市場環境(E)

■横ばいの市場にどう対応するのか。

カルビーはスナックのトップメーカーとしてずっと走っていますが、スナックが1990年代に入り、成熟期を迎え、成長は完全に横ばいになっています。スナックは元々、20世紀の高度成長期時代に一緒に伸びてきた、どちらかというとアメリカ型の市場です。アメリカはかなりスナックを消費していますが、そこで大量生産をする商品ということで、同じような袋に入った、同じような袋サイズのものを売っているという風な構造で成長してきたというのがスナック市場です。スーパーとかコンビニのスナック売り場に行くと、いわゆるレギュラーサイズという、80グラム前後のグラム数の袋が並んでいるんですね。その横に小袋売り場がちょこっとあるという構造で、サイズバリエーションが、非常に単一的な売り場になってしまっている。

それが1990年代に入って売上げが横ばいになると同時に、お客様のニーズも多様化してきました。健康意識がかなり高まり、かたや1日に摂る摂取カロリーが2000キロカロリーを切ったとか、その割にほとんどの世代で肥満人口が増えているということとか、あとはアレルギーの問題、添加物の問題、いろいろな背景があります。もちろん市場とはいっても、ものすごい規模があって、そこにスナックの良さ、楽しさ感とか簡便性とかボリューム感を支持する層というのは依然としているんですが、いわゆる健康トレンドによって、スナックを需要する層は依然としているんだけど、それ以外の取り組みがすごくしづらくなってきました。そういうときにどうするの?という背景です。我々としては市場が横ばいになっている以上は、それはそれできちっと守っていき、プラスαという売上げを作る必要がでてきました。


■成熟期に入ったブランドをどう活性化するのか。

ブランドの話で言うと、かっぱえびせん自体も、1964年に発売になっているブランドでして、もう40年以上になります。そういう意味では支持され続けているブランドなんですが、ブランド自体も成熟期には向かっています。そこでブランドのエクステンションという意味では、いくつか試作が求められていたというのも背景にはあります。「1才からのかっぱえびせん」をつくるという背景の話は、いわゆるブランドが成熟期になっていて、そのブランドをどうしていくんだという、タイムポイントだったということです。

ターゲット(T)

■40年はかっぱえびせんで育った親が子どもに与える時間

かっぱえびせんは40年ロングセラーなんですが、40年ってどういう意味を持つかと言うと、おかあさんから与えてもらった子どもが、親になって子どもに与える時間なんですよ。50年も経つと今度は、おばあちゃんが孫に与えるようになってくる。先ほど、スナックは少し健康感がないという話をしましたが、その中でもえびせんは、スナックの中では安心感が非常に高いブランドです。それは自分が子どものときに親からもらって、自分は普通に育ってきているわけだから、自分が親になったときに子どもに与えたって、それは悪いものじゃないでしょうという、屁理屈を抜きにした盲信みたいな世界があります。

ブランドって昇華していくと結局情緒的な価値になっていくじゃないですか。理屈じゃないと。そういう意味では、スナックの中では、健康観を売りとするならば、一番出てきやすいブランドだという自負もあったんです。


■30代の母子がかっぱえびせんの入口

更に、かっぱえびせんはみんなが好きで、オールターゲットと言っていた時期がありました。僕がブランドマネージャーになる前くらいまでは、かっぱえびせんの強みはオールターゲットで嫌いな人がいないということだったんです。確かに、社内で2千人規模での調査とかをすると、嫌いな人がいない、みんなが好きという意識項目というのは、圧倒的に一番なんですね。それで、オールターゲットということが強みということをしていたんですが、よくよく掘り込んでいくと、一番購入しているところは、30代の母子。ここが圧倒的に高いですね。小さいときにえびせんを食べていて、中学に上がるくらいから、親の言うことを聞かなくなり、自分で好きにおやつを選ぶようになると、じゃがりことかカラムーチョとか、自分なりの商品をセレクトしていく構造があります。親が与えないものですね。

そしてもう1回、おかあさんというか、親になったときに再トライアルするという構造なんですね。そういう意味では、再度入り口としては、おかあさんというのが重要なキーワードで、その後40代、50代、60代まで、オールターゲットの商品なので、他のスナックに比べると落ちづらいんですよ。チップスなんかは当然30代が山で、その後落ちていくんですね。えびせんの場合は、30代、40代、50代と落ちるんですけど我慢して残っているという構造があります。その中で30代のおかあさんと子というのは、この商品の入り口としては重要でした。


■1才以下ではあげたくない -オールターゲットじゃないじゃん

更に入り口として、かっぱえびせんの本体のブランド調査を徹底的にやったときに出てきたのは、今普通に食べている、もしくは自分が好きで食べている、それは親から与えられた時点ですごく安心で、カルシウムも入っているし、味も薄いし、いい。やめられない、止まらない。だけど、1才以下の小さい子どもを持つおかあさんは、あげたくないという意識があって、ティッシュでぬぐって与えているとか、なめてからあげている。それも、夫婦で食べていると子どもが欲しがるから、仕方なくあげているという構造だったんですね。オールターゲットじゃないじゃん。


■ジャンクと同じ食べ方 -商品担当者としてショック

実際自分なんかも子どもを連れてファーストフードとかに行くと、嫁さんは、フライドポテトの油と塩をティッシュでぬぐって、1才くらいの子どもに与えているわけですよ。そのときは、フライドポテトはジャンクだからなと思っていたんですよ。油っぽいし、ギトギトだし、置いておいても滲みちゃうし。ところが、同じことをやられているというのはそれなりにショックでした。

全然根拠はないんでしょうけど、妊婦の方が、産婦人科にかかっているときに、血圧が上がるとか太っちゃうのをどうすればいいですかと聞くと、「えびせん食べればいいんだよ、カルシウム多いから。」とか、そういうことを先生が言ってしまうくらいのブランドで、そういう手紙を妊婦の方からもらったことがあります。えびせんを食べたらどうだったとか、本当に商品の物性を越えて喜んでいただけていると思っていたブランドなのに、実は片方では、ある特定の小さい子どもに関してはそのような受容のされ方をしていたというのは、商品担当としては非常にショックでした。


■ベビーフードというアイデア

それで、ベビーフードというのもあるじゃないと、単純に思ったんですね。今、スナックというのは、小学校に上がるくらいから食べ始める。もしくは幼稚園に上がるくらいから食べ始めるんですけど、じゃあベビーフードいけるんじゃない?と。ベビーフードというと1才以下ですよね。4ヶ月、6ヶ月と、月齢でハードルを設けていて、だいたい1才までは手厚く月次があります。10ヶ月からのおかずとか、6ヶ月からのおやつとか、4ヶ月は白湯とかそういうのがあって、1才まではすごく手厚くやっています。

でも、キユーピーさんとか和光堂さんとかがものすごくブランドロイヤルティの高い売り場なんですね。最初に、1才未満の長子を持つおかあさんと、1才から1才半までの長子を持つおかあさんということで、2属性設定して定性をやったんですが、そうすると1才以下においては、やたらベビーフード全盛の頃でして、カルビーもかっぱえびせんも、ブランドとしては効かないんです。だってキユーピーさんでしょう、和光堂さんでしょう、カルビーってスナックのメーカーでしょう、かっぱえびせんというのも、しょせんスナックでしょうという言われ方をするんですよ。


■1才以上の市場の隙間の発見

ところが1才を越えて3才までの2年間というのは、ベビーフードから見放されるとは言わないんですが、それまで10ヶ月だ、8ヶ月だと月齢で追っかけてもらっていたのが、1才を越えると、1才からはポンと一括りになってしまう。特にそのときに定性で出てきたのが、食べさせられるおやつが、ボーロとビスケットと、すごくバリエーションが少ないということです。スナックはまだ与えたくないし、おせんべいもちょっと違うし、ボーロ、ビスケットくらいしかない。なんとなく甘いものしかない。せっかく歯が生えてきたのに、虫歯がちょっと気になるということで、ここはすごく市場としての隙間があるなと思ったんですね。


■しょっぱい系でヘルシーなもの-属性アイデア

1才まではキユーピーさん、和光堂さんを中心にして、徹底的にフォローされているので、この市場はまず入れないし、入っていったときに、カルビーのブランドもかっぱえびせんのブランドも効かない。でも、1才以上になってくると、まずこのブランドが効き出すんですよ。また、幼稚園に上がると、その子は長子であっても、2子め3子めのお友達がいて、お友達の所に行ったり来たりする中で、そのお友達にお兄ちゃんお姉ちゃんがいると、幼稚園の年少さんでも、お兄ちゃんお姉ちゃんと一緒にポテトチップスを食べるわけです。

お友達がポテトチップスを食べているのに、うちの子だけ食べさせないでとは言えないので、ああいう社会に入っていくと結構親は我慢をせざるを得なくて、ハードルがぐっと下がります。それまでは親の意志決定でできるので、徹底的な囲い込みというか守りをしているんですが、その2年間に入ってくる商品に、ボーロ、ビスケットしかなかった。虫歯も気になるということで、しょっぱい系でヘルシーなものに仕立て直せば、これは可能性があるのではないかというのが、開発の理由です。

オケージョン(O)

■親のかっぱえびせん、子の新製品

とにかくいろいろなところに行くのにちょうどいいサイズだというのがあります。もちろん家でも食べていると思いますが、このサイズならではの携帯性です。あと、親がかっぱえびせんを食べて、子どもが1才を食べるというオケージョンを実現したかった。もともとはそこの不具合から出てきている商品ですから。

ニーズ、ウォンツ(N、W)

■時々目を離しても安心して食べさせられるものがほしい

ニーズでいうと、安全に食べて欲しいということだと思いますが、要は、どこまで安全が保証されるのか。例えばハサミを使わせるときには、もちろん安全に工夫されたハサミであっても、親が最初はしっかり横で見るじゃないですか。親の管理によって保証される安全とか、いろいろレベルがあると思うんですね。そういう意味では、時々はおかあさんも目を離して自分のことをやりたいよという世界の中では、基本的には1人で食べられるというニーズはあると思うんですよね。



目次へ - 次へ