりとか、それなりにおかあさんはおかあさんで自分の時間を持ちたいんです。これは当たり前の話で、子どもから目を離したいというニーズがあるんですね。理想論的には、私は子どものことをきっちり見て、飲み込むまできちっと見るのよと思っても、実際は全てのシーンでそれはできずに、おかあさんが月9のドラマにはまって見ているときには、子どもは横でぼそぼそ食べているわけですよ。そのときに目を離せる構造というのが必要で、そうすると長いサイズとか喉をつくサイズとか、固さとかはなくなってくるわけです。

口の中に入れても自然に溶ける口溶けのいいもので、一口で入るもの。これならばボリボリやって周りを汚さないということで、結局このサイズに決まりました。ただ、つまみづらいとか、定性調査から出ていたような、1本でつかめる、食べられるものがいいという声は、未だにいただいてはいるんですよ。小さいという意味で。子どもが1個1個つまむのに、大きいのがいいんじゃないかという声をいただいたりはするんですけど、一口で入るというのはファンレターとしいてもいただいています。実際子どもが横にいると建前論ではなくなりますし、面白かったですね。

■誇らしげな子どもを見て、迷いがふっきれた

直前にすごく悩んでいた部分がありました。いろいろトラブルはあったんですが、無事初回生産ができて、1袋カバンに入れて持って帰りうちの子に食べさせたときに、1袋ぺろっと食べたんですよ。小袋ってこのサイズなんですけど、この小袋を、1才のうちの子は、両手で持って食べたんですね。両手で持って食べられる。1才のこのサイズだと、片手で持ってもう片方の手で食べるんですよ。そのときに、親は片手で持って食べますよね。彼女はずっとそれを見ていて食べたんですが、見ていてすごく誇らしげなんですね。幼児心理学とかいろいろ勉強したんですが、子どもがなんで高い高いを喜ぶかというと、普段は人よりも常に低い目線で見上げているストレスが、高いところになって見下げることができ、気持ちがいい行為だかららしいです。背の低い人間は常に背の高い人間にストレスを感じている。子どもってそれの最たるもので、常に膝くらいから見上げているわけですよ。それと同じで、大人と同じようにできたという優越感がみたいなのがあって、ものすごく自慢げに1袋ぺろっと食べたんですね。ああ、売れるわと思って、そこで迷いみたいなのが取れました。



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